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第九十七話 クラン設立①

すみません。日付を間違えて予約していました。

 今、僕の前には正座した真姫がいる。昨日はあのまま女の子は全員橘家に泊まることになり、僕も泊まっていけと言われたが流石に遠慮して近くのビジネスホテルに泊まった。そして次の日にまたもや橘家を訪ねたときにこのような状況になっていた。真姫と美姫と僕の三人が同じ部屋にいるのだが・・・。


「真姫は何をしているんだ」

「リーダー、昨日のこと覚えてる?クランを設立する話よ」

「ああ、何かそんな話をしていたような気はするが、はっきりとは覚えていないな」

「麟瞳さん、あんなに力強く宣言したのに覚えていないの?クランを立ち上げるって言ってたじゃない」

「僕が本当に言ったの?」

「ええ、証拠の映像をお見せしましょうか?」

「そんな詐欺みたいな方法で手に入れたものなんて証拠にならないわよ」

「ただの冗談じゃない。ほら再生したら面白いでしょ」


 真姫がスマホを操作して映像を再生する。


「お願い。クランを立ち上げましょう」

「おう、分かったよ」


 この羞恥プレイは何なんだ。美姫と真姫が言い争いをしているが、僕は恥ずかしすぎて何も聞こえていないよ。とんでもなく酔っ払っているよ。真姫の左手を見て嬉しかったんだよな。でも、これはないわ。今後は気をつけて飲まないといけないな。うちの両親はよく飲むけど、ここまで酔っているところは見たことがないもんなー。いやー、穴があったら入りたいとはこのことだな。


「ねえ、リーダー聞いてる?恥ずかしがってないでこちらの話にも参加してよ」

「この映像は消去しような。絶対に。・・・真姫は探索者を続けるのか?言ってはなんだが大きな傷を負ったのに怖くはないのか?」

「青いオーガやゴブリンキングは怖いわよ。でもそんな化け物が出てくることなんて気にしていたら、どのダンジョンにも入れないでしょ。折角Bランカーになったし、《桜花の誓い》の子達も可愛いし、Cランクダンジョンに挑戦する間は一緒にいたいと思ったわ」


 僕の知らない間に、真姫は綾芽達とパーティを組みたいと思うほど仲良くなっていたんだな。


「別にクランを設立しなくても真姫が移籍するだけでいいんじゃないか?」

「それだとただの脱退になってしまうじゃない。脱退したらマジックアイテムは返却しなくちゃいけないのよ。それはダメよ。もうあの装備がないと不安で戦えないわよ。クランを作って仲間のままでいれば返却しなくてもいいでしょ」

「何だかいろいろと矛盾しているように感じるけど・・・美姫はどう思うんだ」

「私?真姫には助けてもらったし、何とかしてあげたいと思うけど・・・」


 三人とも歯切れが悪くなって来る。


「大体クランってどうやって作るんだ?」 

「クランマスターがAランク探索者であることと、二つ以上のパーティが参加していることが条件で国の探索者省に届け出ることね」

「何のメリットがあるんだ?」

「クランを作ると探索者協会を通さずに国の各機関や企業から直接依頼を受けることが出来るようになるのよ。高ランクダンジョンで手に入るような素材や魔石の納品が多いらしいけど、双方にメリットがある依頼料金に設定されているらしいわ。そこで依頼をこなす度に貢献度がポイント化されていくそうよ。はっきり言って探索者っていつ亡くなるか分からないから一回の探索毎に税金を引かれているでしょ。貢献度によって税金の割合も変わるようよ」


 説明を聞いてもよく分からないな。《千紫万紅》にとっては資金面のメリットがあっても今の稼ぎを考えるとあまり関係がないように思うが、真姫や《桜花の誓い》にとっては大きなメリットになるのかな?


「餞別として真姫に今装備しているものをあげてもいいんじゃないか」

「それだと《千紫万紅》と関わりがなくなるわ。たまには《千紫万紅》のメンバーと探索もしたいし、クラン内ならダンジョンによってパーティメンバーを代えて探索することも多いらしいわ。私はBランクダンジョンには連れていけないって、麟瞳さんが言ってたでしょ。でも、Cランクダンジョンならたまには一緒に入りたいわ」

「美姫、どうしようか。僕達にデメリットはあるのか?」

「私達にとってデメリットっていうほどのものはないと思うけど・・・直接依頼は高ランクダンジョンで手に入るようなものだからね。《桜花の誓い》は今のところCランクダンジョンまでしか入れないから依頼はこなせないわ。良く言えば私達が有望な新人パーティの育成をするってことかしら。悪く言えば《桜花の誓い》が私達に寄生することになるのかな?」

「僕達にとってメリットがあればいいのか。当分《千紫万紅》は岡山ダンジョンには入らないだろ、《桜花の誓い》にはポーションを集めてもらおうか。そうすれば寄生にはならないのかな?」

「リーダー、そんなにポーションって出てこないからね。リーダーがおかしいだけだから」

「僕達には眠っているマジックアイテムが沢山あるよね。幸運のミサンガを装備すればポーション集めを出来るんじゃないかな?実際に使ってみないとどれくらいの効果があるのか分からないけどね」

「麟瞳さん、クランを作ってくれるの?」

「皆で話し合ってルールを決めてからになるけど、僕としてはあの恥ずかしい映像を完全消去してもらえれば、作ってもいいかなと思ってるよ。映像を消去するのが絶対条件だけどね」

「あの笑える映像を消去するなんてもったいないわ。どんなに悲しいときでもあれを見れば確実に笑えるのよ。麟瞳さん、考え直して」

「クランの話はなかったことにしようか」

「冗談よ。確かにあの映像を消去するのは残念だけど、最後にもう一度だけ再生するね」


 真姫がスマホを操作して映像を再生する。


「お願い。クランを立ち上げましょう」

「おう、分かったよ」


 酔っ払いがなんか言ってるよ。早く消去してもらおう。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 手も回復したし、引退ということもなく、前向きな関係継続できそうなのは良かった。 [気になる点] 旅と酒の恥はかき捨てじゃないと、正直まずいと思う。 一度でもこういうふうに映像撮ったりすると…
[一言] ちょっと酷過ぎる流れになってきたので読むのやめます
[一言] これ、「怖いからパーティ辞めます。でもメリットがあるからあなたから離れません。他のコともキャッキャしたいから私たちのためにクラン作ってね」でしょ。 恩人で、短い間だけどパーティで仲間だった人…
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