第二十三話 母親と買い物
朝はいつも通り綾芽と一緒に鍛練をした。シャワーを浴びて朝飯を食べて、お出かけまで漫画を読んで過ごす。
今日は母親と買い物のお約束、九時になり母親から出発の声がかかった。母親運転の車で倉敷市の児島まで行って水揚げされたばかりのお魚を買いに行くとのこと。
「母さんと二人だけでお出かけなんて初めてだよね」
「麟瞳が小さい頃は近所のスーパーによく行ってたけどね」
「遠出の事だよ」
「そうだね家族ではよく出かけてたけど、二人は初めてかもね」
車で行くこと一時間で直売センターに到着。発泡スチロールの箱の氷の上に魚が入れられいくつも並んでいる。空の箱も目立っている。八時にオープンして近所の方だけでなく遠方からも買いに来る人が多いらしい。
母親は魚を見て周り、マナガツオ、アナゴ、スズキ、キジハタ、メイタガレイ、サバ、アジ、イワシ、テナガダコ、マダコ、マイカなど沢山買いまくる。購入した魚は無料で捌いてくれるそうで、しばらく待ってから受け取った。
嬉しそうにしている母親と車の中に戻ってから腕輪に収納する。こうしておけば腐ることなく保存が出来る。これを狙ってのご指名である。任務を果たせて良かったよ。
直売センターを出て、近くにあるスーパーのテナントを見て回る。八百屋で新鮮な野菜と果物を仕入れ、魚屋で母親念願の鮎を大量に購入する。これも車の中で収納していく。
「昼御飯何食べたい?」
唐突に母親が聞いてくる。最近魔物肉ばかり料理してもらっていたのでお礼をしておこう。
「美味しいうなぎ屋って近くにあるの?うなぎ、母さん好きだったでしょ。一緒に食べようよ。僕が出すからさ」
「せっかくだから甘えようかね。ちょっとここからだと遠いんだけど、有名なうなぎ屋が帰りの道沿いにあるんだよ。そこに行ってみようかね。でも、高いよ。大丈夫?」
「大丈夫だよ。本当に昔より稼ぎが良いんだよ。ビックリするぐらいね」
四十分くらいかかっただろうか、目的のお店に到着。店の外まで行列が出来ている。
「どうする結構な行列だよ」
「それだけ美味しいんでしょ。並んで待とうよ」
一時間近く待っただろうか、ようやく店の中に入れた。店に入る前から匂いが食欲をそそる。メニューを見てうなぎ定食(特上)を二つ頼む。しばらくしてご対面である。重箱にぎっしりとうなぎが並んで御飯が見えないぞ。うなぎの白焼きと漬け物が添えられ、肝吸いがついたセットである。
「久しぶりにうなぎ食べたけど美味いね。香ばしくて身に厚みがあって食べ応え十分だよ」
「これは家ではできないもんね。麟瞳、ありがとね」
うなぎを食べた後は家に帰ってまったりと過ごす。何もすることが無いので岡山県にあるダンジョンの情報をスマホでチェックしたりする。途中で母親と一緒におやつとしてメロンにバニラアイスをトッピングして食べた。美味しかったよ。実家に帰ってから、毎日美味いばかり言っているように感じる。これが僕にとっての一番の変化かもしれないな。
五時になり母親より晩御飯の料理をするからマナガツオとテナガダコを出してと要請を受ける。手伝わなくて良い。ゆっくりしておけとのこと。どう料理されるのか楽しみだ。
更にスマホでダンジョン情報を見ていると、いつの間にか父親と綾芽も帰って来ていた。晩御飯をいただきましょう。
今日の献立は和食。タコ飯にタコの唐揚げ、マナガツオの煮付け、漬け物とお吸い物が付いている。いつも通りタコ飯は大盛りにしてもらう。
「タコ飯のタコが柔らかくて美味しいよ」
「タコの唐揚げはビールに合うなー」
僕を筆頭にうちの家族は表現力に欠けているようだ。まあ美味いものは美味いんだ。マナガツオも身離れが良く甘辛く味付けされた白身が美味い。ビールにも合うだろうタコの唐揚げは弾力が楽しい。逆にタコ飯は綾芽がいうように柔らかく醤油出汁で炊かれた御飯と合っている。ごちそうさまでした。
今日も晩飯をお弁当箱に入れてもらいました。
順番にお風呂をいただいて、おやすみなさい。