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第八十三話 詩音②

 今日の弁当は四人とも同じで、橘父さんの作品だろう。詩音は本当に朝早く岡山に来たようだな。


「麟瞳さん、父がこの前貰ったお弁当ほど美味しく出来ないって悩んでいるのよ。何か魔物肉の料理のコツとかあるのかしら?」

「僕に聞いても分からないよ。うちは全部母親が料理をするから、今度コツがあるか聞いてみるよ。今日も皆の弁当は真姫の父親が作ったのか?」

「ええ、とても美味しいんだけど、父は納得してないのよ」


 料理もいろいろ難しいんだろうね。僕は食べるの専門で良かったよ。


「詩音、ここからはタンクをしてほしいんだけど、何かアタッカーに注文を付けることはあるのか?」

「三匹以上を同時に捌くのは厳しいっす。自分でも受け止めながら右手の槍で攻撃するんで、左側から攻撃を加えて欲しいっす」

「真姫、出来るか?」

「了解したわ」


 食後に水分補給もして攻略を再開した。


 詩音は中盾を装備して先頭を進む。五匹のゴブリンパーティにエンカウントした。


「こっちに来るっす!」


 中盾を両手で構えてゴブリンに向かっていく。ゴブリンが棍棒を振り回して来るところを両手で受け止め、勢いがなくなったところで盾を片手で持ち、右手の槍で攻撃する。バランスが崩れたゴブリンに真姫が止めを刺す。次々と向かって来るゴブリンを盾と槍のコンビで捌いていく。まるで手品を見ているような戦い方だ。槍の出し入れが目まぐるしい。最後のゴブリンを真姫が倒した。


「不思議な戦い方だ。これがいつもの詩音の戦い方なのか?」

「そうっす。皐月のようながっしり受け止めるようなタンクは出来ないっす。メインは任せて、周りの敵を倒す役割が多かったっす」

「美姫とのコンビでゴブリンの相手は出来るのか?」

「私の念話で会話しながら倒していたわよ。六年間同じパーティだったから息は合っているわ。次の相手は私と詩音で相手をして見せましょうか?」

「ああ、お願いするよ」


 六匹のゴブリンパーティにエンカウントした。詩音が先ほどと同じように盾を構えて向かっていく。棍棒を振り回して来るゴブリンを盾で左に受け流す。そこに美姫の矢が突き刺さる。右に左に受け流す度にゴブリンは矢の餌食になっていく。確かに息がピッタリだった。


 真姫と美姫を交互に相棒として討伐を繰り返す。六年間の積み重ねの凄さを感じる。美姫とのコンビは安定感が段違いだ。ボス部屋の前に到着した。


「六匹のゴブリンパーティで、ゴブリンアーチャーが入ってくる。先に美姫がアーチャーを倒して、残りを詩音と真姫で倒そうか」

「一人でやってみていいっすか。いいところを見てほしいっす」

「ゴブリンアーチャーの相手はどうするんだ?」

「【投擲】スキルを持っているっす」


 僕が欲しかった【投擲】スキルまで持っているのか。詩音は一体いくつのスキルを持っているのだろうか。 


 ボス部屋に五人で入り、扉が閉まった。詩音の投擲で戦闘が始まった。ナイフを投げたのだろう、ゴブリンアーチャーの肩に刺さっている。その隙に他のゴブリンに向かっていく。左手にバックラー、右手に片手剣のスタイルだ。バックラーで攻撃を受け流し、剣と槍をチェンジしながら攻撃を仕掛ける。少しずつダメージを与え、ゴブリンアーチャーにもう一度ナイフを投擲する。しばらくして、すべてのゴブリンが消えていなくなった。


 ドロップアイテムと銅色の宝箱の中身を回収して次の階層にやって来た。取りあえず詩音が転移の柱に登録した。少し離れた場所で四人で話し合う。


「皆、詩音をパーティメンバーに迎えるのか決めていこう。意見がある人は発言してくれ」

「私から見たら、まだまだ詩音の力はこんなものではないわ。火力がないから連携が必要なの。お互いの理解が進めば大きな戦力になっていくと思うわ」

「そうよね、美姫との連携は良かったもの。私はまだまだ連携出来ていない感じだったわね」

「オレが一番強い相手を止めている間に、他を守ってくれると安心だ」


 三人は好意的に詩音を捉らえているようだ。もう少し火力があればと思うのだが・・・


「火力がもう少し欲しいと思うんだが、皆はそこのところはどう思っているんだ」

「正直に言うわね。今の詩音は最初に会ったときのリーダーとよく似ているわ。飛ぶ斬撃の攻撃が強力だったから簡単にゴブリンを倒していたけど、自分は火力が足りないとよく言ってたでしょ。今の詩音はリーダーからあの刀を取った状態なのよ。工夫をして相手を倒す。とにかく頭をフル回転させて相手をしているのよ。どこかで化けるかも知れないわ。リーダーが刀と魔法で変わったように」

「確かに僕は火力の無さに悩んでいた。そのために求人票で美姫のような遠距離攻撃者を求めたんだよな」


 最近立て続けにメンバーが増えて、Cランクダンジョンなら完全攻略出来る自信がある。でも、所詮Cランクダンジョンだ。Bランクダンジョンに通用するかは今のところ分からない。皆のレベルアップがなければ厳しいように思う。そのために高火力のアタッカーを欲していることは意識している。急ぎ過ぎているのだろうか?皆のレベルアップか?


「皆は詩音をパーティに入れるで一致しているんだよな」


 三人とも力強く頷く。これで決定だな。


「新しい仲間の誕生だね。迎えに行こう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ランク:B


名 前:原田 詩音


スキル:変幻自在 アイテムボックス ヒール  

    剣術 盾術 槍術 投擲 忍び足 

    罠解除


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「詩音もユニークギフト所持者なのか。それにスキルの数がハンパないな、九つもあるぞ。ヒールというのはあの回復魔法のことか?」

「そうっす。パーティメンバーが探索中に怪我を負ったときにスキルが発現したっす。多分【変幻自在】スキルのおかげっす」 

「ポーションが要らなくなるな」

「魔力が足りてないのか、【ヒール】はあまり使えないっす」

「その言葉、何とか普通にならないか?」

「無理っす」


 ・・・ダンジョンの外に転移しよう。









 



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― 新着の感想 ―
[一言] 「無理っす」 きっぱり言われちゃいましたね(^^;)。 その後の「・・・」、よくわかります。(良い点)
[一言] あら~主人公の下位互換かぁ、、思いましたけど、 「自衛できるヒーラー+アイテムボックスからの投擲」 って、なろう主人公のスキルですわ 変幻自在って魔法覚えさせたらさらに化けそうだし。 主人…
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