第百二十話 組分け
昨日京都にバトルスーツを受け取りに行ってきた。そして、今日は全員で岡山ダンジョンへとやって来た。六月の始動である。新しい装備に身を包み、皆で受付を済ませる。
「流石にトップクランの装備ですね。これからの活躍、さらに期待しています」
すっかり顔なじみになった受付嬢から、励ましの言葉をもらった。
結局五月のクランの月間ランキングは二位になった。最後に宝石の納品依頼で追い上げて、もしかして一位になれるかもと思っていたが、甘くはなかった。二強の間に食い込んだだけでも、十分なインパクトを与えているかもしれない。二強とは言わずと知れた、東の《東京騎士団》と西の《Black-Red ワルキューレ》。五月の一位は橘姉妹が大好きな《東京騎士団》だった。
《桜花の誓い》は岡山ダンジョンを三十階層まで攻略している。六月は三十一階層からの攻略だが、メンバーを《千紫万紅》と《桜花の誓い》で入れ替えて、五人ずつの二つのパーティーに別れて完全攻略する予定だ。七月に改めて《桜花の誓い》単独でチャレンジしてもらおうと計画している。
「お先に私達《晴れの国騎士団》が行かせてもらうわ」
ネーミングセンスがなく、どうしても騎士団が好きな橘姉妹と皐月、遥、綾芽の五人組が先行してダンジョンへと転移していった。三人の槍のアタッカーで攻略を進める。三人とも魔法の付与された槍使い、はまれば強力な攻撃力を持つパーティになるだろう。
「じゃあ僕達も行くよ!」
ダンジョンカードを重ねてパーティ登録をしてから、五人で転移の柱に触れる。僕達のパーティは大盾使いの桃と山吹、弓術士の真琴、それに詩音と僕の五人組だ。パーティ名は《カラフルワールド》五人のバトルスーツの色が本当に色とりどりになり、華やかである。特に桃と山吹と真琴はそれぞれ自分の花の色にしている。よくこんな色まであるよなー、流石一流メーカーだよ。桃は薄い桃色、山吹は山吹色、真琴は葵色に近い薄い紫色、そして詩音は紺色、僕は黒色、デザインされたラインが格好よく入っているが思いきった選択だよね。若いって良いよね。皆似合ってるよ。一階層に転移した。
「戦術を確認するぞ、基本的な戦術は単純だ。後衛ゴブリンを真琴の弓で仕留めて、前衛ゴブリンの攻撃を二枚盾で防いで詩音と僕が仕留める。後衛ゴブリンが三匹以上いたり、ホブゴブリンが三匹以上いる場合には僕が先に数を減らすよ」
「了解っす」
「了解しました」
「了解」
「ボクも了解です」
ん、変なのが一人いるぞ。
「山吹、いつからボクっ娘になった?」
「ヤッパリ変ですか?」
「山吹、ここで負けたらダメっす。続けることが肝心っす」
「分かったよ、詩音姉。ボクは皆に認知されるまで続けるよ」
二人で固く手を握り合い、熱く語っている。こういうのは、ほっとくに限る。深く関わってはいけない。
昨日の夜に組分けをした後に三人のダンジョンカードを見せてもらった。
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ランク:C
名 前:葵 真琴
スキル:回転 弓術、必中
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ランク:C
名 前:田中 桃
スキル:状態異常耐性 盾術 受け流し
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ランク:C
名 前:中村 山吹
スキル:直感 盾術 ガード
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三人とも面白そうなギフトを授かっている。
「真琴、【回転】スキルはどういうふうに使っているんだ?」
「矢に回転を与えて命中精度をあげています。誕生日プレゼントに貰った命中率アップの弓との相性は抜群で、今では狙ったところに命中することが出来ます。おかげで【必中】スキルも得ることが出来ました」
最近【必中】スキルを得たようだ。努力している結果だね。僕は七年間もスキルは二つだけだった。三人とも僕を既に超えているよ。
「桃の【状態異常耐性】スキルはギフトだよな。いきなりの上位スキルを授かるなんて凄いね」
「体が弱かった。ずっと病気かケガ。十五歳のギフトで変わった。身体を動かすの楽しい。ダンジョン高校に入学して良かった」
この子も独特な話し方をするな。弱かった身体をギフトが助けてくれたのか?でもこのスキルは強いよ。低ランクダンジョンではまだ状態異常を受ける攻撃なんてして来ないけど、高ランクダンジョンでの恩恵は計り知れない。状態異常耐性回復魔法のスクロールは神戸ダンジョンで二つ手に入れたが、どこかで耐性の指輪がドロップしないかな?それくらい有用なスキルだと思っている。
「山吹の【直感】スキルはどんな風に影響するんだ」
「ボクが感じます。これはヤバイとか、こっちの方が良いとか、根拠はないけど感じます」
昨日の夜の組分けをした後にお互いのスキルの確認をした。当然僕と詩音もダンジョンカードを見せて説明をした。
「マスターの【豪運】スキルの有り難みはよく分かっています。他のスキルも凄いのばかりですね」
「二人ともユニークギフト持ち。凄すぎ。心強い」
「ボクはマスターのユニークギフトが読めないよ。どういうギフトなんですか?」
「てんてきせんせきって読むんだけど、よく分からないんだ。でも、僕を護ってくれるギフトなのは間違いないと思うよ」
もう二人ユニークギフト持ちがいるんだよね。近いうちに知ることになるだろうけど、僕からは言わないよ。
熱い語り合いも終わったようだ。攻略を開始しよう。