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第百十五話 オークション再び

 会見も終わり、クランメンバーが待つ部屋へと移動する。中里さんと常盤さんも一緒に会見の様子をモニター越しに見ていたようだ。


「リーダー、真姫、お疲れ様。ガチガチに緊張してたね」

「もうこんな経験しなくて良いよ。協会さんの協力がなかったらどうなったことか分からないよ。中里さん、ありがとうございました」

「いえいえ、役に立てたなら何よりです。本音を言うとクラン《花鳥風月》様にはもっと活躍して一位を取りつづけていただければと思います。今回一位になったことで探索者省もクラン《花鳥風月》様や《千紫万紅》様のことが無視できなくなりました。今まで岡山県の探索者協会から探索者省に大阪ダンジョンの本の開示を求めてきましたが、相手にされませんでした。ですが、今回は探索者省が発表するランキングで一位になりましたからね。大きいですよ。ランク一位のクランからの要請ですから今までのように無碍には出来ないと思います。改めて岡山県の探索者協会から大阪ダンジョンの本に関しては申入れしたいと思います」

「そんなに効果がありますか?会見で強気に一位を取りつづけますと言えば良かったのかな?無理だよ。絶対に言えないよ」

「でも麟瞳さん、来月は一位は無理でも上位には入れるかもしれないわ。オークションの結果によるけど、かなりの額になりそうな口調だったでしょ。一応あれも依頼を達成したことになるって聞いたわ」


 岡山ダンジョンで会った青いオーガは、夏休みに《桜花の誓い》が倉敷ダンジョンを完全攻略したときの宝箱から出てきた大阪ダンジョンの本の中に、青いオーガの情報が書いてあると言っていた。国が本を買い取ることに納得して渡したが、青いオーガの件で閲覧させて欲しいと要望を出していたのだ。因みに、買取り価格は百万円だった。是非本は読んでみたいと思う。必ずもう一度青いオーガには会う筈だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 四月の末日はオークションの最終日である。クラン《花鳥風月》の皆が、姫路の拠点で落札価格の推移を見守ることにしている。今回のオークションの目玉商品は二つあり、いつものように探索者協会が力を入れて告知、宣伝をして大衆の関心を集めている。目玉商品の一つが僕達が匿名で出品したダイヤモンドだ。普通のダイヤモンドと違い色が付いているカラーダイヤモンドというものらしく、出品名がダンジョン産ピンクダイヤモンド(8.81ct)となっている。あらゆる角度から取られた画像を見ることが出来るが、宝石の良さが全く分からない僕でも引き付けられる美しさである。そしてもう一つの目玉商品が正輝が匿名で出品した特級ポーション。去年の九月に僕達が匿名で出品した時には二億三千万円の落札価格であった。今回はどれくらいになるんだろうね。


 岡山ダンジョンの常盤さんが、最後の三十分に本命の人達が勝負に出ると言っていた。それを聞いていたので、29日はダンジョンの探索に集中することが出来た。


「オークションを二日もする意味がないと思うぜ」


 そんなことを皐月が言っていたよ。ダンジョンの攻略を終えて、拠点へ帰ってきてからオークションサイトを見てみると、ダンジョン産ピンクダイヤモンドの価格が既に一億円を超えていた。皐月、詩音そして美姫も画面に釘付けである。明日の最後の三十分が勝負なんだよ。今見ても意味がないと思うが、三人は価格が上昇する度に声を出して興奮している。明日の探索は中止だな。オークションが気になって集中出来そうにない。一日目にこれだけ興味を引くなら、オークションを二日する意味はあるのだろう。僕は早めに寝させてもらうよ。


 そしてオークションの最終日は、繋ぐ札を使ってクラン《花鳥風月》の皆で見守る予定だ。21時の締め切りに向けてどんどん上昇する価格はどこで止まるのだろうか?


 朝から飽きもせず、ずっとオークションサイトを見ていた三人に《桜花の誓い》が合流したのが18時だ。晩御飯を皆で食べたが、会話はいくらで落札されるかという話題ばかりだった。


「リーダーはいくらになると思うっすか」

「今でいくらになってるの?」

「二億円を超えたっす」


 えっ、そんなに高くなるのか?


「最終的には前回の特級ポーションぐらいになるのかな?」

「最後の三十分が勝負ならもっといくかもしれないっす」


 詩音も興奮して話してくるが、僕はなぜか冷静だった。一人だけ違う場所にいるような感覚だ。


 残り三十分になると価格の変動が大きくなった。本命の人達が参加してきたのだろう。更に加速する価格の上昇に、皆の興奮も最高潮に達した。


「リーダー、四億五千万円だよ!」


 最終落札価格はとんでもない金額になっていた。バトルスーツを《桜花の誓い》の皆にも買ってあげようと思う。クラン《花鳥風月》の戦力アップの為だよ。


 お先にお風呂に入り、早めに寝ようとしていたら電話がかかってきた。


「麟瞳、一億七千万円だぞ。本当に全部俺の取り分で良いのか?皆で分けた方が良いと思わないか?」


 正輝が興奮した様子で電話で話してくる。繋ぐ札はそんな金額ではとても買えない便利アイテムだよ。だから、そんなこと気にしなくて良いんだよ。 








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― 新着の感想 ―
[一言] 百万で国が買い叩いた本がないと元の持ち主の生命に関わる案件なのに 開示請求すら相手にしてなかったのか こりゃ今後の省庁との付き合い方を考えないと駄目だよね そりゃ繋ぐ札みたいな国家レベルのア…
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