5-2:オーレリウムの花
プライドの高い騎士。
ギュスターヴさんの印象は、いかにもそういう感じだった。
ギュスターヴさんは腕組みしながらわたしをにらみつけている。
わたしはとりあえず「あはは……」と笑ってみせる。
しかし、この人は依然としてわたしをにらみつづけていた。
別にわたし、悪いことしていないのに……。
ううう、居心地が悪い……。
「きょっ、今日もいい天気ですね」
「ふん、小さくてみすぼらしい店だな」
ののしられてしまった。
「で、でも、結構繁盛してるんですよ」
「信じられん。時を操る魔法など、どうせイカサマだろう」
「ほっ、本当ですよ! なんなら試してみますか?」
「ならば見せてもらおうか」
ギュスターヴさんが鉢植えの上になにか置いた。
植物の種だ。
わたしはそれに手をかざし、身体に流れる魔力を操って魔法を唱えた。
「時よ進め」
魔力を浴びた種から芽が出てきた。
そしてぐんぐん成長し、根を張り茎を伸ばして花を咲かせた。
「これが『刻星術』です」
えっへんと胸を張る。
ギュスターヴさんは目を見開いて、種から咲いた花を見ていた。
驚いている。
いけ好かない人を驚かせるのに成功したわたしは、ちょっと気分がよくなっていた。
「これは種の時間を進めて成長させたのか?」
「もちろん、戻すこともできますよ」
次は時間を戻す力によって、咲かせた花をもとの種に戻した。
「信じてくれましたか?」
「まあ、いいだろう」
言いかたは気に食わないけど、信じてくれたようだ。
それからギュスターヴさんは思いもよらぬことを言った。
「俺からお前に仕事を与えてやってもいい」
「お仕事ですか?」
「ああ。どうせ繁盛しているのはウソだろう。だから俺が仕事をくれてやる。ありがたいと思え」
やっぱり嫌味な人だ。
むすっとなったわたしは「べーっ」と舌を出してこう返事した。
「おあいにくさま。『刻のアトリエ』は休むヒマがないほど大繁盛ですっ。お仕事はいりませんっ」
そう言い残してお店の中に戻ろうとした――そのとき。
「待て」
ギュスターヴさんがわたしの手をつかんだ。
「俺の仕事を受けろ」
その口調は先ほどまでの偉そうな態度とはうって変わって、切なるものが伝わってきた。
プライドが邪魔してるけど、本当はこの人はこう言いたいのだ。
――頼みたいことがある。受けてほしい、と。
わたしを見つめる目からも、見下すような感じはもうなかった。
真剣で必死な目だった。
その目はわたしに首を横に振るのを許さなかった。
「ちゃんとお願いしてくれますか?」
「……ルゥ・ルーグ。お前に頼みたいことがある。頼む。俺の依頼を受けてくれ」
彼はすなおにそう頼んできた。