1月21日 弓道
畳の匂いがそこら辺からしてくる。なんか、私が来るには場違いだっただろうか?来てしまった後に後悔が募っていた。
私 「ここが弓道するところ?」
夏目「そうだよ。初めて?」
私 「うん。なんかすごいね」
どうやら、この時間は、私と夏目二人しかいないようだった。それにしてもなぁ、、、、。初めて来たこともあり、なかなか慣れない。
夏目「凄いかな?」
私 「凄いよ」
夏目「私は、いつもここにいるから当たり前なんだよね」
私 「そっかぁ」
空気は張り詰めた弓の弦のよう。床の上には整然と並ぶ木の矢筒、木の胴着の匂いがする。初めてということもあってか、私の足は震えていた。
夏目「大丈夫?」
私 「あっ、うん。大丈夫、大丈夫」
夏目「困ったら言ってね」
私 「なんか寒くて」
夏目「わかる、寒いよね」
なんとか、上手くごまかせたようだ。けど、震えないようにしないと。私は、指先を伸ばしながら緊張を解き放とうとしていた。
私 「今日、いつもより気温低いよね」
夏目「たしかに」
私 「こんな中、弓道なんて絶対できないよ」
夏目「大丈夫、大丈夫。やれば慣れるから」
私 「えー」
到底、慣れるイメージがわからないんですけど。
夏目「じゃあ、私は一発打とうかな」
私 「え?」
夏目は、近くに置いていた弓を持ち始めた。
夏目「ちょっと、かっこいいところ見せちゃおっかなぁ」
息を吐いたのか、肩の力が抜けたようだった。構えの姿勢に入った夏目が見据える先は、楕円形の的だった。
夏目「じゃあ、いくね」
私 「うん」
弓を撃ち抜く姿勢。それは、普段話をしている夏目とはどこか違う。なんというか、ギャップを感じる。一瞬の沈黙の時が流れる。おそらく、夏目は、タイミングを測っているんだろうな。弓道ってどういう競技なんだろうか?今更疑問に思った。あれか?真ん中にあたればいいのか?そんなことを考えていると、夏目は矢を胸へ引き寄せる。そして、次の瞬間、音もなく、弦が鳴り、的へと矢が飛んでいった。ホントに一瞬の出来事だった。細い糸が切れたような音はしない。しかし、的に命中した軽い震えと、射の後の静寂だけが残っていた。
夏目「凪も握ってみない?」
私 「え?」
夏目は、真っ直ぐに私の方に差し出してきたのだった。吸いつかれるように私も手を出して応えた。




