第八十話 パーティ名決定
金曜日の朝の鍛練をしているときに、綾芽に今まで気になっていたことを尋ねた。
「綾芽、皐月がパーティメンバーになるって早くから言ってたよな。どうして、そう思ったんだ?」
「そんなの簡単なことだよ。お兄ちゃんには花が集まるの。皐月も花でしょ、だからパーティメンバーになると思ったんだよ。これからも沢山の花が集まって来るかもね?」
「花が集まるってどういうことだ」
「まず、お兄ちゃんがリンドウで、私がアヤメ、遥はカエデで真琴はアオイ、モモとヤマブキは言うまでもないでしょ。それに真姫さんと美姫さんもタチバナだから皆が集まったんだよ」
「偶然にしては面白い話だな」
鍛練後に綾芽は急いで学校に向かった。僕はダンジョンに行く準備を終えて、最後までパーティ名を考えていた。
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今日も十六階層から二十五階層の攻略をしてボス部屋の前に到着した。
「今日はオレがホブゴブリンと戦わせてもらうぞ。真姫、オレがホブゴブリンを防ぐから、タイミングを見て攻撃をしてくれ、二人で倒そう」
「了解だよ、皐月。麟瞳さんに私達の力を見せるチャンスね。後でギャフンと言わせるけど、その前にもギャフンと言ってもらいましょう」
真姫は何故かギャフンにこだわっているが、相変わらずよく分からない子だね。
「ホブゴブリンだけが相手じゃないからな。周りに気をつけていこう」
美姫の準備も良いようだ。四人でボス部屋に入り、扉が閉まった。今回は正攻法で戦う。まずは美姫と僕で後衛のゴブリンに攻撃を与えて戦闘の開始だ。
『ホブゴブリンが二匹いるわ。一匹は皐月と真姫で、もう一匹はリーダーに任せるわ』
戦闘の指示は全体を見渡せる美姫に任せている。指示に従ってホブゴブリン討伐に向かう。靴の風魔法で素早く近づき、顔にファイヤーボールを一撃。これでほぼ決着はついた。最後に刀を一閃し首を落とした。残りのゴブリンに向かい靴の風魔法を発動する。
真姫と皐月も無事にホブゴブリンと決着をつけたようだ。僕が最後のゴブリンの首を落として討伐完了、ドロップアイテムを拾って宝箱を開け、中身を回収した。
「麟瞳さん、見てた私達の戦い。上手く戦えたと思うんだけど」
「こちらも戦闘中だから詳しくは見られなかったよ。ギャフンと言えなくて残念だよ」
二十六階層のセーフティーゾーンで水分補給をしながら、先ほどの戦闘について話をする。
「実際にどうだったんだ?美姫は二人の戦いを見ていたのか?」
「ええ、見てたわよ。皐月の盾は安定しているわね。真姫が止めを刺すまで一度も崩れなかったわ。他のゴブリンが来ても一度も後ろに行かせなかった、よく頑張ったと思うわよ」
「私の攻撃はどうだった?」
「出来ることを確実に実行しているようね。今の力を存分に発揮していると思うわ。火力がもう少し欲しいけど、それは今後の課題ね」
もう少しこの階層で練習をしたら、次に進めそうだな。
「じゃあパーティ名を決めていこうか。誰から考えてきた名前を発表する?」
「オレから言うぞ。昨日の寝る前まで考えた名前だ。《Four character idiomatic compounds》良い名前だろ」
「英語なのか?意味がよくわからないけど、真姫と美姫は分かるのか?」
「多分だけど、四字熟語という意味だと思うわ」
流石大学生だな、真姫は意味が分かるようだ。勿論全員一致で不採用決定。
「次は私ね。聞いたら一発で気に入ってしまうわよ。《黄昏の騎士団》よ。聞いた感じが良くない?」
「黄昏って夕方ぐらいのことだったっけ。日が暮れるようにパーティも落ちていったら大変なことになるよね」
「実際に、黄昏の意味にも盛りの時期が過ぎて衰えの見え出すとかって意味があったと思うわ」
真姫は物知りだな。適当に言ったことが大体当たっていたようだ。勿論全員一致で不採用決定。
「次は私ね。今度黒い皮でジャケットを作るでしょ、そこから考えたわ。《漆黒の騎士団》よ」
「美姫も真姫も騎士団が好きなんだな。《東京騎士団》の影響を受けすぎじゃあないか?」
《東京騎士団》と《Black-Red ワルキューレ》は探索者の誰もが知っているクランの名前である。この二つのクランマスターが四字熟語のギフトを持っていて、その活躍によって四字熟語ユニークギフトと呼ばれるようになったと言っても過言ではないだろう。そんな圧倒的なカリスマが率いる東西のトップクランである。
「そりゃあ影響を受けているわよ。憧れの存在だわ」
「僕としては、騎士団は付けたくないんだが、皆はどう思うんだ」
「漆黒と言うのが引っ掛かるわ。中二病的なものを感じるのは私だけなの?」
「オレは悪くないと思うぞ」
取りあえず保留ということで、次の僕の考えた名前を発表することになった。
「僕が考えた名前は《千紫万紅》だ。意味は色とりどりの花が咲き乱れること。タチバナとサツキとリンドウだ悪くない名前と思わないか?まあ、自分で考えたというより、妹の言うことから考えたんだけどね。僕と関わる探索者は花の名前がついているんだって。皐月のパーティ加入も早くから予言していたんだ」
「皐月はまだ仮パーティメンバーよ。でも、《千紫万紅》か意味を聞いたら悪くないわね」
「《千紫万紅》よりもっと有名な四字熟語があるじゃない。《百花繚乱》の方が同じような意味で誰でも知っている言葉だと思うわ」
「そんなことを言ってると、京都から関西弁の怖いお兄さんが文句を言ってくるぞ。ちょっと訳が分からないことを言っちゃったかな。《百花繚乱》はパーティ名としては受け付けてくれないよ。もう実在しているパーティ名だからね。僕が岡山に帰って来る前に在籍していたのが《百花繚乱》なんだ」
「前に言っていた、リーダーが一度の攻略失敗で追放されたパーティね。百を超えて千と万か?リーダーも面白いことを考えるわね。私は賛成するわ」
「オレもそれで良いぞ。綾芽達は元気にしているのか?また会う機会を作ってほしいぜ」
「私の《漆黒の騎士団》より支持を受けるなんて・・・私も《千紫万紅》に賛成するわ。ギャフン!」
美姫の変な深読みと真姫の変なこだわりをスルーしてダンジョンの外へ転移しよう。
部屋の中で買取りをしてもらった後に、常盤さんにパーティ名を告げる。
「パーティ名は《千紫万紅》にしました。登録をお願いします」
「素敵な名前です。全国に名前が広がっても恥ずかしくない良い名前だと思います。今後の活躍に期待していますね」
全国に名前が広がるって、常盤さんは大きいことを言い過ぎだよ。
因みに、宝箱の中にはポーションの他に爆裂の矢が五本ずつ入っていた。三回続けて出てきたということは僕には必要だと考えた方がいい。美姫には練習をしてもらおう。
感想を書いてくださってありがとうございます。すべて読ませて頂いています。真剣に読んで頂いている方が沢山いるようで嬉しく思っています。最近の文章でモヤモヤされている方がいることは申し訳なく思っていますが、今は次の日の二話を考えるので一杯の状態なので、当面文章を大幅に直すことはないです。言い訳がましいですが本心です。感想は続けて書いて頂けるとありがたいと思います。全体の流れから、最後の場面も決めていますが、細かい所はその都度思い付きで書いていることが多々あります。そんな時に感想からヒントを貰うことがよくあります。気付かれている方が多そうですが•••。
これからも続けて読んで、楽しんでいただけると幸いです。
長い文章ですみません。