表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍の吸血鬼  作者: 高麗俊
第三章 軍学校と吸血鬼・後期
100/251

決闘、そして調査

 決闘を申し込んできた少女の情報は意外とすんなり手に入った。


「え、あぁ、なっちゃん? 知ってますよ」


 一組では見たことのない顔だったので他のクラスをしらみつぶしに探していくつもりだった。

 そうして二組から聞き込み調査を始めたところ、なんとその二組に在籍していたのだ。


「二〇一班のナタリーですよね。うん。ウサギの獣人って言ったらなっちゃんしかいないもん」


 なっちゃんことナタリーは二組の中では一番成績が良いらしく、クラスのリーダー的存在なのだとか。


「え、じゃあ二組の代表に決闘を申し込まれたってこと?」

「え、決闘?」


 どうやら二組のメンバーも知らないようで、決闘の話をすると目の色を変えてラヴに詰め寄って来た。


「いつやるの?」

「今日」

「今日!?」


 本当に何も話していないらしい。

 最初は懐柔して作戦とかを聞き出そうかと考えていたが、どうやらそれも難しいようだ。

 ならばせめて、彼女の性格くらいは把握しておきたい。


「ねぇ」

「ひゃっ、ひゃいっ!」


 少女の腰に手を回し、顎を押さえて瞳を見る。

 魔眼を使うまでもない。何故かこの世界の住人はこのポーズにめっぽう弱いのだ。


 いくら私の顔が綺麗だからって籠絡されるの早すぎないかな。

 そんな自己肯定感満載の感想だが、実際ラヴの考え通りになっているのだから誰も反論できない。


「決闘まで時間があるの。少しお茶でもいかが?」

「よ、よろこんでっ!」


 ラヴは気付いていないがこの世界にはティーン誌なんて存在しない。


 有り体に言ってしまえばラヴの言動は刺激が強すぎるのだ。

 軍学校――特に予科からのエスカレーター組は箱入りお嬢様やお坊ちゃまが大多数を占める。


 マリーのように社交界デビューしている令嬢は決して多くないのだ。


「このまま食べちゃおうかな」

「ひゃい……らう゛しゃま……」


 吐息が感じられるほどの至近距離だ。

 顔を真っ赤にして口をパクパクしている姿はラヴの自尊心と承認欲求を大いに満たしてくれる。


 誰もが自分を可愛い美しいと褒め称える。

 主観的に見ても客観的に見ても、地球でもこの世界でも、人間も魔人も、皆が皆ラヴの容姿に見蕩れている。


「お茶よりも、空き教室の方が良かった?」

「そっそれはっ……」


 純粋な候補生を手込めにするのに時間はかからなかった。

 暴力でも言葉責めでも何でも良い。少し怖い思いをさせて、優しい言葉を投げかけ、孤立させてから語りかける。

 そうして感情を波立たせ情緒を乱すとすぐに従順な駒へと成り下がる。


「私のお願い、何でも聞いてくれるよね?」

「もちろんでしゅ……ラヴしゃま……」

「良い子。ご褒美あげないとね」


 とは言え吸血行為は禁止されているし、食人なんて以ての外だ。

 それらが封じられてなおできることと言ったら――


「お口を開きなさい」

「ひゃい……」


 蕩けた顔で口を開く。

 もう彼女はラヴへの依存から抜け出せないだろう。


「んっ……んんっ……」


 もにゅもにゅと口を動かし唾液を溜める。

 これならば吸血でもなく、魔眼の力でもなく、傷害でもないので怒られはしないだろう。


こぼひはら(こぼしたら)おひおひね(おしおきね)

「んあっ……」


 必死に舌を出して受け入れようとする彼女に唾液を垂らして褒美を与える。


 ――そう言えば、以前依存性がどうとか言われたっけ。


 吸血時に痛みで暴れられないよう、吸血鬼の体液には痛みを快楽に変換する力や興奮を促す作用があるらしい。

 その効力は個人によってまちまちだがラヴはその中でも特に強い効力を持っている。


 何せ経口摂取で瞬時に効力が発揮され、たった数滴でも意志の弱い者なら虜にできるのだから。


「んくっ……んくっ……んくっ……」

「あはっ……上手上手」


 彼女の身体がビクンと震え、足の力が抜けたのかへなへなと腰を下ろす。

 床に落ちる前に身体を支え、彼女を手元に引き寄せた。


「あっ……今、触っちゃ……んんっ……」

「これ以上は、質問に答えてからね」


 ようやく彼女の尋問が始まる。

 とは言え彼女はもはやラヴの傀儡。


 ナタリーという少女のことを、知る限り詳しく話してくれた。


「なるほどね。普段から猪突猛進気味と。ウサギなのにね。ふふっ……」

「ひゃい……もっと体重掛けてくだしゃい……」


 四つん這いになり、ラヴの椅子として貢献する。

 人として扱われていないのに当の本人は恍惚とした笑みを浮かべていた。


 しかしいくら体重を掛けようと四三より重くなることはないので、やられている本人もあまり重いとは感じないはずだ。

 この世界に来てからというもの前世ではあり得ないほど筋トレや運動をしているし肉もたくさん食べているのに、筋肉も付かないし身長も伸びない。

 髪を切っても翌晩には戻っているのだ。もはやラヴの身体は不変のものと言っても過言ではないだろう。


「彼女の好物とか知ってる?」

「こ、好物……?」


 何故そんなことを聞くのかと、彼女は首をかしげる。


「ひゃんっ……いっ、いたっ……あんっ!」

「質問を許した覚えはないよ」


 突き出された白肌を数回叩くと彼女は再び従順になる。


 そう言えば最近ファーストの折檻が足りていない気がする。

 この子をこれ以上傷つけることはできないし、決闘が終わったら久しぶりにファーストの身体を弄くり回したい。


 ――記憶消してもダメかな?


 こんなことならセカンドを買うとき軽い気持ちで約束するべきではなかったかもしれない。


 彼女の嬌声を聞きながら、ラヴはそんなことを考えていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ