第四十四話 友からの電話と高梁ダンジョンへ
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晩御飯を家族全員で食べている時に、明日は六時二十四分の電車に乗ってダンジョンに向かうことを綾芽に伝え、母親に弁当を頼んだ。
「麟瞳、ダンジョンに入って大丈夫なのかい?」
「昨日の夜は不安もあったけど、もう大丈夫。心配かけたね、ありがとう」
風呂に入った後ゆっくりしていると、正輝から電話がかかってきた。
「ニュース見たぞ。あの狙われたソロ探索者って麟瞳だろ」
「そうだけど全国ニュースになってるの?今日もダンジョンにテレビカメラ来てたけど」
「ダンジョン関連の悪いニュースはすぐに広まるからな」
「弓矢で狙われてね、躓いてなかったら当たっていたと思うよ。死ぬところだったよ」
「いや、死にはしないからな。多少は痛いかもしれないけど」
正輝の話によると身につけているバトルスーツは値段が高いだけあって性能がハンパなく良いらしい。心春のように風魔法を纏わせた矢や鏃が特殊金属でもない限り大丈夫だという。ニューモデルだから正輝の物より更に性能が良くなっているとのことだ。
「お前、自分の身につけている物ぐらい性能を把握しとけよ」
「面目ない。大体の性能は分かっているつもりだったんだけどね。まあ、正輝が着ているから良いものだろうという安心感で買ったんだけどね」
「ちゃんとしろよライバルなんだから」
「分かったよ。指輪ありがとうな、助かってるよ」
それから少し話をしてから電話を切った。何だか震えていた自分が情けなく思えてきたよ。早く寝よう。
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次の日は朝の鍛練はせず、家を六時十分に出た。勿論朝御飯は食べてきたよ。
予定通り電車に乗って高梁へと向かう。電車を下りてダンジョン行きのバスに乗り十分で到着する予定だ。電車の乗車時間は四十五分、その間にダンジョンについて綾芽に説明をしておく。
現存十二天守の一つ、備中松山城がある山の麓に出来たDランクダンジョンで洞窟型。洞窟型だけあって中は薄暗く視界が悪い。そして出てくる魔物はアリだ。20センチ位のワークアント、50センチ位のソルジャーアント、1メートル位のキラーアントが出て来て、ボス部屋は更に大きいマザーアントを含めた複数の集団になる。身体が大きいほど噛まれたときのダメージが大きい。全二十五階層で一階層から五階層まではワークアントしか出て来ない。六階層からはソルジャーアントが、そして十一階層からはキラーアントが出て来るようになる。ところどころにアリの巣につながっている穴があり、そこから襲ってくることもあるようで要注意だ。
「暗いのは大丈夫だよ。私にはゴーグルがあるからね」
「ああ、ゴーグル込みで考えてここに決めたんだ。体表が硬いから槍で突く練習にもなると思ってな。ここはアリだから人気がないが、たまに鉱物がドロップする。運が良いとどれ位ドロップするんだろうな?」
「お兄ちゃん、悪い顔になってるよ」
電車からバスに乗り換えて予定通りダンジョンに着いた。時刻は七時半、攻略時間はたっぷりある。更衣室で着替えをして受付に向かい、受付の側で綾芽と合流する。
「何か着ている物が違うと雰囲気変わるなー」
「でしょう。コーディネート頑張ったんだよ。まあヘルメットだけ新調したんだけどね」
ダンジョンの宝箱から出たマジックアイテムで固められた装備を上手に着こなしている。薄茶色のブーツに探索者用の黒いスリムなパンツ、パステルピンクのジャンバーに緑のウエストポーチ、そしてリストバンドは黒色でゴーグルは白色だ。ヘルメットも白地にグレーのラインが入っている。それに青みがかった銀色の槍を持てばキマルだろう。
揃って受付に行き、まず武器ケースの封印を解いてもらう。探索者証を出しチェックを受けて、手荷物とケースを預ける。
ダンジョンゲートの外側の扉を探索者証を通してくぐり、転移の柱から一階層に転移すれば良いが、その前にダンジョンカードを重ねてパーティ登録をする。ん、ちょっとおかしいぞ。
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ランク:A
名 前:龍泉 麟瞳
スキル:点滴穿石 剣刀術 豪運 罠探知 罠解除
火魔法
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よく見てみると、スキルの欄にあるはずの幸運が豪運に変わっている。
「お兄ちゃん、どうしたの?早くパーティ登録をしてダンジョンに入ろうよ」
「いや、スキルが変わっているんだ。幸運が豪運になっているんだ。前に見たときには変わっていなかった筈なんだが」
「良かったじゃん。スキルが強くなったんでしょ。早く入ろうよ」
まあ探索後に考えようか。綾芽とダンジョンカードを重ねてパーティ登録し、転移の柱から一階層に転移する。