12月12日 後部座席
お母さん「久しぶりね、こうして出かけるの」
お父さん「そうだな。みんなで出かけるのはないな」
お母さんの言う通り。みんなで出かけることはなかなかなかった。
お母さん「まだ、凪が子どもの頃はたくさんあったのにね」
お父さん「そうだな。あの頃からずいぶん経ったな」
行けなくなったのは、私のせいじゃないか。そう思ってしまう。
お母さん「時代が変わって価値観も変わってしまうんだね」
まるで、ドラマの様なセリフだ。
お父さん「まぁ、変わらないものなんてないのさ」
お母さん「そうなんだけどね」
何か言いたそうだった。
お父さん「激しく変わる毎日に俺たちは変わっていかないとならないのさ」
お母さん「その変化は目に見えないものだからね」
お父さん「そうだ。それが難しいんだよな」
お母さんやお父さんは、何かを語っている様だけど、子どもの私には少しわかりづらい。
お母さん「もう少し見えるものであればわかりやすかったんだけど」
お父さん「目に見えたら意味がないんだよ」
お母さん「どう言うこと?」
お父さんの言いたいことは、なんとなくわかる気がした。
お父さん「目に見えないからその重要さに気づくんだよ」
お母さん「目に見えてしまったら、違うの?」
違うんだろう。それは。
お父さん「ああ。目に見えてしまうと、それはただの毎日に過ぎない」
お母さん「そうかもしれないね」
どこか納得したみたいだ。
お父さん「いつか、今日の日を思い出すんだろうな」
お母さん「ええ。そうね」
お父さん「それが、どういう時かはわからないけど」
今日の日をいつか思い出すなんて想像できない。
お母さん「昔をふりかえると、なんだか切ないわ」
お父さん「そんなこともない。昔は昔で楽しかったし、今は今で楽しかった。そうだろ?」
お母さん「そうね」
お母さんは、返事を迫られた。おそらく、本心は違うのだろう。私がもっとちゃんとしていたら、変わっていたのかもしれない。お母さんの人生をメチャクチャにしたのは私。
お父さん「あと、10分くらいでつくよ」
いつもの見慣れた場所に、私たちは来ていた。
お母さん「たしかに、そのくらいの距離ね」
お父さん「こっから、飛ばしていくぞ」
お母さん「無理しないでよ」
私は、二人の会話を後部座席から、ボンヤリと聞いていた。




