第五十四話 真琴への誕生日プレゼント②
探索者センターの買取り受付でドロップアイテムと宝箱から出たマジックアイテムをカゴの中に入れる。一応綾芽も宝箱からマジックアイテムを得ているようだ。
探索者も多かったので、いつもよりも待ち時間が長かった。やっと呼ばれて受付窓口に行くとまたもや部屋への移動である。北河さんに案内されて部屋に入った。
「龍泉様、今日は当ダンジョンにお越しいただきありがとうございます」
支部長の西湖さんが迎えてくれた。僕のおかげで人気のなかったEランクダンジョンにも探索者が来るようになり、たまに性能の良いマジックアイテムが出て更に探索者が多くなっているという話をしてくれた。
「五重ダンジョンも人が多かったですよ。ドロップアイテムは毎月変化があるんですか?」
「はい、毎月とは限りませんが少しずつ変わっていきますね」
「今日は三階層で茄子を五階層で梨をゲット出来て嬉しく思いました。また来ますね」
「それは良かったです。でも、他の探索者の方は梨よりパイナップルの方が良かったと抗議の声をあげる人がいるんですよ。買取り金額が梨の方が安いですからね。私達でどうにかできることでもないのでしょうがないんですけどね。すみません、愚痴を言ってしまいましたね。今のはナシでお願いします」
・・・ここは笑うところなのだろうか?梨とナシをかけているんだよな。僕のコミュニケーション能力ではどう反応して良いのか判断が出来ずスルーしてしまった。西湖さん、申し訳ありません。ついでに、心の中で『ネガティブ西湖』と思っていることも併せて謝っておこう。
北河さんから買取りの内訳を聞いた後に最後のマジックアイテムの鑑定結果を聞く。
「マジックアイテムの鑑定ですが、ナイトキャップはほんの少し良い夢が見られる効果がありまして、買取り価格が6,000円です。次にベルトは火事場の馬鹿力が付与されています。最後の最後に最高の力を発揮する効果です。買取り価格は150,000円です。最後に指輪ですが、会心率がアップする効果が付与されています。所謂クリティカルが発生する確率が良くなる効果ですね。こちらの買取り価格が350,000円です」
「弓でもクリティカルヒットがよく出るようになるんですよね」
「いえ、こちらは打撃系だけに効果があるようなので弓では無理ですね」
今日は茄子と梨を20個ずつと傷んだ茄子と桃、それからマジックアイテムはすべて持ち帰りすることを伝えて処理をしてもらった。
約束通り買取り金額は全額僕のカードに入金して貰ったよ。武器の封印の処理をしてもらい着替えてセンターを後にした。
「お兄ちゃん、どうしよう。真琴にあったマジックアイテムが出なかったよ」
「他のメンバーなら申し分ないものが出たけどな、しょうがないんじゃあないか」
家に着くまで綾芽は落ち込んでいて、いつもの元気が何処かに行ってしまっていた。
晩御飯でも元気がなく両親が心配していたよ。
「綾芽、これで最後だからな。綾芽になら僕の獲得したマジックアイテムを渡すことに何の躊躇もしないが、パーティメンバーでもない他の人は別だからな。本当に今回だけだよ、これを明日真琴に渡してやれ」
僕が渡した物は以前岡山ダンジョンの宝箱から出た命中率アップの効果がある弓である。
「お兄ちゃん、良いの?未来のパーティメンバーの為に取っとくって言ってたよね」
「矢筒は流石にあげられないけど、弓なら大丈夫だよ。それに今日得たマジックアイテムはちゃんと保管しとけよ。誕生日の前日にマジックアイテムを探すのもういやだからな」
「お兄ちゃん、ありがとう。これお礼にあげるね」
男の僕に渡されたのは、ほんの少し良い夢が見られるナイトキャップである。微妙に買取り価格が高くなったのは、ほんの少し運が良くなるミサンガのおかげだろうか?
お風呂に入った後、ヘアバンドとアイマスク、そしてナイトキャップを着けて寝たよ。リラックスして、安眠出来て、良い夢が見られますように。