神隠し
僕たち家族は今年の春この村に引っ越して来た。
と言っても元々お父さんがこの村の出身で、僕たち兄妹の曽祖母が一昨年亡くなって、遺産分けでお父さんが受け取った土地に家を建てたからなんだけどね。
引っ越して来る前、小学生の頃何度かお父さんの実家に遊びに来たことはあったけど、従姉弟のお姉さんやお兄さんに連れられて遊び歩いたのは実家周辺だけ。
だから村の他のところを見てみようと、今日は学校が午前中で終わったから家に帰るのに遠回だけど、中学校の裏山に登る道から帰る事にした。
裏山の頂上近くから見える僕の家は、壁が白く塗装されている事もあってピカピカと光輝いて見える。
裏山を下り下った先の小川に掛かる橋を渡り小川に沿って伸びる砂利道を歩き、岩をくり貫いただけで灯りもついてないトンネルを潜り暫く歩くと家の裏に出た。
あれ? 裏山の上から見たときは白く輝いて見えた家の壁が、煤けて黒ずんで見えるんだけど。
裏から家の庭に入ったら、曽祖母に似た感じの80前後のお婆さんが庭いじりをしていて僕を見ると声を掛けて来た。
「どちら様ですか? ……あ! も、もしかして、お兄ちゃん?」
後から知った事だけど、校庭で部活を始めた生徒たちに裏山に登って行くところを目撃されたのを最後に、僕は70年近く行方不明になっていたらしい。