表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トーフさん  作者: 湖畔
3/3

作戦

 とにかく、水音以外に何も聞こえなかった。カナミとタマコは、死体だらけのゲームコーナーで息をつき、吸って、またはいた。

「なんなのよ! なんだっていうの!」

「……ぜぇ、ナンカ……はぁ、なんだろ……」

「だから! それが、なんなの!」

「見えなかったから、ふぅ、分からない……すぅー、ふぅ、やっと、息が落ち着いてきた」

 カナミがそう言うと、二人は周囲を見回した。当然、先ほどきたゲームコーナーだ。でたらめに走らず、元の道をたどってきたのは、二人とも、思っていたよりは冷静だったのかもしれない。

「なんで、ここなのよ」

「知るか。もう、理由を聞くのやめてよ。ありえないことだらけなんだよ」

「はぁ? 人殺しがいた……」

 カナミはタマコの言葉を遮った。

「血液の量がありえないんだよ。死体に比べて、量が多すぎる。こんなに死体だらけなのに、におわないのはなんでさ? ここまで、虫の羽音一つ聞いていない。死体がなくても廃墟だよ? 見ろ、死体の頭に穴が開いている。中身は空っぽなのに脳はどこにもない。どういうこと?」

「見たくないわよ! そんなこと、どうでもいいでしょ⁉」

「ごめん。……かもしれない。ありえない場所だって、言いたかっただけなんだ」

 カナミがうつむくと、タマコは大きく息を吸った。

「私こそ、ごめん。とにかく、逃げることを考えましょ。アイツ、追ってきてないわよね」

「多分。全然音がしないから。音を立てずに歩ける、他にもいる、とかだったらお手上げだけど。……だから、それは考えないことにしよう」

 カナミは続けた。

「私たちがいるのがばれてるから、この階はヤバい。多分、下の階と同じように、別の場所に階段があるから、そこから上がろう」

「降りないの?」

「待ち伏せされかねない。とりあえず、下に降りるまでの準備とかしたい。ここはすぐにでも逃げないとマズいだろうし。……それに、急にまた降りる気になれないんだ」

 タマコには、カナミがユリのことを言っていると分かった。そうしてようやく、自分もカナミも、足が震えていることに気づいた。ナンカと呼ばれるやつに出会ったら、逃げ切れることはなさそうだった。亀ほどの速さも出ない。

「分かったわ。……上がって、その後考えよっか」


 ***


 七階、レストラン街。

 彼女たちは、無事七階へと上がった。タマコが言った。

「それで、準備って? 籠城(ろうじょう)とか?」

「……はは、びっくりするほど死亡フラグだな。まあ、それも手ではあるけど。できれば、アイツを待ち伏せしてぶちのめしておきたい。どうせ逃げるなら、そっちの方が安全だよ。こっちは二人いるし」

 カナミは答えた後、周りを見回して歩き出した。

「ここはアイツに地の利があるけど、いくらでも不意打ちできる。鈍器くらいならあるだろうさ。人間相手なら、それが一番真っ当だよ」

「アイツが上がってこなかったら?」

「籠城。陽があれば、ここも人通りがありそうだし」

「分かったわ」

 二人は洋食店の中に入ってキッチンを開けた。眼球が半ダース、コロコロと転がり出た。

「…………!」

「ここもか」

「……もう、叫びきっちゃったみたい。……不謹慎だけど」

「生きて帰れりゃ何でもいいって。その方が不意打ちできそうだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ