第百三十三話 入団テスト②
午前中の入団テストの結果が張り出された。どうしてダメだったのかを分からせるためだろうか、受験番号とともにそれぞれの結果も書かれている。五キロ走と魔法攻撃力に関しては僕が圧倒的な数字になっているが、物理攻撃力に関しては三万点台が五人いる。僕の35,068はギリギリ一番のようだ。男性の午前中のテストの合格者はちょうど十人だけしか残っていない。最終的には何人の人が残るのだろうか?
午後のテストは実際にダンジョンを使ってのテストになる。受験者全員が着替えをして、大阪のBランクダンジョンへとバスで移動した。
男性と女性の受験者をポジションごとに振り分け、そこに《Black-Red ワルキューレ》と《東京騎士団》のクランメンバーが入り臨時パーティが出来ていく。僕の臨時パーティは受験者は僕一人で残りのメンバーは黒澤世那、赤峯美紅、加納創一、榊伊織の四人・・・何を考えて編成してるんだよ!
「おもろいやろ。あんたのスキルの破壊力見たいしな。ドロップアイテムは全部麟瞳の物にするさかい、よろしゅうな」
完全に遊んでますよね。ん、ちょっと待てよ。良く考えれば、僕を除けば日本を代表する探索者が四人のドリームパーティじゃないか。それを特等席で見られるなんて、【豪運】スキルのおかげかもしれないぞ。
「それでは午後のテストを開始する。臨時パーティで探索をしてもらう。一階層から五階層までの攻略をダンジョンに入ってから三時間以内で終わらせること。それではAパーティから順番にダンジョンに入って行くぞ。入る間隔は十分毎だ」
僕はAパーティ、一番最初にダンジョンに入る。ダンジョンの外側の扉を探索者カードを通してくぐり、転移の柱の前に来た。
「パーティ登録はするんですか?」
「当たり前やろ。ウチらはパーティ、命を預ける者同士やで。早うダンジョンカード渡してな」
四人でじっくり僕のカードを覗くのやめて欲しいんですけど。世那さんと美紅さんは僕のスキルは全部知っているでしょう。
「見たことないスキルばかりなんだが・・・」
「せやろ、【火魔法】と【投擲】以外は全部初めてやわ。最初聞いたとき、耳を疑ったで」
「絶対に他の人にしゃべらないでくださいね。お願いしますよ」
「後で、ウチらのダンジョンカードを見せるさかいな。おあいこや」
それはとても興味ある取引だ。探索者のトップのスキルを見ることが出来る。気合いが入ってきたよ。
大阪のBランクダンジョンは一階層から十階層までは草原型でバッタ、ヘビのような草の中に隠れているような魔物から鳥のような飛行する魔物、そしてボアや水牛のような動物型の魔物が出てくる。
「とりあえず、後のパーティに追いつかれたら面倒や。麟瞳、次の階層まで早う行こうや。あんまり倒さんでええからスピード重視やで」
風魔法の靴に魔力を流し、魔物を躱しながら階段を目指す。どうしても戦わなければいけないものだけ戦い、次の階層への階段を見つけた。皆さん平気な顔でついて来る。
「ここからが本番や。好きに動いてええで。ウチらは見とるからな」
僕一人で戦うんですか?まあ四人にとっては取るに足らない相手なのだろう。僕は結構真面目に相手しないといけないように思う。【全探知】スキルで周りを確認しながら、魔法と刀で魔物を倒していく。
ドロップアイテムの回収は面倒臭いので腕輪の収納を使う。いろいろと秘密はバレているから今更隠してもしょうがない。ポーション、お肉、チーズ、角、そして魔石がドロップしている。
ドンドン階層を進めて五階層のボス部屋の前に着いた。
「大きい魔法で攻撃をしようと思います。耳栓をしてください」
皆さんに耳栓を渡して準備万端。僕を先頭にボス部屋に入った。扉が閉まり、僕は刀に魔力を流し雷魔法の斬撃を飛ばした。広範囲に広がりながら稲妻がはしる。姫路ダンジョンのボス部屋で練習したから、加減も上手くなった。討ち漏らしを刀で斬り討伐完了。ドロップアイテムを拾うのが大変なんですけど、手伝ってくれないんですか?最後に銀色の宝箱を開けた。宝箱の中からはポーションが五本とスキルオーブが出てきた。それらを回収し、僕の入団テストは終わった。
ボス部屋の奥の階段に近づいていく。違和感を感じた。伝えた方が良いのだろうか?
「あのー、ここの壁が通り抜けられるようになっています。どうしますか?」
「良く気づいたな。言われて初めて気がついたよ。【全探知】スキルなのか?結構探知には自信があったんだがね。君といると自信がなくなってくるよ」
美紅さんは気づいてなかったようだ。確かにほんの少し違和感を感じただけだった。
「隠し部屋なのか?当然行くでしょ。Bランクダンジョンの低階層でワクワクすることがあるなんて思っていなかったよ。いやー、本当に来て良かった
」
加納さんの戦闘狂らしい本音がもれる。
「部屋なのか通路が繋がっているかは分からないですね。青いオーガの時には通路が繋がっていましたが」
四人の戦力を考えれば、当然壁を通り抜けて探索をすることに決まった。
さて、どうなることやら。