第十二話 Dランク倉敷ダンジョンへ
さすが晴れの国だな。梅雨明けはまだだったと思うが良い天気が続く。朝は綾芽と一緒に鍛練。いつも通りのメニューを熟していると途中で話しかけて来る。
「お兄ちゃん、明日の予定はどうなってるの?」
「明日は土曜日だからダンジョンも人が多いだろう。だからダンジョンの練習場を使って投擲の練習をしようかと思っている。まあ基本土日はダンジョンに入らないな」
「だったらさ、前倒しでDランクダンジョンに付き合ってよ。お兄ちゃんの映像見てたら我慢できなくなっちゃった。今日皆に確認しておくから」
「ああいいぞ。僕は周りの迷惑にならないように投擲で参加しようかな」
どうも綾芽は戦闘狂のようだ気をつけておこう。最後のストレッチで終了。鍛練後はシャワーを浴びるが学校のある綾芽が先にシャワーを使う。その時に母親から弁当を二つ貰う。一つは今日のお昼でもう一つはストックとして。
「母さん、明日は綾芽のパーティメンバーと一緒に倉敷のダンジョンに行くことになったから。お弁当を二人分とストックで一つお願い」
大事なことは早めに伝えておく。シャワーを浴びてから朝御飯をゆっくりといただく。綾芽は急いで登校して行った。今日は下調べとして倉敷ダンジョンに行ってみるかな。情報をチェックしておこう。
倉敷ダンジョンは駅のすぐ近くにある草原型ダンジョン。全三十階層で多種類の魔物が出現する。ラビット系、ウルフ系、ボア系と動物系の魔物が続けて出てくる。最終階層のボスは数体のオークである。肉のドロップで有名なダンジョンで難易度も高くなく人気があるとのこと。肉は是非お土産として持ち帰りたい。
地図情報もヘルメットへと取り込んで準備万端出発しよう。近所の公園で石を少し補充して駅へと向かう。思ったよりも石って落ちてないね。河原に行けば沢山あるのかな。
駅から電車で二駅あっという間に倉敷駅に着いた。電車の中からダンジョン装備に身を包んだ探索者がちらほら目に付く。その人たちの後を付いていくとすぐにダンジョンに到着した。岡山ダンジョンよりもかなり人が多い。更衣室も人でいっぱいだ。装備を自宅から身に付けたくなる気持ちも分かるが、僕の場合は全身真っ黒の上から白いジャケットに黒いヘルメットだ。不審者になってしまう。順番を待って着替えをした。
お約束のリュックを背負い、着替えのバッグと武器ケースを持って受付へと行く。ここでも順番待ち。平日でこの混みようなら明日はどれほど混むのだろうと憂鬱になる。帰ったら綾芽に伝えよう。やっと僕の順番だ。武器ケースの解除をしてもらい、探索者証を渡しチェックしてもらう。バッグとケースを預かってもらっていよいよダンジョンに。外の扉を探索者証を通してくぐり転移の柱に、初めてのダンジョンだ。一階層に転移。
転移の先はセーフティーゾーン。今日はリュックを背負ったまま攻略を進めよう。どこで見られているか分からないから安全のための措置だ。かなり広い草原で見晴らしが良い。とにかく人が多い。多過ぎる。魔物の数よりも人の数の方が多いだろう。人がバラけるまでできるだけ魔物と戦闘をしないようにしながら下の階層を目指す。一気に三階層まで駆け降りた。まだ人が多いがここまで来ると魔物にもエンカウントする。初めての魔物はホーンラビット。見た目の可愛さに騙されないようにしないといけない。近付くとものすごい勢いで突進して来る。角が恐怖心を煽る。
突進して来るのを半身で交わし擦れ違いざまに首をはねる。冷静に対処すれば動物系の魔物は簡単に倒せる。数が多くなったときだけ注意は必要だ。すぐに黒い靄に変わりドロップアイテムを落とす。早速肉というか皮を剥がされたウサギが丸ごとドロップしたように見える。今日もツイている。魔石と肉を収納して次の階段を目指す。
Dランクダンジョンまでは最終階層にしかボス部屋がない。でも、D・Eランクダンジョンには五階層進む毎に転移の柱は存在している。一気に六階層の転移の柱に到達し登録をしておく。六階層も転移の柱があるためか人が多い。ここもできるだけ戦闘をせずに下を目指す。途中ではぐれっぽい魔物に数度出会ったが難無く処理をして進む。八階層からはウルフ系の魔物が出て来るようになった。ウルフは人気が無いのかな、やっと落ち着いて戦闘が出来そうだ。
ウルフ系の魔物は素早いのと集団で行動するのが特徴だろう。噛み付き攻撃には要注意。角を持った固体もいるので更に注意が必要だ。
五匹のウルフの群れに遭遇、角持ちはいない。こちらが動くよりも早く二匹が突っ込んで来る。逃げれば、向こうの思う壷である。追い回されて複数の攻撃を浴びる。こういう時は向かって行くに限る。こちらも突っ込んで直前で躱す。二匹目のウルフを擦れ違いざまに切り付ける。これで一匹。更に数が多い方に向かって突っ込む。向かってくれば先ほどと同じように対処すれば良いし、逃げれば一匹ずつ相手をすれば安全に刈れる。程なく討伐完了。魔石と肉と毛皮がドロップした。ウルフの肉は美味いのかな?
十一階層の転移の柱で登録をした後に、セーフティーゾーンでお昼を食べて少しまったり。今日の目標を十六階層の転移の柱に決めて再開した。十一階層から十五階層は結構な数のウルフとエンカウントした。数の多い集団戦では投擲も使ってみた。あまりうまくいかなかったけどね。まあ危なげなく無事に十六階層の転移の柱に到着し、早速登録をしておく。困ったのはドロップ品が多過ぎてリュックに入り切らないこと。しょうがないので、腕輪に収納している買物袋を使ってすべてのドロップ品を詰めた。ダンジョンでの拾得物は一度買取りの受付で見せなくてはいけない。ルールは守らなければならないのだ。