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第九十話 岡山ダンジョン完全攻略

 いよいよ岡山ダンジョンを完全攻略する日がやって来た。探索者センターにいつも通り九時前に集まり、着替えて皆が揃った時にはいつもより緊張している顔が二つある。


「真姫、皐月、顔が面白すぎるぞ。笑えて力が出せそうにない。その顔、何とかならないか?」

「オレの顔は面白くないぞ。リーダーは失礼だぞ」

「そうよ、皐月の言う通りよ。リーダーの顔の方が元々面白い顔をしているわ。その顔をどうにかしてから文句を言って。大体この美しい顔をどうすれば良いっていうのよ!」


 緊張をほぐそうとしただけなのに、地味に心が削られてしまった。真姫らしさが少し出てきたから、これで良かったことにしておこう。


 ダンジョンに入る手続きを終えて、転移の柱の前までやって来た。


「今日は四十六階層に転移して攻略を開始する。五十階層のボス部屋に着くまでに身体の準備を整えておくようにしよう。スキルとマジックアイテムを存分に使って最大の力が出せるようにね。万全の状態で臨めたら大丈夫、良い結果はついて来るよ。じゃあ転移しよう」


 ダンジョンカードを重ねてパーティ登録をおこない、五人で転移の柱に触れて四十六階層に転移した。


 いつも通りに攻略できている。後衛のゴブリンには美姫の矢と僕の火魔法で攻撃をして最初に退場してもらう。残った前衛のゴブリンを相手に一斉に魔法攻撃を仕掛けてから近接戦闘へ移行する。皐月の挑発で引き付けたホブゴブリンを真姫が槍の水魔法でダメージを与え倒す。詩音は盾と槍と魔法剣を自由自在に出し入れし相手を翻弄する。美姫はピンポイントにホブゴブリンの弱点を射る。僕は自由に動き回り刀で斬り倒していく。


 戦うごとに、緊張が解けてきたのか皐月と真姫の動きも良くなっていく。順調に攻略を進めてボス部屋の前に到着した。


「情報通りなら、ボス部屋には三体のオーガが待っている筈だ。一体は美姫と詩音が相手をする。遠距離から爆裂の矢でアタックして倒そう。美姫、爆裂の矢は何本残っているんだ?」

「八本残っているわ。最初の一射から爆裂の矢を使うから、いきなり飛び込まないようにしてね」

「一体は僕が相手をするよ。僕も最初に全力の風の刃で攻撃するから、巻き込まれないようにしてくれ。そしてもう一体は皐月と真姫に任せることになる。オーガの威圧に負けるなよ。皐月が引き付けて、真姫は少しずつオーガの体力を削るようにしていこう。焦って攻撃を仕掛けて倒そうとしないように。オーガを倒した者が応援に駆け付けるからね。作戦は以上だ。不測の事態があった場合は帰還石もあるし、臨機応変に対応しよう。皐月、真姫、準備は良いか?」

「オレは良いぜ」

「私も大丈夫よ」

「詩音も美姫の守りは任せたぞ」

「了解っす」


 僕を先頭に皆がボス部屋に入り、扉が閉まった。戦闘の開始だ。情報通り、部屋の中には三体のオーガが待ち構えていた。三メートル程の巨体である。鋭い目つきで睨んで来る。角と牙、筋肉で膨れ上がった強靭な赤みがかった肉体が僕達を圧迫して来る。


 左の一体は僕が相手をする。右の一体を美姫と詩音に任せる。真ん中は皐月と真姫だ。


 派手な爆発音が部屋の中に轟く。美姫の一撃。更に爆発音が響く。容赦ない連撃がオーガを襲う。僕も負けていられない。約束通り全力の風の刃の一撃を放ち、高速で接近し脚を斬りつける。剛腕の腕輪の威力がありながら、硬い皮膚と筋肉で守られたオーガは一撃で倒すことはできない。デカイ棍棒を振り回してくるが、そんな攻撃は当たらない。高速移動でオーガの攻撃を躱し、近距離から風の刃をお見舞いする。脚を一本貰ったようだ。倒れ込むオーガの首に風の刃を振り下ろし一体のオーガを討伐した。


 美姫と詩音は既に一体倒して、皐月と真姫の応援に駆け付けている。皐月が攻撃をガードし、真姫と詩音で少しずつ削っている。美姫は目を狙い矢を射る。流石オーガの耐久力である。致命傷を与えるには骨が折れる。


『皆、僕の合図でオーガから距離を取ってくれ。大きい一撃を与える』


 念話で指示を出してタイミングを計った。


『よし、今だ。離れろ!』


 僕がオーガに近付き、近距離からの風の刃で脚を狙った。崩れ落ちるオーガの巨体に向かい、真姫がオーガの目を槍で貫いた。最後の一体が黒い靄になり消えていった。


「やったぞ!」

「ヤッター!」


 とびきり嬉しそうな声がボス部屋の中に響き渡った。


「おめでとう。これで、真姫と皐月もBランカーの仲間入りだ」


 二人とも満足そうな良い表情をしていた。

 


 









 

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