第九十八話 クラン設立②
「そんなことないっす」
皆が集まっているお店の方に移動して来ると、昨日の続きのような会話が聞こえてきた。
「詩音、何がそんなことないんだ?」
「昨日のリーダーの映像を見たっすけど、昨日の《千紫万紅》は私だけがお酒に負けてなかったねって言われてたっす。だからそんなことないっすって言ってたっす」
その話題がこちらでもあった訳ね。兄の威厳がなくなってしまうよ。絶対に全てを抹消してもらおう。
「《桜花の誓い》は真姫がパーティに入ってもいいのか?」
「ここ最近、尾道ダンジョンの攻略でいろいろアドバイスをもらってたんだよ。そのおかげで完全攻略出来たし、頼りになるお姉さんって感じで大歓迎だよ」
「誰が頼りになるんだ?何か大きな勘違いをしているようだが、《桜花の誓い》は大丈夫なのか?」
「麟瞳さん、それはどういう意味なの?普通の感覚では私は頼りになるお姉さんなのよ。普通の感覚ではね」
「まるで僕が普通の感覚がないような言い方だな。槍のアタッカーが三人だろ、バランスも悪そうだそ」
「悪い面ばかり言わなくていいでしょ。私という頭脳がパーティに加わるのよ。楽しみな面も沢山あると思わない?」
まあ、岡山ダンジョンで経験を積んだ真姫が加わるのもありかもね。
「《桜花の誓い》の桜花って五人を五枚の花びらに例えているんだよな。六人になってもいいのか?」
「「「「「「えっ!」」」」」」
誰も気づいてなかったようだが、まあパーティ名はよく考えてね。
「今、クランの設立について真姫から話を聞いたんだけど、皆は僕の立ち上げるクランに加わることには賛成しているのか?」
一応聞いてみたが、皆が賛成しているようだ。
「桃と山吹は卒業したら寮にはいられないんだろ。それに皐月と詩音もいつまでも橘家に居候する訳にもいかないんじゃないか?これからは遠征が多くなるし、お店の手伝いも出来なくなるだろ」
「オレは一人暮らしをしようかと思ってるぞ。卒業も決まったし本格的に活動出来るようになるからな」
「確かにそうっすよね」
「そのこととも関連している思いつきだけど、皆が集まれるクランハウスっているのかなって思ったんだ。使わないお金ばかり貯まってくるから僕達に必要なものに使えないかなと思ってたんだ。新しいクランに必要ならクランハウスは僕が出資してもいいかなと思うよ。管理する方法とかも考えないといけないんだろうけど、皆で話し合って決めてくれるといいかな。コミュニケーションも取りやすくなるだろうしね」
クランハウスについてはあると嬉しいし、一人暮らしするよりも皆で住むことが出来るなら食事面でも安心だと言う意見があった。前向きに考えてみよう。
「クランの立ち上げは真姫が中心になって手続きはしてくれるのか?僕は何かすることがあるのか?」
「大事なことは必ず相談するし、きちんとクランが作れるようにしていくわ。必要な時には皆も手伝ってね」
とりあえずクランを設立することに決まった。僕達《千紫万紅》は直接依頼を受けることが出来るようにパーティの実力を上げることが一番重要なのだろう。特級ポーションの入手という大きな目標をクリアすることが出来た。次は早くBランクダンジョンに入ることが出来るだけの実力と自信を持てるようにすることが目標になるのかな。
三月になり正式にクランの設立が認められた。クランの名前は《花鳥風月》に決まった。自然の美しい風景のように皆がクランの中で美しく輝いて欲しいという思いで真姫が考えた名前を皆が承認する形で決まった。勿論皆の名前に花の名前が付いているからという前提があっての名付けだろう。
因みに、酔っ払い映像は無事にこの世から抹消された。本当に良かったよ。