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魔王軍の吸血鬼  作者: 高麗俊
第六章 新米士官
229/251

出発、そして奴隷

 プラチナブロンドの元お嬢様――サードを奴隷にしてから半年弱の月日が流れた。


 軍が所有している扶養世帯主向けの集合住宅だ。

 どうやら階級のおかげで一般兵よりも良い家をあてがわれたらしい。


「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい。車には気を付けるのよ」

「行ってらっしゃいませ」


 クリュが鳥さんマークの付いた可愛いリュックを背負って家を出る。


 彼女は今年の春から孤児院が開いている学校に通わせている。

 そこでラヴたちがカバーできなかった基礎教養を身につけさせているのだ。

 軍学校に行かせるつもりは今のところない。

 本人が希望すれば行かせても問題無いのだが、その場合は一定期間ラヴとは離ればなれになる。


 本科は全寮制の学校だし、来年の今頃ラヴが王都にいる保証もないのだから。

 それを話したらクリュはずっと一緒にいると言って軍学校への入学はしないと言った。


「ラヴっちー、この前ね、クルクル上手に飛べてたんだよ」

「へぇ。それは凄い」


 クリュは先天的に魔力が上手く扱えない障害を持っている。

 そのため鳥族の獣人でありながら滞空することができず、早く飛ぼうとすると制御を失い止まることができなくなる。


 そのせいで物心つく前から群とは離れて大都市のスラムで暮らしていた。

 今でこそ綺麗な羽根を取り戻しているが、ラヴとあったときは黒く汚れて所々禿げていたのだ。


「ほら、前ラヴっちが言ってた、何だっけ」

「断続飛行?」

「そうそう。それをずっと練習しててね。滞空はできないけどかなり安定した飛翔ができるようになったみたい」


 魔法の制御ができないなら一瞬だけ発動させてすぐに消せば良い。

 それを飛行中常に行うことで自身の身体を宙に浮かせ続けられないかと考えた手法だ。


 しかしこの手法には大きな欠点があった。

 それは数センチとは言え頻繁に強い加速度を以て上昇するのだ。

 そこにかかる重力は凄まじく、試しにファーストを浮かしたら一分と保たずに嘔吐した。


「クリュも頑張ってるのね」


 コーヒーを啜りながら新聞を読むラヴ。

 最近は夕食後にカティの入れるコーヒーを飲みながら契約した新聞を読むのが日課なのだ。

 新聞と言っても政府が発行している経済や犯罪、最前線の戦況についての情報が載った官報のようなものなのだが、娯楽の少ないこの世界ではこういうものも貴重なのだ。


「あ、隊長――じゃなかった。ノーマン先生人事部異動だって」


 ということは本当にバートの上司になるということだ。

 彼の嫌そうな顔は容易に想像がつく。


「これ、アタシたちだね」

「本当ね」


 マリーは近衛隊。

 彼女の希望通り、きっとここで数年間働いて領地に帰るのだろう。


 ケイトは中央軍地域社会課。

 来年別部署に合併吸収される予定の零細組織だ。

 十中八九どこかの機密組織のフロント組織だろう。


 ローラは魔王軍の研究所。

 彼女の身内が所長をやっているところらしい。


 他にも一組や他部隊の異動先が書かれていた。


「へー、ナタリーも憲兵隊入ったんだ」

「げっ、第二課だって」

「いつか会うかもね」


 憲兵隊第二課は凶悪犯罪を取り締まる憲兵の花形だ。

 それ故憲兵隊の中でも最も人気が高く、お給料も高いと聞く。


 第三課は軍内規律を取り締まる部署。

 東西南北あらゆる軍隊について回り、彼らが軍規を乱していないか監視する。

 取り締まる対象は武装集団。故に第三課も相応の実力が求められる実力派集団だ。

 聞いた話では一般兵から煙たがられているとかなんとか。


 第四課は国内の警備を取り締まる部署。

 この世界で一般人が憲兵と言えばたいていは第四課のことで、軍人が憲兵と言えばたいてい第三課を差す。

 大きな都市には憲兵の他に領主の私兵が独自に警備をしていることもあり、そういう場合で事件が起きた場合はバチバチになることも珍しくないのだとか。


「ねーえー、ラヴっちー。そろそろ行こうよー」

「んー、そうね」


 ラヴは新聞を折りたたむと机の上に置いて冷めたコーヒーを飲み干した。

 咄嗟にサードが新聞を拾い、ファーストが食器を片付けセカンドがテーブルを拭く。

 彼女たちの連携もこの二ヶ月で見事なものになっていた。

 お互いの苦手な部分をカバーして働く姿にラヴは大いに感心する。


「じゃあ行こっか。カティは支度しておいで」

「り!」


 待ってましたと自室に戻り、身支度を始めるカティ。

 今回は最長一週間かかる長丁場だ。

 しかも目的の場所は山奥で、近くに村が一つあるだけの辺境の地。

 対策してもしすぎることはないだろう。


「一週間くらい家を空けるから。このお金で生活してて」


 そう言ってセカンドに金貨が入った袋を投げつける。

 それを顔面でキャッチしたセカンドは鼻をハンカチでさすりながら袋の重みを確かめた。


「お使いルールは覚えているわよね?」

「はい。家から出るときは必ず二人組で、私が付き添わないといけない。ですね」

「そうよ。偉いわね」

「あっ……」


 ちゃんと覚えていたセカンドの顎をすりすり撫でると、彼女の顔は瞬く間に蕩けていく。


 二年間の教育で彼女の身体は魔眼の力がなくともラヴの身体を受け入れるようになっていた。

 一撫でで身体を震わせ、二撫でで顔を蕩けさせる。三撫でで腰を抜かし、四撫でで彼女の身体は絶頂に達した。


「セカンド、こっちへいらっしゃい」

「ひゃい……ごしゅじんしゃま……」


 潤ませた瞳でラヴを見つめながら、震える手で給仕服をはだけさせるセカンド。

 ブラのホックを外して胸を出すと、首をかしげてラヴが噛みつきやすいように身体を捧げる。


「ご寵愛を……くださいませ……」

「あはっ、良い子ね」


 その首筋に噛みついて、頸動脈に牙を立てるラヴ。

 その瞬間、ラヴの口に芳醇な香りが広がって、血液から伝わる甘美な生命力に彼女の食欲が刺激される。


「あっ……ご主人様っ……そこっ……あん……っ」


 震えるセカンドを力尽くで抑え付け、彼女の血液を貪り尽くした。


 生命力を奪われているせいか、吸血中は被食者の意思に関係なく身体はその場から逃げようとするのだ。

 それは教育でどうにかなるものではないようなので、セカンドがどれだけ望んでいようとこうして抑え付ける必要があるのだ。


「んっ、味変」

「かひゅっ――!?」


 セカンドの腹を強く殴る。

 すると凄まじい快楽がセカンドを襲い、まるで脳が焼け切れるかのような刺激が下腹部から生まれてくる。


「やだッ! こッこれヤダッ! こわッ! こわれッ! こわれりゅーッ!!」


 フローリングがセカンドの体液で水浸しになるのもお構いなしにラヴは何度も何度も殴り続ける。


 水しぶきを上げて、鼻血を出しながら痙攣するセカンド。

 ラヴはこの時の彼女の血の味が好物だった。


「おほっ……おっ……おぉ……っ」

「ちゅっ……んー、おいしかった」


 あまりの恐怖に腰が抜けたサード。しかしラヴが視線を送ると、彼女は涙目になって睨み返す。

 しかしそこには凄みの一つもなく、なけなしの抵抗は逆にラヴの食欲をそそらせるだけだった。


「んー、貴女を食べても良いけど……」


 キッチンの方をチラリと見ると、そこには壁に凭れ掛かり自らの秘部に指を置くファーストの姿があった。

 セカンドの痴態を見て、自らも捕食されるために血液を甘く蕩けさせようとするとは良い心がけだ。

 その意気を買って今日の口直しはファーストに決めた。


「ファースト」

「はえ……? ……あっ! こ、これはっ! 違くてっ!」

「大丈夫よ。ちゃんと分かってるから」

「あっ……あっ……」


 左手で頭を撫でると、彼女はそれだけでチョロチョロと音を立ててお漏らしをする。


 ファーストは買ったときからうれションをする癖があった。

 結局それは調教しても治らなかったし、むしろ悪化したような気もするが、それをラヴは咎めない。

 ペットのうれションは怒ってはいけないと昔どこかのネット記事で読んだことがあるからだ。


「ご飯を見て興奮しちゃったの? いけない子ね」

「あっ……そのっ……」

「ファースト、今日は胸にするわ」


 その言葉を聞くと、脳が理解する前に身体が服を脱ぎ始める。

 瞬く間に全裸になった彼女は後ろに付けた尻尾をふりふり揺らしながらラヴの前に食事を差し出す。


「ど、どう、ぞ……っ」


 理性がラヴを拒むも本能が彼女を受け入れる。

 その二つが混じり合った血は、他では味わえない独特な味を生み出していた。


「あーむっ……」

「いっ……んっ……」


 ラヴの歯が突き立てられるも、そこには痛みは殆どない。

 あるのは太い何かが体内に入ってくる違和感と、それ以上の暴力的な快楽だけだ。


「あぁっ……んおっ……おぉ……っ」


 血液や人肉は摂取する部位によって大きく味が変わる。

 口直しには胸から流れる血が一番適していた。


「このくらいかしら」

「はぁっ……はぁっ……お、おいし、かった、ですか……?」

「えぇ。もちろん。私のファーストはいつ食べても美味しいわ」

「そう、ですか……」


 ファーストが自身の血液の味を気にしだしたのは人間界に乗り込んだときからだ。

 何故そんなことを聞いたのか、自分自身にも理解できていないようで、彼女曰く大した理由は無いらしい。


 そんな彼女にラヴはもしかしたら食人文化に目覚めたのではないかと最初は期待していたが、どうやらそれも違う様子。

 少し残念だが、彼女も年頃の少女だ。

 自分の血の味が気になるお年頃なのだろう。


「サード。これ、掃除よろしくね」

「か、畏まり、ました……」


 たかが食事一つで酷い有様だ。

 乳牛を搾り取られる牛だってもっと凜々しい姿をしているだろうに。


 床を水浸しにした少女二人を見て、ラヴは一つ溜め息をこぼした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 翻訳アプリで失礼します。 ラヴと奴隷たちの話はいつも癒される~ [一言] 躾と調教は本当に大切だよねー サードの堕落も楽しみ
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