第四十六話 高梁ダンジョンでの買取り
今日の一回目の投稿です。次は19時に投稿します。
ダンジョンを出て、そのまま買取り受付に向かう。そんなに人はいないので、すぐに呼ばれて受付窓口に行き、カゴの中にドロップアイテムを入れていく。その途中で受付嬢から声がかかった。
「すみません、部屋へ移動します。入れるのを止めてください」
貴重な鉱物がドロップアイテムの中にあるようで、僕が雑にカゴの中に入れていくのが見ていられないようだ。大人しく別室に連行されて行く。面目ない。
部屋の中に入ってソファーに座った後、目の前のテーブルに柔らかそうな布がおかれた。その上に丁寧に出してくれとの指示があった。綾芽と二人で両手で少しずつ掬って出していった。結局時間がかかるんかい!
「鑑定に時間がかかります。お待ちになりますか」
「今日は岡山から来たので、後日伺いますとは言えないんですよ。待ちますよ」
テーブルの上に飲み物とお菓子が出され、しばらく鑑定を待つことになった。母親に連絡を入れて七時までには帰れそうにないことと、晩御飯は家で食べるが先に食べて欲しいことを伝えた。
「お待たせしました」
綾芽と明日の倉敷ダンジョンの話をしていると、やっと鑑定が終わったようで先ほどの受付嬢と一緒におじさんが部屋に入って来た。おじさんは想像通り支部長の茅野智さんで受付嬢は葉月千紗都さん、名刺を渡されて自己紹介された。目の前にはトレイの中に黒い布がしかれていて、その上に色とりどりの宝石が並んでいる。
「早速で申し訳ありませんが、こちらの宝石は何階層のどの魔物からドロップしたのかお分かりになりますか」
茅野さんから難しい質問が飛んで来る。今回のドロップアイテムは魔石や鉱物など小さいものが多い。いちいち見てたら危なくてしょうがないから、落ちている物に掌を当ててすべてを収納していただけだ。
「いや、全然分かりませんね。宝石がドロップしていたことも先ほどカゴに入れるときに気づいたぐらいです」
「私はその大きめの宝石の内の二つはキラーアントからドロップしたと思います。何階層までかは覚えていませんが拾ったことは確かです」
綾芽は覚えがあるそうだ。収納の仕方の違いが関わっているのだろう。一つ一つ拾ってポーチに入れないといけないからな。別に僕が雑だから覚えていないというわけでは決してない・・・と思いたい。
「一階層が終わるまではずっと戦闘中ですからね。階段で一息入れて、また戦闘の繰り返しです。何階層かまでは覚えていないのはしょうがないと思ってください」
とりあえず綾芽のフォローをしておく。
「キラーアントからドロップしたことが分かっただけでも良かったです。こんなに透明度や色の濃さが申し分ないものはめったに見ませんが、今までも宝石はキラーアントからドロップすることがほとんどでしたので、それが確認できただけでも良かったです」
買取りの内訳の説明に入った。魔石の数は過去最多である。まああれだけ沢山の魔物を倒したのは初めてだ。ほとんど一個50円のワークアントの物だけどね。4,388個もあったよ。ソルジャーアントが167個、キラーアントが28個で魔石の金額が241,700円、塵も積もればという奴だ。
それ以外のドロップアイテムはダンジョン鉄と呼ばれる武器の材質になる物が大量にあった。1キログラム2,000円で54キログラムあったので108,000円、ダンジョン銀という特別な効果が付与されたアクセサリーに加工される物が1グラム200円で314グラムあったので62,800円だった。
あとは宝石だけだ。当然僕には宝石の良さなどさっぱり分からない。どんなに素晴らしいかを説明してくれるがはっきり言ってどうでもいい。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アクアマリンが合計で9個ドロップしていたらしい。何と買取り金額の合計が5,463,000円になった。
常盤さんではないが、きっと僕は変顔で驚いていたと思う。これが【豪運】スキルの効果なのだろうか?余りにも凄すぎて逆に怖くなって来る。
「そんなに高額になるんですか?」
「先ほどもお伝えした通り品質も大きさもとても良いですからね。宝石店なら倍の値段が付くかも知れませんよ」
「いや、すべて買取りでお願いします」
葉月さんが手続きの為に退出した。
「宝石がこれ程沢山ドロップしたのは初めてです。ありがとうございました。良い宣伝になります」
「多分ドロップしても気づかない人が多いんじゃあないですか。薄暗いし、一つ一つが小さいですから」
「皆さん探索されるときは光源を確保してますからそれはないと思います」
僕はかなりロストしていると思う。ドロップアイテムを拾うよりも魔物を倒す方が楽しいからね。
「買取り金額の合計が5,875,500円になります。そこから税金分の15パーセントを引いて4,994,175円になります。こちらが買取りの内訳です。こちらにサインをお願いします」
葉月さんより伝えられた衝撃の合計金額だ。カードに二等分して入金してもらうことにした。いつも通り端数は綾芽に入れてもらう。
「流石龍泉様です。これからも高梁ダンジョンをよろしくお願いします」
「僕のことを知ってるんですか?」
「勿論知っています。岡山県内のすべてのダンジョンの支部長が龍泉様を待っていると思います」
「僕の名前がばれないように宣伝して下さいね。お願いしますよ。面倒臭いの嫌なんで」
武器の封印や着替えを済ませてダンジョンを出たのが七時過ぎ、早く帰って明日に備えよう。