第百四十六話 大阪Aランクダンジョン一階層から五階層を攻略
「五十です。赤いのいます」
恵梨花がウルフの集団を引き付けて戻ってきた。もう何度目の戦闘になるだろうか?正輝と僕ですべてを倒してきた。今回もウルフの真ん中にフレイムボムを撃ち込み、陣形を乱して高速移動を始める。
「奈倉さんの動きには無駄がないな。う~ん、強いな。龍泉さんが強いと言うだけはある」
戦闘後に美紅さんが感想を言う。正輝の戦闘を見て感心している。僕も何度も見てきたお手本のような身体の動き、【円転自在】スキルで更に洗練されてきたのだろう。
「魔法は麟瞳、近接戦で正輝やな。美紅が新しい短剣で戦いたくてウズウズしとるし、交代で休みを入れよか?まずは麟瞳が休んだらええで」
戦闘を続けてきて疲れが出ているのが分かったのか、世那さんがさりげなく理由をつけて休ませてくれた。
「麟瞳、美紅の動きをよう見といてな。あんたは正輝の動きより、美紅の方が多分参考になるわ。高速移動の戦闘が得意なあんたにはええ勉強になると思うで」
「正輝の動きを参考にしてずっと練習してきたんですけどね、僕の動きは正輝には届かないですか?」
「正輝とあんたはタイプが違うんや。正輝の動きを参考にするのはええことや。正輝は無駄がない戦い方が身についとる。ウチでも感心する動きをしよるで。でも、麟瞳の強みは魔法を織り交ぜた多彩な攻撃や。一つ一つの動きは取り入れてもええが、違うタイプのアタッカーを目指さんと勿体ないで。美紅の動きを見てみ。ええ勉強になると思うで」
美紅さんの戦闘を目で追う。短転移を随所で使い、相手に狙いを絞らせず一方的に攻撃をしていく。短転移優秀すぎでしょ。じっくり見ている僕でも動きを追えなくなる。ウルフも混乱して連携がとれない、動きがバラバラだ。世那さんが僕の参考になると言うんだから、似たような素養が僕にもあるのだろうか?
「いや~、斬撃が飛んでいくぞ。まだ私も強くなれそうだ。感謝する」
戦闘を終えて戻って来る美紅さんが嬉しそうに言ってきた。まだ本気を出していない戦闘でも目で追えないのに、今より強くなるのか?更に上には九人もいる。最強になるのは大変そうだ。
五階層のボス部屋の前に到着した。車の中で確認したように約五百の魔物が待っている。
「麟瞳と正輝は自由に動き回ってええわ。ぎょうさん倒してもらおか。ウチらのことは考えんでええで」
今後のことも考えて、一番大きな魔法の攻撃から戦闘を開始する。恵梨花に見せるためだ。僕は刀に魔力を流し雷魔法を広範囲に撃ち込む。正輝は巨大な火の斬撃を遠くまで飛ばす。勿論皆さんに耳栓は渡している。クレームを後からされないようにしないとね。いつも通り魔物に向かい高速移動をしながら近づく。近づく集団の中にフレイムボムを発動する。バラけるウルフに近づき刀で斬りつける。どんどんウルフは少なくなっていく。最後のウルフに美紅さんが止めを刺した。
「最後の良いところをもらってしまったな」
今日の美紅さんは短剣が新しくなったせいか、途中から積極的に戦闘に加わっていた印象だ。後で映像を見て動きをよく見てみようと思う。何処かに僕が参考に出来るところがある筈だ。
まあー、ドロップアイテムを拾うのもいつもより大変だ。
「流石にAランクダンジョンのボス部屋ですね。数が多いからドロップアイテムを拾うのも大変ですね」
「麟瞳、ウチらは一万二千のドロップアイテムを拾わされたんやで、これぐらいで大変言われても困るわ」
僕が意識をなくしている間の話ですよね。確かに桁が二桁違う。大変のレベルが違いますね。今回は積極的に拾わせていただきます。
最後に正輝が金色の宝箱の中身を回収して、今日の探索は終了した。
六階層の転移の柱に正輝と僕が登録をして、そのままダンジョンの外に転移した。