魔力暴走事故
前作「助けて悪役令嬢!~命を狙われそうなので、自力で解決します!~」の続編です。
長くなってしまったので連載形式でお送りします。
「授業めんどくさいですね。何か食べに行っちゃいましょうか?」
「だったら甘い物がいいです! もちろん先生の奢りで!」
たった二人だけの、一対一の授業がある。
その名も「種別クラス」。魔法の属性によって分けられるこの授業は、当然生徒は私一人。
週に一度の、私だけの至福の時間。
「冗談を言えるのもそうして返してくれるのも、アレイヤ様だけです。さて、授業を始めましょうか」
なんだ、本当に冗談なのか。と心の中で落ち込んで気を取り直す。
クロード・ランドシュニー。
物腰柔らかな黒髪眼鏡の男性教師。
乙女ゲーム「光あれ!ポップアップキュート」では同じ黒髪眼鏡属性の攻略対象のノーマン・ドルトロッソがいるので攻略対象者ではなくなっているものの、そのキャラクターボイスは話題になるほど。
クロードは「裏切るキャラ確定」だの「永遠の少年声」と名高い超有名男性声優が当てられたことによって人気がある。
キャラデザインの推しがノーマンなら、声の推しがクロードです。よろしくお願いします。
「さて、今回の授業はこの魔法石に魔力を注入して、色を変えます。魔力を注入するだけなら入学式でも魔力識別の儀式でやったと思いますが、色を変えるまで魔力を注入するのはこれまでになかったでしょう。魔力を入れすぎると石が破裂してしまうので、破裂しないように量を調節してくださいね」
そう言いながら、私の前に手の平大の石を置いた。
「キミの魔力量ならこの程度の大きさがいいと思って、大きいのにしてみました」
優しく微笑んではいるが、手の平大の大きさの石に魔力を注入するには結構な魔力が必要になる。石は無機質だからだ。生きている人間に魔力を注入して魔力を覚醒する方法はあるが、それは生きていて魔力を循環させやすい流れがあるから。生きているから循環する状況にある。
無機物はそうではない。だから簡単に言ってのけるクロードの笑顔に意味があるように思えてならない。
いや、意図ならある。
光魔法の使い手である私の力を試したいのだろう。
クロードは以前、光魔法の使い手と婚約関係にあった。ゲーム情報だが、その相手がどうなったのかは分からないが、クロードはまだ独身のままだ。
「できますよね?」と笑顔で圧をかけてくるクロード。私はやるしかないと頷いた。
それがこんなことになるなんて、思いもしなかったし、またか、と焦りもした。
自分の真っ白な光に視界を奪われる前に見えたのは、必死に私を守ろうと腕を伸ばすクロードの姿で、攻略対象でもないのにどうして私を守ろうとしてくれるのかに囚われて、他に目が向かなかった。




