2-7:刻のアトリエ
「えっ……?」
「これからも『刻のアトリエ』とやらを続けていたら、間違いなくお前は寿命が尽きて死ぬ。あっという間によぼよぼのおばあさんだ」
どうしよう……。
わたしの使う『刻星術』にそんな代償があったなんて……。
これじゃあ『刻のアトリエ』は閉店だよ。
「ううう……。それじゃあわたし、おばあちゃんになりながらお店続けます」
「続けるのかよっ」
カシマール先生が裏返ったすっとんきょうな声を出す。
わたし、また変なこと言っちゃったのかも。
「ルゥさま、お待ちください。我々をわざわざここに呼んだということは、カシマール先生は『刻星術』の代償を回避する方法を知っているのかもしれません」
レオンがそう言うとカシマール先生がうなずいた。
「あるんですか!?」
「ある」
やったあ!
これでお店を続けられる。
カシマール先生が棚からペンダントを持ってきてわたしたちに見せた。
白いつやのある石のはまったきれいなペンダントだ。
「『刻星術』以外にも代償をともなう魔法が存在する。その代償を肩代わりしてくれるのがこのペンダントだ」
「わーい。ありがとうございます」
わたしがペンダントを受け取ろうとしたとき、カシマール先生はその手を引っ込めた。
「早とちりするな。これは俺のだ」
「ルゥさまのペンダントはこれから用意していただけるのですか?」
「用意してやるさ。ただし――」
そこでいったん言葉を切ってから、カシマール先生はわたしとレオンを一度見てから続ける。
「その材料は自分たちで調達してもらうぞ」
「わかりましたっ」
「お前、まだなにを用意するか言ってないのに返事するのかよ……」
「なんであろうと、さがさなくちゃいけないんでしょ?」
「まあ、それはそうなんだが」
「わたし、どんな困難でも乗り越えてみせます」
レオンと二人ではじめた『刻のアトリエ』。
ぜったいに終わらせたくない。
お店を続けるためならわたし、なんだって乗り越えてみせる。
「教えてください、カシマール先生。その素材とはどのようなものなのでしょう」
「素材はこの白い石だ。一説には空から降ってきた月のかけらで、ふしぎな力が宿っている」
「代償を肩代わりする力でございますね」
「そうだ」
カシマール先生の話によると、『月のかけら』は王都北部にあるアシロマ山という場所にあるらしい。
アシロマ山には凶暴な魔物が多数生息していて危険をともなうという。
「ルゥ・ルーグ。魔物との戦いは」
「ぜ、ぜんぜんできません……」
そもそもわたし、魔物を直接見たことすらない。
もちろん、戦いなんてできるわけない。
魔物に遭おうものならペロリと食べられてしまうだろう。
「レオンは魔物と戦うことは……」
「僕ですか……」
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