勇者召喚会議
「えー…では今より各国の王の3名、なぜか降臨された神一名合わせて4名による『異世界転移、今度はどんな勇者を召喚する?』の合同会議を始めようと思います。…司会は私ドミニク王国の執事セバスチャンが僭越ながら務めさせてもらいます。」
…と、始まりのセリフを述べたものの…司会と言っても特にやることの無い、始めと終わりだけ言葉を発していれば良いだけの置物セバスチャンことセッチャンは、大変暇なので、今この舞台にはいませんがこの会議を眺めるお客様達に軽く説明をさせてもらいます。
ここイカセイ大陸は四つの国に分かれております。まず一つは私がつかえている『ドミニク王国』特徴としましてはいたって平々凡々。特に何が優れているというわけではないのですが強いて言えば…我が国のマスコットキャラで不思議にも人気の高い『ドミニ君』を使っての饅頭や人形が大変売れていますので、経済的にそこそこ豊かと言ったところでしょうか…
お次に『ツオイオ帝国』、魔石を使った兵器開発や武術で有名な国であります。本日来られているミハエル皇帝が一代で築き上げました。まだ建国からそれほど時は立ってはいないのですがその手腕はまさに英雄と呼ばれるにふさわしく。その人気は『ドミニ君』を超えるのでは?と、恐れられている存在であります。
…ちなみにそんなミハエル皇帝の好きなものは『ドミニ君グッズ』でありまして、本日着られておられるマントの刺繍は『ドミニ君』、寝られる時は『ドミニ君パジャマ』、入浴中に使われる『ドミニ君ハット』等々、かなりの『ドミニ君マニア』であります。
ドミニク王国とツオイオ帝国で戦争などの争い事がないのはまさに『ドミニ君』のおかげではないかと密かに私は思っております…ありがとう『ドミニ君』…
続きまして、『マジョリーン国』。なんとなくお国の名前のニュアンスからも察して貰えるかと思いますが、魔法に特化した国でございます。あとこちらの国特徴としましては王を女性が務めているところでしょうか。お名前はマジョンナ女王陛下。見目麗しく、ボンキュッボンなナイスバディな女性であります。
服装も胸元を開いた服装なものですから、先程私がお茶を出す際は参りました…もう私の視線はまさに胸元ガン見であります。つけられてる香水の良い香りと合わさってか、いつ私の鼻から真っ赤な液体が噴出するかと戦線飄々でありました。
この会議の後は何も言わずに色街に繰り出そうかと思います…私が使えていますヘイボーン様…ぜひ私めにお小遣いを渡してくれないでしょうか…まぁ無理とは思っていますけどね。いつかはやってみたい国民の税金を使っての贅沢色街巡り……嘘でありますごめんなさい。
最後の国が魔界です…とりあえず先程から説明が長いので省略させてもらいます。とりあえず悪いとこです。敵であります。すんごーく禍々しい所であります。魔王が20年前から暴れ出したせいで魔物が活性化、三ヶ国にある村などが被害にあわれたりと迷惑被っておりとんでもない奴であります。…以上
あっちなみに本日出席された神さま…というか女神。名はイステリア様はイカセイ大陸全土を見守っている神様です。そして魔王の奥様でもあります…現在別居中…確か20年前にお風呂上がりのプッ●ンプリンを旦那の魔王が食べたことにより喧嘩勃発。収まることはなく、イステリア様は天界へと里帰り、それに対して不満続出な魔王から溢れ出た魔力により魔物が活性化という流れですな。
ぶっちゃけて言えば自分ら人族は夫婦喧嘩に巻き込まれているわけです。
「さて、まずは勇者不在から二年経っての久しぶりの召喚ではあるが、どこの国が受け持とうか?」
「むぅ出来れば今回我が帝国は遠慮したいんだが…勇者不在前はいまの帝国の領土が受け持っていたわけだしな。」
「むぅ…それを言われてしまうとこちらとしては何も言えなくなるのだが…」
「えー!でも国自体は変わったのだから良いじゃない!私も請け負いたくないのだけれど、前にこっちで召喚した性犯罪病原勇者の事を思い出すと今でも鳥肌たつのよ…」
説明しましょう。ここ勇者不在の2年より前を遡っていきます。まず五年前…その時は旧帝国、ホロービタ帝国が召喚を受け持ちました…呼ばれた勇者は、異世界から無理に連れてこられた訳ですからこちらに非がある事は明白。なので魔王を倒して元の世界に送られるまでの間はなるべく不自由しない生活を送ってもらおうと、かなりの高待遇な扱いをしたのですが、調子に乗り出した勇者は何をトチ狂ったのか、帝国を我が物にしようと民衆を扇動して革命を起こすのでした…それが召喚からちょうど一年…その後なぜか革命が成功…ホロービタ帝国は読んで字のごとく滅びました…勇者は目的通り国を手にしたのです。
しかし問題はここから…その勇者の年齢…まだ十代なのです…しかも向こうの世界ではただの一般ピーポー…ここまで言えば分かりますよね?
政治なんてできる訳ないんですよ…ホロービタ帝国の領土は好き放題荒れていき山賊などの悪人の溜まり場となっていきました。
その中、立ち上がったのがミハエル皇帝なのであります。彼の手腕により、悪党は一掃ツオイオ帝国が建てられる事になったのです。これはのちの歴史の本に『魔の二年間』という名で書かれております。
ホロービタ帝国の前はマジョリーン国が受け持っておりました。しかしそこで召喚された勇者はかなりの女好き…婚約者持ちだろうが一般市民だろうが既婚者だろうが、魅了の力を使い口説きまくっていたわけです…
それにより、現在世に出ている小説に面白おかしく書かれています。『婚約破棄話』『勇者パーティーでの追放話』『寝取られ話』等々が現実的に起こることとなりました……被害を被った者たちはこんな勇者を召喚した国に対して暴動を起こします。
国は暴動の対応に追われる中、勇者は最後に王族の姫君達にまで手を伸ばそうとします…まぁすぐにバレてしまうのですがその事件によって王妃は激怒…勇者はお縄につく事になりました。召喚してから一年の間の出来事です。
ちなみに…このあと性病問題等も上がってくるのですが…まぁそこは伏せておきましょう。
マジョリーン国の前が今から7年くらい前ですかね?我が国ドミニク王国が請け負いました……うーんこれ…あまり話したくないのですが勇者の滞在期間半年なんですよ…理由としては召喚されたのは四十代のオジさん勇者でして……まぁ…身体が動かないといいますか…正義感とかは強くて素晴らしいお方だったのですよ!…ただ最後にはギックリ腰が治らずそのままお帰りしてもらいました。
ドミニク王国より前は女神様が召喚をされていましたが。なぜかこの方が召喚されると『初回特典』といったものが付いてきまして、三ヶ国の各地に毎度のごとく魔王並みの大型魔法が放たるといった事件続出します。大体元の世界に返されるのも一週間程…こちらとしては罰せる前に返されていくのでもう、『勇者という名の自然災害扱い』に分類されております。
余談ではありますが他の二カ国で召喚した勇者も全部向こうの世界にお返ししておりますので心配無用であります。
「むぅ…しかしこの勇者不在の二年間…魔物被害は増える一方…そろそろ対策を打たねば取り返しがつかなくなるからのぉ…」
「ならまたドミニク王国がすればいいじゃない!あなたの国では問題は起こってないわけですから。」
「いやそれは構わないのだが…我が国の召喚士が言うには、魔力その他諸々の理由で前に召喚した勇者の様に適正値が微妙なものしか呼べないみたいでの…恐らく呼ぶ出す意味がないとのことなのだ…」
「それならばまた女神どのに任せてみると言うのは?」
「私としても協力したいのは山々なのですが…近年向こうの世界も文化が発展しているようで、『トラックでひいて異世界転移』とかできなくなってきてるのよねぇ…車道と歩道が完璧に分けられてるからまず事故が起こることがないのよー」
「むぅー向こうの文化のものはイマイチ分かりませんが…とりあえず難しいというわけですな…どうしたものか……司会役ではあるがセバスチャンは何か良い案はあるか…って何をしておるのじゃセバスチャン!!」
おっとまずい!高級ソファでゆったり寛ぎながらお菓子を摘んでこの間買った雑誌『巨乳大全』を読んでるのがバレてしまいました…
「失礼しましたあまりの暇さについ油断を…良い案ですか?一つだけありますが聞かれますか?」
「暇ってお前な…まぁよい申してみよ」
「かしこまりました…と言ってもごく当たり前な話なのですが…」
「女神様と魔王様が仲直りされたらいいだけでは?」
……
……
「「「あー確かに」」」
「はぁ!?何言ってるのよ!!嫌に決まってるじゃない!!食べ物の恨みは大きいのよ!!誰が許すものですか!!あんな奴!」
「と言われるかと思われましたので、先程こっそりと魔王殿をお呼びしてますけどね」
「はぁ!?あなた何をやっt」
「イステリアーーーーーーーーわしが悪かったーーーーーーーー!!!!!」
「キャーーーーー!!!」
……ふむ…なんたるタイミングの良さでしょう。私が扉を開けたと同時に部屋に転がり込むとは、流石は魔王といったところでしょうか。
魔王は部屋に飛び込むと一瞬にして女神様というか奥方様に抱き着くとそのまま抱え上げ魔界へと一直線に帰られていかれました…
「「「………」」」
「ちなみに魔王には奥様と仲直りしてもらう為、高級プッ●ンプリン、ダイヤ、高級貴金属類、ペア宿泊券、奥様が逃げ出さない為の拘束魔道具、SMグッズによく使われる荒縄等を一通りお渡ししてますので問題はないかと…」
「…二つほど聞かない方がよかったものがある気もするが…よくやったセバスチャン。礼をいうぞ」
「恐縮であります。………褒美を頂けるのでしたらぜひマジョンナ様の胸を一揉みする権利だけ頂けましたら私としては幸いでございます。」
「燃やされたいようねあなた…」
「それもまた一つのご褒美になるかと。…まぁ私、魔法無効化体質なのでどんな魔法も効かないんですけどね…実に残念です」
「そういえばお前のとこの執事、我が国の魔導兵器や剣でいくら攻撃しても無傷だったことあったな…魔王のとこにも普通に足を運んでるみたいだし…」
(((こいつが勇者で良かったんじゃね?)))
……何やら三人から送られる視線が痛いのですね?…まぁ問題も解決した事ですし、私もそろそろお暇しようかと先程開けた扉から出て行くことにしました。
……ふと思ったのですが、召喚って要は誘拐といった犯罪行為…わざわざそんな事をする前に自分たちで解決したらいいのでは?と疑問に思うのですが…これっておかしい考えでしょうか?
まぁそんな事よりも、本日の仕事も終わりましたので、私は足早に向かいながら楽しみで仕方がないこのムフフな気持ちを周りに悟られぬように抑えながら色街へと向かうのでした…
最後に長々とこの無駄に等しい長話にお付き合い頂いたお客様(読者の方)にお礼を言って締めようかと思います…
「大変ありがとうございました。」