表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/75

11月9日 凪

 凪。私は、この名前は、とても気に入っていた。この凪という名前の由来は、「周囲を凪のように落ち着けて優しい人にしてほしい」という意味があるとか。今となっては、この由来と程遠い人生―になってしまったが、この名前をつけてくれた両親には感謝していた。当時は、お父さんが、「凪」を「薙」と別の漢字で表現ていたが、それを見たお母さんが字を変えたことがこの名前の誕生由来だったとか。

 私の家は、3人家族。お母さんは、教育熱心で礼儀作法にとても厳しい昔の人だ。私が幼い頃は、塾に家庭教師に、遊んでいる暇は、ほとんどなかった。だから、小学校までは、友だちと遊ぶ機会もほとんどなく、周りからは勉強が好きというイメージしか持たれなかった。

 しかし、そんな自分が嫌で、中学校2年の時、一度だけ家出をしたことがあった。家出先は、中学校の時の友だちだった淮南高校の小山波だった。あの時は、小山にとてもお世話になったし、とても迷惑をかけたと今でも思っていた。当時、最後はお母さんが小山の家まで迎えに来てくれたが、もっと強く言えばよかったかな。今では、そう思うようになっていた。

 小山は、小、中学校が同じで、私のことを一番よく理解してくれている人だった。彼女とは、高校生になってから、だんだん会わなくなってしまったけど、唯一と言っていいくらいの友だちだろう。

 一方、お父さんは、私にとても優しく仏のような人だ。平日は、ほとんど仕事で、休日は、いつもゴルフをしていたのだ。私は、家からでられない時、いつも父とチャットでやりとりするのが唯一の楽しみだあり、生きている希望を感じられた。お父さんは、私に起こったことは一度もなく、常に優しく接してくれた。

 そんなお父さんとの思い出は、高校1年生の時に行った関西旅行だ。普通、女子高生なんかが、お父さんと旅行に行くだけでも嫌だと思うのだけど、私は全くそんな風に思ったことがなかった。関西までは、車で約6時間ほどかかる。その道中の時も、最近、どんなことがあったのかなどお父さんのエピソードを聞いていたのを覚えていた。少しずつ、学校に行けなくなっても、私を怒ったり注意したりすることなんてない。そんなお父さんが、わたしはずっと好きだった。

 少し頭痛がおさまりそうだったので、ベットから起き上がり、近くにあったペットボトルを手にとった。ペットボトルを口につけると、とても喉が潤った気分になり、私は、再び、目を閉じることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ