第百四十一話 探索するダンジョンを決めよう
九月のクラン会議はスムーズに進んでいた。依頼については、とりあえず正輝と僕がAランクダンジョンを探索してみないとどうなるのか分からない状態だ。《Black-Red ワルキューレ》の協力で、いよいよ今度の水曜日から正輝と僕はAランクダンジョンの探索を始めることになった。《百花繚乱》でのAランクダンジョンの探索とは違い、魔物との戦闘をしながらの探索である。不安もあるが期待の方が大きい。僕はもう一段階強くなれる気がする。
《カラフルワールド》に関しては、今探索している京都の草原型のCランクダンジョンを完全攻略することが目標となる。八月中に予定通り四十階層まで攻略している。あとは四十一階層から五十階層までの十階層を残すのみ、なんとか目標を突破してほしいと思う。
《千紫万紅》に関しては、こちらもパーティとしていよいよBランクダンジョンの探索を始める。大事なのは何処のBランクダンジョンを探索するかである。
「Bランクダンジョンを完全攻略するためには、半年以上かかると考えていた方が良いと思う。まずは何処のBランクダンジョンを探索するか決めよう」
「麟瞳がリーダーなんだ、まず麟瞳が探索したいダンジョンから考えた方が良いと思う。麟瞳は何処のダンジョンが良いと思っているんだ」
「僕は大阪か京都が良いと思っている。最初は《Black-Red ワルキューレ》とのAランクダンジョンの探索もあるから大阪の方が良いと思っていたんだが、京都の方がドロップアイテムが良いんだ。真姫が調べてくれたんだけど、京都のBランクダンジョンからは魔力ポーションが出たという情報が結構あるようだ。《花鳥風月》にとっては魔力ポーションはなくてはならないアイテムだから、探索しながらポーションを獲得できるメリットは大きいと思うんだ。でも、大阪も捨てがたいんだよね。皆はどちらが良いと思う?」
「私はドロップアイテムで決めるよりも、魔物との相性で決めたいと思うわ。福岡ダンジョンの五十階層で失敗しているからそう思うのかもしれないけど大事なことだと思う」
「どんな魔物が相性が悪いと思うんだ?」
「森林で素早く動くような魔物は苦手にすると思う」
「僕はこのパーティは弱点が少ないと思っているんだけどね。森林型でも全員が魔法を使えるからイケると思ってる。でも、最初に選ぶのはやめておいた方が良いか」
「大阪の方に決まりだな。京都は三十一階層から森林型になる。大阪を完全攻略して自信をつけた後で京都に挑戦しても良いんじゃないか?」
「あのー、良いっすか。毎日ここから大阪に移動するのは、時間もお金も勿体ないと思うっす。三十一階層から森林型なら、今月は三十階層までの探索をしておけば良いと思うっす。どうせ両方完全攻略するなら損にはならないと思うっす」
「そうか、そういう考えもアリだね。その案なら確かに毎日大阪まで行く必要もない。詩音、良いと思うよ」
正輝、美姫、皐月も同意したので、探索するダンジョンが決まった。
「では来月からは大阪に拠点を移すことになる。《カラフルワールド》も一緒に大阪に移動だ。無理をする必要はないけど、今月中に京都の草原型のCランクダンジョンは完全攻略してほしいね。未練を残さない方が精神的に良いと思うよ」
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新しいバトルスーツが仕上がり、今日がそのバトルスーツを初めて着ての探索だ。会議で決めたように、京都のBランクダンジョンを探索する。《百花繚乱》の時にもこのダンジョンが最初のBランクダンジョンへの挑戦だった。今度は荷物持ちではなく、ちゃんとした戦力として探索出来る。去年の七月には想像もしていなかった速度でここまで来れた。
「何をやっているんだ、さっさと入場受付に行こうぜ」
「いやー、僕は《百花繚乱》では荷物持ちだったから、こうやってきちんとBランクダンジョンを探索できることが嬉しくてね」
「Bランクダンジョンは、ついこの前神戸ダンジョンに入っただろう」
「ここは《百花繚乱》が初めてBランクダンジョンを完全攻略した場所、Aランカーになった場所だろ。思うところがあるんだよ」
「そうなのか?まあ、確かに懐かしいな。なんであんなに自信があったのかな。今思い返すとかなり未熟だったよな。若さって怖いわ」
五人が揃って入場受付を済ませた。武器のケースの封印は雷魔法の刀と氷魔法の刀の二つとも解いてもらう。当然メインは雷魔法の刀で、氷魔法の刀はダンジョンに入ると同時に腕輪に収納するつもりだ。
靴は空歩の靴を履いている。風魔法の付与された靴は正輝に装備してもらった。使わないと勿体ないし、正輝は【風林火山】だ。はやきこと風の如くだからね。
五人のダンジョンカードを重ねてパーティ登録をした。さあ、探索の開始だ。転移の柱に五人が触れて一階層に転移した。