1月18日 36.2
時刻は、17時過ぎ。ドアの影が長く伸びていた。鍵の重さを感じさせる音がして、母の声が家の中へ響わたった。お母さんは、靴を静かに揃え玄関へと上がっていた。靴紐の結び目が今日もピシリと決まっているあたりが、私とは違うところだった。私は、部屋の中にいたから、この部屋以外灯りがつくことはしない。しかし、お母さんは他の人のためだと言わんばかりにリビングの灯りをひとつずつ灯していく。私がいるこのキッチンに来るまでには、まだ時間がかかりそうだ。お母さんは、リビングでコートを脱ぎ、椅子にかけた。長い一日を振り返る間もなく動き始めた。すごいよな、毎日この生活だもんな。もっとゆっくりすればいいのにな。娘ながら、私はそんなことを考えていた。すると、私の方に近づいてきた。
お母さん「治ったの?」
私 「もう、余裕かも」
正直、回復してまだ1日目ということもあり自分の体のことをちゃんと把握できていなかった。
お母さん「あんまり無理しないでよ」
私 「わかってる」
お母さん「ホントに?」
私 「大丈夫だよ」
動き回ってる私に、お母さんは心配になっていた。
お母さん「ちゃんと水は飲んだの?」
私 「うん。ご飯も食べたし」
お母さん「食べれたんだ?」
私 「そうそう」
昨日までの私を見ていたこともあり、お母さんは驚きを隠せないようだった。
お母さん「じゃあ、明日からは大丈夫そうなの?」
私 「たぶん、今の感じでいけばね」
お母さん「熱は?」
私 「まったくなかったよ」
昼間にはかったら、36.2だった。
お母さん「そう。それは、よかったわ」
私 「私もなんかしんどくなくなったなって思ってたら熱も下がってて、ラッキーだったよ」
お母さん「でも、今風邪流行ってるから気をつけなさいよ」
私 「はーい」
この時期は、いつでも風邪が流行っている。むしろ、流行ってない時なんてないくらいだろうな。
お母さん「今日は、何してたの?」
私 「なんか、午後くらいから体が軽くなったから少しずつ動き始めた感じかな」
お母さん「そうなんだ」
私のことを心配しながらも、今やらなければならないことを一つ一つこなしているようだった。
私 「じゃあ、私は自分の部屋に行くね」
お母さん「うん」
自分でも、なんで部屋に行くのかはわからないけどなんかその方がいい気がしたのだった。




