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第六十九話 パーティ始動

「悪かったよ、真姫。反応が面白いから放っておいたよ」 

「何ですか、その対応は。猛烈に抗議しますよ。差別反対です!」

「分かったから、本当に悪かったよ。でも、真面目な話をするけど、週に四日もダンジョンに来てたら学校が大変だろ。卒業が確定するまでは週に二日くらいで良いんじゃないか?」


 三人で話し合った結果、真姫は当面の間、月金にパーティに参加して活動することになった。来週だけは僕の都合に合わせて火金とした。


 では、矢筒を使ってもらいましょう。まず美姫に渡して血液登録をしてもらう。矢筒には一本矢をセットする所があるらしく、そこに美姫の矢を入れる。そして矢を一本取り出すと、次の矢が矢筒に現れた。謎テクノロジー全開だね。取り出した矢は暫くすると消えて無くなっている。ダンジョンの中でもないのに魔物が持っている武器の様だね。討伐したら消えてなくなるような原理と一緒なのだろうか?実際に的に向かって何本か矢を放ってもらったが実物の矢と同じ感覚で射ることが出来るらしい。実戦で試してみましょう。


 今日も十六階層に転移してから二十階層までの攻略をすることに決めた。パーティとしての初の攻略である。気合いを入れていこう。


 フォーメーションは昨日と同じにして、真姫には最後の二匹を相手してもらうように変更した。真姫がゴブリンと戦っている間は僕が美姫のガード役をすることで納得してもらった。


 順調に進んで行った。思いの外、真姫もしっかりとゴブリンを相手に討伐を繰り返す。【回避】のスキルを使っているのか見た目よりも余裕がありそうだ。進路をゴブリンに出来るだけ会うように変えながら、昨日よりも時間をかけてボス部屋の前に到着した。今日は途中で携帯食料で補給しながら来たのでお腹は空いていない。失敗は二度繰り返さないのだ。


 ボス部屋の順番待ちはいないが、扉は閉まっている。今挑戦している探索者がいるということだ。いつ扉が開いても良いように心の準備をしておく。


「今日は魔法も使っていくよ。魔法を使わないと魔力ポーションがドロップしないんだ。後衛のゴブリンは美姫に任せるからよろしくね。前衛のゴブリン、特にゴブリンソードマンに魔法で攻撃するよ」


 扉が開いた。さあ、もう一頑張りしましょう。三人でボス部屋に入り、扉が閉まった。剣を持っているゴブリンソードマンに向かってファイヤーボールを撃つ。そして違うゴブリンソードマンにも、もう一発撃つ。大きなダメージを与えたようだ、一匹は消えていった。あとは近接戦闘で戦う。刀を一閃する毎にゴブリンがいなくなる。調子はすこぶる良いようだ。調子に乗らずに、最後の二匹は真姫に任せた。危なげなく討伐を終えてドロップアイテムを拾いながら宝箱の出現を待った。


 出て来た宝箱はまたも銅色、【豪運】スキルはお休み中の様である。


「罠はないようだ。今回は美姫が開けてみるか?」

「了解。良いものが出ますように」


 宝箱の中には、お約束の二種類のポーションが五本ずつと青いウエストポーチが入っていた。すべて回収してダンジョンを後にした。


 まずは武具店に行って武器のメンテナンスをしてもらう。僕の刀は自動修復の効果があるので問題無く、美姫の矢の補充も必要無くなった。真姫の槍だけクリーニングしてもらって武具店を出た。矢の補充がないと出費が少ないね。この後パーティ費をどうするか相談しないとね。


 次に向かったのは探索者センターの食堂だ。もう三時を超えているので食事している人はいない。お茶している人がチラホラ見えるだけだ。お弁当を持ち込みで食べるのも悪いので、ハズレのないカレーライスを注文した。このダンジョンにも大分来ていると思うが、食堂で食事をするのは初めてである。さて、いただきましょう。


「真姫はここでよく食事をするのか?」

「ええ、探索した後は大体ここで食べてから解散することが多いわね」

「味についてはどう思っているんだ?」

「こんなものじゃあないかしら。うちのお店はもっと美味しいわよ。今度食べに来てよ、歓迎するわ」

「おう、ありがとうな。今度伺うよ。一緒にダンジョンを攻略する仲間になったし、親御さんにも挨拶しておかないとな。それよりも僕はここの味は無理みたいだ。今度からはここには来ないでお弁当を食べることにするよ。申し訳ないけどね」


 僕の舌が贅沢になっているのかな?ボアカレーと比べているのかな?本当に申し訳ないが今後ここで食事を頼むことはないだろう。飲み物は飲むことはあると思うよ。


 食事が終われば、次は買取りだ。入場受付に向かい移動する。


「リーダー、買取りの受付場所と違うよ。あっちに行かないとダメでしょう」

「言うのを忘れていたけど、僕は部屋で買取りの処理をしてもらうんだ。収納の腕輪を他の人に知られたく無くて、センターの人に優遇してもらっているんだ。ありがたいことだよ」


 入場受付で部屋での買取りをお願いした。担当の常盤さんが部屋へ案内してくれた。ついでに飲み物も用意してくれた。僕が頼んだのはいつものアイスコーヒーだ。


「龍泉様、パーティ名はお決めになられましたか?」

「まだ決めてないです。すぐに必要ですかね?」

「早いうちにお願いします。岡山のエースパーティになりますから、カッコイイのでお願いしますね」


 常盤さん、あんまりハードル高くしないでね。


「皆で話し合って来週中には決めますね」


 買取りのカゴにドロップアイテムをすべて入れると、処理のために常盤さんが部屋を出て行った。

 

「パーティ費を何処から集めるか決めておこうと思うんだけど、何か良い案はあるかな。僕は毎回の買取り金額の一部を貯めていけば良いと思うんだけど」

「普通のパーティならそれで良いと思いますが、うちのパーティでそれをやったら、パーティ費だけで何年かしたら家が建ちますよ。どれだけ貯めるつもりですか?月にいくらと決めてそれぞれが出せば良いと思いますよ」

「じゃあ月初めに、僕が五万円で、皆が一万円出すっていうのはどう?帰還石みたいな大きい買い物があるときにはその時に集めるでいいのかな?」

「お言葉に甘えてその案でいきましょうか。真姫も良い?」

「やっと、私にも話が回ってきたよ。麟瞳さんはいつも私に厳しいですよね。まさか小学生みたいに好きな子にわざと意地悪をするみたいな感じですか?もう子供なんだから」

「パーティからの追放はいつしても良いのかな?美姫、このポンコツはパーティに本当に必要なのか?」


 いちいち真姫の反応は面白いな。


「まあ冗談はこれくらいにしておいて、パーティ名は何にしようか。良い名前はないか?」

「来週中に決めれば良いので、各自で考えて持ち寄りましょう。その中から皆で良い名前だと思うものを決めれば良いと思うわ」

「私が凄いのを考えて、麟瞳さんにギャフンと言わせて見せるわ」

「じゃあ来週の金曜日に考えたパーティ名を持ち寄るで良いかな」


 常盤さんが中里さんを連れて戻ってきた。


「龍泉様、お盆以来ですね。その節は申し訳ありませんでした」

「あの時のことは、中里さんに助けてもらって助かりました。ありがとうございました。今回はそのことを言うためだけに来られたのですか?」

「いやー、聞きたいことがありまして。質問しても良いですか?青いマジックポーチは宝箱から出たものですか?」

「ええそうです。二十階層のボス部屋ですね。銅色の宝箱でした。言うのを忘れていましたが前の槍ですけど、金の宝箱でした。映像で確認したのでお伝えしておきますね」

「龍泉様の宝箱の基準がよく分かりませんね。今回も銅にしてはかなり良いものなんですけどね。じゃあ常盤君内訳からお伝えして」


 今回はゴブリンとの戦闘を多めにしたから買取り金額が良くなった。三十万円くらいになっている。

「最後にマジックポーチですが、容量は十立方メートルですが時間経過がありません。買取り価格が三千万円になります」

「毎回言ってますが、これはあくまでもここで買取りしたときの値段ですからね。オークションに出せばいくらの値段が付くか想像できないです。容量は小さくても、時間経過がありませんからね」

 

 いつものようにマジックアイテム以外を換金してもらった。僕のカードに半分を真姫と美姫のカードに四分の一ずつを入金してもらった。


「リーダーはやっぱり凄いよ。今日だけで手取り約八万円って、まだ貰いすぎてるような気がするわ」

「これからパーティメンバーも増えていくしね。この配分以上貰ったら僕の精神の方がおかしくなるかもしれないからね。それよりもマジックポーチは美姫が装備するのが良いと思うよ。僕には腕輪があるし、真姫は週二の参戦だしね。実家が食べ物屋なんだから、残り物とかお弁当にしてもらって常に入れておくと良いと思うよ」

「じゃあお言葉に甘えて、私が借り受けますね」


 真姫の槍のクリーニング代として昨日とは違う魔物肉を現物支給した。貰いすぎだと言ってきたが、ご両親へのお土産だと言って受け取ってもらった。金曜日の九時に会うことを約束してダンジョンで別れた。







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