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ルゥと刻のアトリエ  作者: 帆立
オーレリウムの花
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5-1:オーレリウムの花

 わたしとレオンが『刻のアトリエ』を再開してから1か月。

 お店は大繁盛だった。

 朝から晩までお客さんがひっきりなしにやってきて、毎日とても忙しい。


 太陽が沈んで閉店の時刻になるころには、わたしもレオンもくたくただった。

 それでもレオンは毎日夕食を作ってくれるからすごい。


 今日の夕食はポトフ。

 スプーンですくって口に含むと、コンソメの濃い味が口の中いっぱいに広がって幸せな気分になる。

 ニンジンやタマネギ、ブロッコリーも甘くておいしい。


「レオン。お店にレストランを作るっていうのはどうかな?」

「いえ、僕の腕前などではとうてい商品にはできませんよ」

「そんなことないって。『美青年の天才シェフ』って触れ込みでいこうよっ」

「ははは……。美青年ですか……」


 そんなことを言いながら食べているとポトフのお皿が空になった。


「おかわり、いりますか?」

「うんっ」


 冗談ではなくて本当にレオンの料理なら人気が出るはず。

 でも、これ以上繁盛したら手が回らないか。

 うれしい悩みだ。


「ところで、今日って何件仕事したっけ?」

「10件でございますね」


 レオンによると、今日の仕事は――


 割れてしまったお皿の修復。

 音が鳴らなくなったオルゴールの修理。

 カビの生えたパイのカビの除去。

 などなど。


 すべて時間を巻き戻して元通りにする仕事だ。

 割れる前のお皿。

 壊れる前のオルゴール

 カビが生える前のパイ。


 いろいろあったけれど、やることはいっしょだった。


「でもやっぱり、一番多い依頼は『若返り』だったね」

「それは仕方ありません。誰もが望む願いでしょうから」


 けれど、そういう仕事は全部断っていた。

 わたしとレオンは決めていた。

 生き物に『刻星術』は使わない――と。


 人間を若返らせるのは、倫理というか道徳というか、物の時間を操ることよりも問題がある気がしたから。

 その責任は、わたしが負うには大きすぎる。

 レオンには冗談で「おじいちゃんにしちゃうぞ」って脅したことはあったけど……。



 翌朝。

 開店の準備をしようと店先に出ると、そこに思いがけない人がいた。

 金髪の青年。


「ギュスターヴさん……?」


 騎士のギュスターヴさんだった。

 どうしてこの人がここに……?

 またわたしを捕まえにきた……わけじゃないよね?


「えっと、おはようございます」

「うむ」


 ギュスターヴさんはわたしをにらみつけている。

 き、気まずい。

 容姿はレオンと張り合えるほど美形だけれど、その表情は険しく、人を寄せ付けない雰囲気があった。

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