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第五十九話 家族旅行 最終日 そして、次の日

 今日も気持ちの良い朝を迎えた。綾芽と二人で鍛練を行ったが、昨日と違い木刀の素振りもしっかりとする。鍛練を終えると温泉に直行だ。この鍛練から温泉への組み合わせは最高だね、合宿をするとしたら絶対に取り入れたいものだ。ここのダンジョンには一生来ないだろうけどね。


 温泉の後に朝御飯を食べて、忘れ物がないかを確認して部屋を出た。この旅館はご飯は美味しいし、トレーニングの環境も申し分ない、とても気に入ったよ。


 予定通りにチェックアウトをしてからビール工場に向けて車を走らせる。なんと今日の運転は父親だ、この後のビールの試飲迄は大丈夫だろう。


 予定通り二十分前に工場に着くことが出来た。僕と綾芽にとってはあまり興味のないところではあるが、昨日は僕達が好きなようにさせてもらったので今日は両親に楽しんでもらおう。


 受付を済ませてから案内をされる。今日の流れを説明してもらって、工場の車で原材料の産地を見に行き、その後に工場内を見学する。父親の足取りが軽いのは少し素早くなる効果のある靴のおかげではなく、この後の試飲に対する期待の為であろう。


 十時十五分にいよいよ父親お待ちかねの時間になった。六種類のビールをテイスティングできるそうで、両親ともに喜々として一つ一つをじっくりと味わっていたよ。その後のお買い物の時間に大量のビールを購入したのはしょうがないよね。


 その後は併設されている食堂でランチをいただく、二人とも満足するまで食べて、飲んで欲しいと思って飲み放題が付いたコースの予約を入れていたんだ。僕と綾芽はソフトドリンクを飲みながら食事を楽しんだ。父親はビールを母親はビールや日本酒そしてワインも飲んでいた。母親がそんなにお酒を飲むのが好きだとは思ってなかったので、新しい発見をしてしまった。料理もいろいろな物が出てきて飽きなかったよ、美味しくいただきました。


 ビール工場の送迎バスで米子駅まで送ってもらった。両親は正気を保ってはいるが、観光は出来そうにないので、駅でお土産を買ってそのまま帰ることにした。特急電車に乗り込むと両親ともにすぐに眠りだしたよ。残った綾芽と二人で来週の火曜日からの三泊四日のダンジョン旅行について話している内に倉敷駅に着いた。倉敷駅から普通電車に乗り換えて最寄の駅に、そして駅からは十分歩いて久しぶりの我が家に無事に到着することが出来た。お疲れ様でした。


 両親はすぐに寝てしまった。お風呂に入ってもらおうと思ったが、飲んでからお風呂にはいるのは良くないと聞いたことがある。いや、飲んだ直後がダメだったっけ、よくわからないのでそのままにしておいた。

 

 晩御飯は綾芽と二人でストックしてある弁当を食べた。久しぶりの母親の味付けはやっぱり美味しいと感じたよ。


 食後にコーヒーを飲みながら今度の旅行で行くダンジョンの情報を見ていると、中里さんより連絡があった。昨日のダンジョンでの出来事を説明して謝罪したいと言うことなので、綾芽と一緒に明日の二時に岡山ダンジョンに伺うと言って電話を切った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「わざわざお越しいただきありがとうございます」


 次の日に岡山ダンジョンに行くと、常盤さんに案内されて部屋に入ったときの中里さんの第一声である。今日は中里さんともう一人おじさんが部屋の中にいた。


「いえいえ、中里さんにはいつも無理を言ってすみません。今回も自分ではどうしていいか分からなかったので頼ってしまいました。こちらこそ、ありがとうございます」


 もう一人のおじさんは物凄い偉い人でした。本部の事務方のトップの人らしい、名刺をもらったけど肩書だけでこちらが緊張してしまったよ。


「今回の皆生温泉ダンジョンの探索者センターによる不正なのですが、龍泉様の言う通りドロップアイテムを誤魔化してお返ししたようです。そして次の日の朝にセリを行い売り捌いていたようです。そんなことを探索者センターはしてはいけないことになっているんですが、普段からセリで少しでも高く売ろうとしていたようです」


 昨日の電話の後に本部と連絡を取り、すぐに皆生温泉に車で行ったそうだ。朝のセリを行っている様子を見てから査察をしたらしい。探索者センターには誤魔化すことが出来ないようなシステムがあるそうで、今回のことも調べればすぐに何をどれだけ中抜きしたのかが分かったそうだ。


「このシステムは支部長であれば知っているんですが、口裏を合わせればバレないと思ったようです。本当に馬鹿ですよね、悪事を働いてバレないはずがないと思わないんですかね」


 本来食材のドロップアイテムは決まった値段で買取り、決まった値段でスーパーに卸すことになっているそうだ。それをスーパーに卸すことをやめてセリでの入札に変えたのが今年の初夏だったそうだ。探索者センターの事務方のトップの人と組んで始めたようで、夏には冷凍物のカニしか手に入れられないこともあって高額な取引になっていた。そこにとんでもない高品質のカニが飛び込んできたので目がくらみドロップアイテムに手を出してしまったようだ。


 関係した者達の処分の内容を聞き、今回の僕達に関する補償などを本部の偉い方と話をして決めた。


 因みに僕達のカニのドロップアイテムは他のカニよりもかなり高額で取引されたらしい。後で通常の値段との差額は返金したらしいがプロの目利きが見ても最上級の品質だったらしい。今日の晩御飯はカニ尽くしなんだよね。こんな話を聞いたら期待してしまうのはしょうがないよね。


 今後このようなことが無いようにしていくのでこれからもよろしくと言われてダンジョンを後にした。


 晩のニュース番組で今回のことが大きく報じられていた。カニ尽くしの晩御飯を食べた後のリビングでのマッタリ時間のテレビで確認した。晩御飯はいつになく静かだったよ。なんでカニを食べると無口になるんだろうね。最高に美味しかったから、また皆生温泉のダンジョンには行くかもしれない。あんなにも行かないと決意したのに、僕は意志薄弱だね。でも、それほどカニは美味かったんだ!








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― 新着の感想 ―
[気になる点] そまそも収納あるんやから元々持ち帰る物は買取り査定に出さんとけば良いやろ
[良い点] 心変わり・・・。 気持ちはよーくわかります。 ・・・仕方ないよね。 ま、スタッフも変わっているでしょうから。 いつも楽しく読ませてもらっています。
[一言] 「あんなにも行かないと決意したのに、僕は意志薄弱だね。でも、それほどカニは美味かったんだ!」 ドロップした物を横領した職員は、懲戒解雇になったんだろうね。
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