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番外編1 黄色の小瓶(上)

番外編です。上下の二話構成。



 10、9、8、7、6。


「リラリー、もっと舌出して」

「ん……」


 5、4、3、2、1。


「僕を見て。ルカって呼んで?」

「……ルカ、好き」

「僕も、愛してるよ」


 ゼロ。


「ん……なんか、身体がピリピリする」

「気持ちいいってこと?」

「わかんない、なんか……変な、感じ」

「もっと変になって。乱れたとこ、もっと見たいな」


 そう言って、僕は彼女を抱き倒した。完了だ。きっかり、24時間。さすが、若草色の薬ってやつだね。


 僕には薬草学の深い知識はない。であるからして、黄色の独占薬の効果が現れるときに、どんな感覚が生じるかは把握していなかった。それが懸念事項だった。

 失恋薬みたいに強い目眩とか、解呪薬みたいに激しい眩しさとかね。さて、黄色は何が来るかと身構えていたが、まさか身体がピリピリするとは。


 別に誤魔化すために、そういうコトを致していたわけではない。たまたま激しく抱いていたら、黄色(ピリピリ)が誤魔化されてくれただけ。そこは勘違いしないで欲しい。


 勿論、リラリーに『キスをしていいなら、それ以上のこともシていい?』と約束を取り付けたのだって、黄色の反応を誤魔化すために抱く必要があったから、なんてことはない。 

 真実として、リラリーを愛しているから到底我慢できそうになくて、彼女に許して欲しかっただけ。




 リラリーは、黄色の違和感に気を取られることもなく、僕との時間を楽しんでくれた。

 昨日の真夜中に初体験(媚薬あり)を終え、さらに昨日の夜に二回目の初体験(媚薬なし)を終えていたため、翌夕方である今は、余裕を持って望めたのも良かった。

 日にちのカウントがおかしいと感じたかもしれないが、これが真実。僕も驚いている。


 そんなことよりも、昨日の真夜中に引き続き、昨日の夜から今日にかけてのリラリーも、最高に可愛かった。

 二度美味しいとは、このことだ。媚薬のときには見られなかった彼女が恥じらう姿。僕に対する恋心が乗っかった、甘い欲。これは、本当に素晴らしくて、僕は非常に漲ってしまったし、一番良かったのはリラリーを僕の……


「結局、二日間も授業を休んでしまったわね」

「本当、急に現実に引き戻すよね」


 反芻していた僕の思考をせき止めて、リラリーは急激に現実に引き戻す。彼女のこういうところが、大好きだ。


「仕方ないさ、必要だったからね」

「失恋薬の解呪のためだものね」


 この24時間。僕たちは時計を見ずにキスをしていた。もう一度言おうか。時計は見ずにキスをしていたのだ。

 要するに、すれ違いだらけの三年間を取り戻すのに、一時間に一回のキスでは足りないということだ。調子ノリノリだ。


 そんなにたくさんのキスをして、時間的にも既に解呪済みということになっている僕の失恋薬。にも関わらず、リラリーはチュッとキスをしてくれた。そして、窺うように僕を見た。


「……ルカも、ドキドキする?」

「(ずっきゅぅぅううん!!)」


 悶えそうになるところを、グッと堪えた。本気を出した天使は凄いな。どこもかしこも天国だ。


「ドキドキしているよ、すごく」

「良かった」


 少しだけ微笑むリラリーに、また『もう一回』と言いたくなるところを、これまたグッと堪えた。あまり負担をかけて彼女に嫌われたらと思うと、僕はいとも簡単に絶望できる。


「ところで、私たち、二日も家に帰っていないわけだけど」

「そうだね」

「大丈夫かしら、ね?」


 もっともな、疑問だ。


「それに関しては大丈夫だよ。婚姻届が効いたみたい」


 僕たちは、此処、僕の私邸に籠もる前に、やはり家宛てに手紙を書いた。


 我がルーンバルト家宛てには『リラリーから結婚の承諾を貰って来いと焚き付けたのは、あなただ。やってやったぜ、クソ親父!(意訳)』という手紙を、貴族的婉曲な表現にして送ったため、全く問題になっていない様子だ。

 焦っているだろう父の顔を思い浮かべると、溜飲は爪先まで下がりきる。ふふーん♪


 そして、肝心のリリット家の方には、僕の気持ちを非常に丁寧な形で手紙にしたためて、さらに僕とリラリーの署名と血判を押印してある婚姻届を同封しておいた。

 すぐに結婚するわけではない。要するに、どんな事があろうともリラリーと結婚をします、という確約を渡した。


 さらに言及するならば、これに関しては兄の下地が功を成した。

 若草の貴公子とか呼ばれていたものの、割と遊び人だと噂だった兄。さらに、放蕩者に成り下がったことは、リリット家の面々も重々ご存知だ。

 それに比べて、三年間も一途に片思いをしていて、品行方正な()が、(リラリー)との結婚を真剣に且つ前のめりで考えているのだ。

 そりゃあ、親としては『あの兄に比べて、弟の方はしっかりしている!』と喜ばざるを得ない。……こういうところが、兄のことを憎めない要因なわけだが。


 というわけで、僕の侍従経由で調査させたところ、リリット家の方も問題にはならなかったようだ。安堵安堵。


「とは言え、もう17時前だからね。さすがに、今日は帰さないと。送っていくよ」

「……うん、そうね」


 ―― あれ? これ、もしやに寂しがってる? え、え、可愛い


 ここまで48時間も一緒にいたというのに、それでも離れがたいのだろう。少し元気がなくなるリラリー。

 なるほど、これが両思いの恋人同士というやつか。これは大変だな、幸せが大渋滞だ。


「リラリー。明日は王立学園も休みだから、デートにいかない?」


 こんな可愛い子がいたら、誘わずにはいられない。僕がリラリーを誘うと、リラリーは『デート』という単語に初めて出会ったかのように、目を丸くした。


「デート」


 そして、確かめるように天井を眺めてポツリと呟いた。まるで、神から賜った御告げのようだった。


「デート。したくない?」

「したい」

「明日、迎えにいくね」

「うん」

「ところでさ」

「うん?」

「したい」

「……うん」


 結局、リラリーをリリット家に帰すことが出来たのは、ディナータイムギリギリだった。反省反省。

 





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マシュマロ

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