25.原初の大神
ごぽぽぽぽ。まるで水の中に潜るような感覚。溶岩に飛び込んだ筈なのに、痛みはおろか熱も殆ど感じない。
感じられるのは、ただ暖かいものに守られているような快い感覚だけ。
やがて地面に足が着いた感覚を覚え、俺はゆっくり目を開けた。
まず目に入ったのは、視界いっぱいに広がる溶岩……ではなく、ずっと高い所にまで続く長い石造りの階段と、その周りに立つたくさんの鳥居に似た構造物だった。
階段の取り付けられた斜面に沿って一定間隔に並べられた構造物には風化の跡はおろか傷の一つもなく、今作られて建てられた所だと言われても信じてしまいそうなほど綺麗だ。
背後を振り返ると、眼下には遥か下方に向けても続く階段と構造物。その先には僅かに地平線が覗いていた。そこでようやく、俺は自分が高い山の中腹付近に立っているのだと理解する。
そのままぼんやりと下を見下ろしていた俺は、山の麓のあたりを真っ黒な汚泥のような何かが侵食しているのを見つけ、思わず後ずさった。こつん、踵が階段にあたり、俺はバランスを崩す。
倒れかけた俺の背を、誰かがそっと受け止めた。ひんやりとした硬い感触が後頭部に伝わる。頭上から、涼やかな声が降ってきた。
『あの汚泥は邪神の滅毒。この世界の神という存在を犯し……。人が言うところの、『死』という状態を与えうる異界の理です。ここがあの汚泥に呑まれれば、人は火の魔力を失ってしまうでしょう』
声の主を見上げると、そこにあったのは先程見かけたアニマ・フィブの顔だった。彼女が俺に微笑みかける。俺はアニマ・フィブにもたれかかってしまっていることに気が付いて、慌てて彼女から離れる。
「すいません!私ったら……」
頭を下げると、アニマ・フィブのくすくすという笑い声が聞こえる。よかった、あんまり気にはしていないようだ。顔を上げて、というアニマ・フィブの言葉で頭を上げると、アニマ・フィブは見惚れそうなほどに綺麗な微笑を浮かべていた。実際、いくらかの時間は見惚れてしまっていたと思う。
『ようこそ、命の愛し子。火の大神……我らが父母の棲まう、真なるフラグニスの竃へ』
そう言ったアニマ・フィブはくるりと振り返ると、『さぁ、こっちです』と長い石段を登り始める。我に返った俺は、慌ててそれに続いた。
「あの、アニマ・フィブ……様。ここは一体……?」
疑問に思って、俺はアニマ・フィブに聞いた。真なるフラグニスの竃、と、先程そう言われはしたものの、それだけでは殆ど何もわからない。俺はさっきまで火山の奥っぽい所にいたはずで、それがどうしてこんな所にいるのだろうか。
アニマ・フィブは階段を登る足を緩めず、ちらりとこちらに目をやった。幼子を見る優しげな目だ。
『ここは我ら神々が棲まう場所。あなた方の世界から見て丁度裏側に位置する、私達の領域です……なんて言っても、よくわかりませんよね』
うん、正直さっぱりです。世界の裏側とか言われてもピンとこない。
アニマ・フィブが、『どこから説明しましょうか』と漏らす。やがて彼女は小さく頷くと、『昔話になりますが』と口を開いた。
『ずっと昔の話です。あなた方が神代と呼ぶ時代のことは知っていますか?』
俺はアニマ・フィブの言葉に首肯する。
神代。ずっと昔、まだ神々が人に混ざって生活していたと言われる時代だ。クリスやアンリエッタに寝物語をせびるといつもそういう時代の話をしてくれたのでよく覚えている。そして、その神代が唐突に終わりを迎えたということも。
『あの時は、私も人に混ざって狩りや戦に勤しんだものです……。もう、随分と昔の話ですが』
遠い目をして、アニマ・フィブが言う。
そう、神代は突然その終わりを告げた。予兆も何もなく、神々が突如、地上から姿を消したのだ。彼らは神界と呼ばれる彼らの世界に帰っていったと言い伝えられている。そしてそれを境に、神々が人の前に現れることはなくなったのだと。そこまで思い出し、俺はここがどういう場所なのかをなんとなく悟った。
『神代の終わりに、大いなるテオス・プロエレスフィが創り出したのがこの世界です。あなた達の側に寄り添う、もう一つの世界。表裏の最も近い場所にあり……しかし、あなた達には決して辿り着けない場所。
ああ、そういえば神界、なんて呼ばれ方もしてましたね』
俺の予測を裏付けるように、アニマ・フィブが言った。やはり、ここは神界なのか。とすると、ますます分からない事がある。
「その、そんな所にどうして私はいるんでしょうか?」
神界が絡む御伽噺も知らない訳ではない。ビアンカ婆さんが教えてくれた勇者アスラの伝説の中には彼が当代の命の巫女と共に神界を訪れた時の話だってあったし、その以後の英雄譚でも何だかんだ神界からの使いがどうとか直に剣を打ってもらいにとかの話はそれなりにある。……まぁ、聞いた話のうちどれくらいが創作なのかはわからないけどさ。
ともかく、そうやって神界に足を踏み入れた人達というのは何かしらの英雄達であって、少なくとも俺のような小娘が入り込めるとは思えなかった。
問いかけると、アニマ・フィブは小さく笑った。
『私が招いたからです。その資格を持つものだけは、この世界に呼べますから』
「資格……?」
はて。そんなもの持ってたっけな。神様検定とか受けた覚えもないんだけど。首を傾げていると、アニマ・フィブが再び、優しい微笑みを俺に負けた。
『命の愛し子、あなたは命の女神様から純白の果実を頂いたでしょう?』
純白の果実。アニマ・アンフィナの加護を受けた時、そんなものを食べたかなと今更ながら思い出す。そういえば、あの時もここと似た雰囲気の場所に来ていたような。
『そう。あなたには資格がある。直に命の女神から加護を賜ったあなたには』
意味ありげなアニマ・フィブの言葉に首を傾げていると、不意に彼女が立ち止まった。話し込んでいる間に、どうやら山の頂に辿り着いたらしい。最後の鳥居を越えると、その先には大きな窪地と、その中心で明々と燃える大きな火が見えた。窪地の淵からは赤く輝く溶岩の流れがいくつも中心の火に向かって流れており、なるほど、たしかにここは「竃」だと腑に落ちる。
アニマ・フィブが背後を振り返る。俺も同じように振り返ると、見渡す限りの大地を黒々とした汚泥が埋め尽くしているのが見えた。生き物のように唸り、蠢いている汚泥は生理的な嫌悪感を想起させる。
『見ての通り、この竃は邪神の滅毒に包囲されています。これを破れるのは火の大神が持つ浄化の炎だけ。……しかし、どれだけこの世界に侵食してくる毒を滅しようとも、そこに限りはありません。毒は外から絶えず侵入してきますから、その元を断たない限り終わりはない』
「元、ですか。……それは、邪神の事、でしょうか」
アニマ・フィブの顔を伺うと、彼女は小さく苦笑して首を横に振った。どうやら違ったらしい。
ドヤ顔で言っちゃったよ。ちょっと恥ずかしい。そんな俺を見かねてか、アニマ・フィブの『勿論、あなたの言う通り、その元凶は邪神です』というフォローが飛んでくる。優しさで死にそうだ。女神かよ。女神だったわ。
『あなたも見たでしょう。あなた方の世界で、竃の入り口を囲んでいた黒い魔法陣。アレは私達を封じ込め、行き来を遮断するだけのものではありません。
アレこそがこの毒をこの世界に流し込む大元です。アレを直接破壊する以外に、この戦いを終わらせる術はない』
あの魔法陣、そんな意味があったのか。普通に跨いで火口に飛び込んだからほとんど意識してなかった。そこまでは理解できたと頷くと、アニマ・フィブが言葉を続ける。
『あの魔法陣を破壊するには、それこそ原初の大神の力が必要となるでしょう。しかし、神代の頃ならいざ知らず、今となってはこの身だけであなた方の世界に干渉することは難しい。
……ですから、あなたをこの世界に招いたのです。あなたを依り代として、大神様をあなた達の世界に降ろすために』
ここまで説明されれば大体の事情は分かった。要するに、俺の体を借りて神様自身があの魔法陣を破壊する算段なのだろう。
……あれ、それ、俺が一番重要なポジションなのに肝心の内容を今初めて伝えられたような気がするぞ。意思確認フェーズとかあったっけ。いや、まぁどの道やるんだけどさ。
「えーっと、それは構わないんですけど、私、神様の依り代になる方法とか全然知らないんですが」
命の巫女であったアンリエッタなら知っていたかもしれないが、俺は生憎とただの妹。そんな知識を共有しているはずもなく。
不安に思ってアニマ・フィブの顔を見上げると、彼女は、目に見えて顔を青くして額に汗を浮かべていた。「想定外」と「やらかした」を同時に顔に浮かべたらこんな感じだと思う。
『と、とりあえず大神様の所に向かいましょう!』
仕切り直しと言わんばかりにくるりと踵を返すアニマ・フィブ。
最初の方は結構威厳たっぷりだったのにもう殆ど残ってないや。ていうか何か可愛いなこの神様」
『声に出てますよ!もう!』
ありゃ、うっかり。なんかごめんなさい。
膨れっ面のアニマ・フィブを宥めて、彼女が漸く機嫌を直してくれた頃、俺たちは窪地の中心、猛々しく燃える大火の目の前にたどり着いた。
それは、とても大きな炎だった。 直径だけで5,6メートルくらいはあるだろうか。明々と周囲を照らす炎からは、熱さというよりも温かさを感じる。
そしてその奥、丁度炎の真下辺りに、小さな台座を挟む二つの人影が見えた。
かたや立派な甲冑に風格のある赤いマントを羽織った筋骨隆々の巨漢。2メートルはあろうかという巨体で、全身から漲る活力が見て取れる。歳の頃はおおよそ壮年期の始まり程度に見える。燃えるような赤髪は獅子を思わせた。
もう一方は、男とは対照的に小さく華奢な矮躯の少女。ミカエラと変わらないか、少し上くらいに見える少女で、アニマ・フィブが纏っているのに似たファイアパターンの編み込まれた和風の着物を纏っていた。アニマ・フィブと違ってブレストプレートも付けておらず、お腹も露出していないので本物の和服に似ている。ただし、裾の丈はミニスカートもかくやというほど短いものだったが。彼女は隣の巨漢と同じ燃えるような緋色の髪を後ろ手に纏め上げているようで、後頭部の方に小さなお団子が見えた。
俺たちの接近に気付いたらしい二人がこちらを向く。燃え盛る焔を彷彿とさせる、綺麗な赤い瞳と目が合った。瞬間、途方も無い強大な力を感じ、俺は思わず膝を折った。
この二人が火の大神、アニムス・イグニスとアニマ・フラムなのだと、俺は直感的に理解した。二人から感じられる気配は以前見えたアニマ・アンフィナと同じくらい力強い。その身から感ぜられる魔力からは、思わず傅いてしまう程に侵し難い神聖な雰囲気が漂っている。跪く俺の姿を見て、二柱の神は小さく笑った。
『ほう、この力、この子がアンフィナ様の言っていた『私の可愛いミカエラ』殿か』
『確か、『可愛い可愛いアンリエッタ』殿の妹君なのですって?』
……ん?なんだろうか。この場に相応しくない言葉が聞こえた気がする。いや、多分気のせいだろう。まさかそんな、あのアニマ・アンフィナがそれほど親馬鹿気質な筈があるまい。
『うむ、どうやって切り抜けたものかと頭を捻っておったが、命の愛し子がいるのならば話が早い。命の愛し子よ、その身体、借り受けるが構わんな?』
何事もなかったかのように巨漢、アニムス・イグニスが切り出した。うん、やっぱりさっきのは幻聴だな、そうに違いない。
「力を貸すことに依存はありません。ただ、その……私は姉と違って、神々の依り代になる術を知らないのです」
言うと、少女、アニマ・フラムが愛らしい動作で首を傾げた。
『ふむ?その身に残る女神の気配から察するに、あなたも一度その身にアンフィナ殿を降ろしていると思うのですが?』
「それは……」
確かに、神降ろしの儀によってこの身に命の女神を降ろした事はある。しかし、それは隣に先導してくれるクリスが居ての話だ。俺一人では、祝詞を満足に唱えることもできまい。
「すいません、それは先代の命の巫女が側にいた時の話で。私だけでは……」
『何だ、そういうことか。それならば問題はないな』
予想外のアニムス・イグニスの言葉に、俺は思わず「え?」と聞き返した。アニムス・イグニスは不敵な笑みを浮かべると、右の掌を俺の方に差し出した。
『貴様に新たな原初の火種を授ければよい。貴様が我が眷属の末席に加われば、我らは貴様の体を依り代にすることができる』
そう言ったアニムス・イグニスの手には、美しい小さな焔が灯されていた。
何よりも鮮烈な赤。清浄な白い光を纏い、その中核には、見るもの全てを魅了するような濃密な蒼色が輝いている。一見して宝石のようにも思えるこの世の至宝が、そこにはあった。
「これが……原初の、火種……」
感じられるのは、欲すればその身を焼かれそうに思えるほどの莫大な熱量。思わず半歩退いた俺の肩を、背後のアニマ・フィブが支える。
『さぁ。命の愛し子。火種を受け入れて』
彼女に背を押されると、火種は目前だ。火種から発せられる熱が俺の体の表面をチリチリと焼いているような気さえする。
俺は生唾を飲み込んで火種に手を伸ばし、その指先が火種に触れた瞬間、感じた熱に思わず手を引っ込めた。
熱い。これまで経験した何よりも。
体どころか、魂まで焼かれてしまいそうな莫大な熱。
こんなものを受け入れる?どうやって。尻込みしていると、心の中で誰かの声がした。
——私には立ち止まっている時間は無いんだって。貴方が言ったんだよ?
立ち止まっている時間は無い。そうだ、俺は確かにあの時、『彼女』に向かってそう言った。
「……俺が怖気付いてどうすんだ」
言葉にすると、途端に火種に対する恐怖が消える。俺は再び火種に手を伸ばした。熱いのは熱い。だが、それが俺の身を焼く事はない。
手にした火種を胸に抱きしめるようにして抱えると、火種はそのまま俺の中に解けるようにして消えた。
身体中を、激しい熱が駆け巡る。
体の奥にジンジンとした鈍痛とも疼きともわからない奇妙な感覚がする。純白の果実を口にした時の体の中を押し広げられるような感覚こそ無いが、脳髄を縛らさせるようなこの感覚は、あの時にも感じたものだ。
頭の中が真っ白になる。身体中に迸る熱で溶けてしまいそうだ。熱を感じるたび、多幸感にも似た苦痛が俺を襲う。
やがて、熱が俺の体の一番深い所に辿り着く。そして、熱はその最奥に滑り込むようにして消えて、漸く身体中の熱が収まり始めた。
俺は湧き出た疲労感に思わず膝をつく。
身体中に倦怠感と痺れたような感覚がする。呼吸が荒い。なんとか呼吸を整えて顔を上げると、ニカッと笑うアニムス・イグニスとその隣で微笑むアニマ・フラムの姿が見えた。
『よくぞ原初の火種を受け入れた!ミカエラよ、命の女神の愛し子よ。貴様は今、我ら火の神の加護を得た!
……では、行くぞ。我らが戦場へ』
アニムス・イグニスが獰猛に笑う。それは、血の気の多い戦士の顔だ。
……そういえば、アニムス・イグニスは『軍神』と呼ばれる戦の神が師事したという逸話も持つ戦神だったっけ。
アニムス・イグニスが俺の手を取ると、俺の体の深い所と、底知れない大きな力が接続する。俺の中に入り込んでくるその力を、俺は拒絶する事なく受け入れた。
かちり。切り替わるように、視界の景色が移り変わる。場所はさっき飛び込んだ筈の火口の上空。下を見下ろすと、ドレークと相対しているヴィスベルと、ロソニと呼ばれていた魔族と戦っているカウルとフレアの姿が見えた。
神の気配を察知した魔法陣が、うねうねと気味の悪い動きで上空に向かって黒い触手染みた光の帯を伸ばしてくる。ふん、と俺の口から吐き捨てるような声。いつのまにか振るわれていた焔の刃が、魔法陣を焼き尽くす。
『ドレークと言ったか。貴様、随分好き勝手にやってくれたな?』
俺の口から、火の大神の言葉が漏れ出る。ドレークが俺の方を見て、驚いたようにそのフルフェイスに浮かんだ双眸を揺らした。
「馬鹿な!小娘、貴様何をした!その火は何だ!」
『聞く耳持たぬ!』
がくん、俺の体が俺の意思とは関係なく、ドレークに向かって跳ねる。両手には焔の双剣。既の所で回避したドレークと視線が交わる。すれ違い様に見えたドレークの双眸が、動揺したように揺れた。
「貴様、火の大神か!何故この小娘に!コレは貴様の眷属では……!」
『聞く耳持たぬと言った!燃え尽きよ!』
轟と音を立てて、赤白に輝く焔の剣がドレークに向けて飛ぶ。ドレークがそこから逃れるヴィジョンは浮かばない。
「くっ!『当たりはせん』!」
ずん、という重圧を纏った声が響く。焔の剣が微かに揺れた。ドレークは僅かに逸れたその剣閃から逃れようと駆け出す。しかし、その逃れた先には、既に第二の白光が振るわれていた。
そして、その炎の剣がドレークを断罪する直前。黒い影がその間に割り込んだ。
「ドレーク様!お逃げくださ……」
ドレークの眼前で、ロソニと呼ばれていた魔族が、跡形も残さず消滅する。ドレークはそれを憎々しく見下ろすと、なにかの魔法を起動した。
『逃さぬ』
俺の体が、ドレークの懐に入り込む。視線が交わり、一瞬の間隙。片手に握られた炎剣が、ドレークに向けて勢いよく振るわれた。狙いはただひとつ、その首級のみ。炎剣がその首を跳ねる直前、ドレークが背後に跳んだ。首を狙っていたはずの炎剣は逃げ遅れたドレークの腕だけを斬り落とし、それと同時にドレークの姿が掻き消えた。がらん、ドレークの腕だけがその場に落ちる。それを見下ろして、俺の口からは小さな舌打ちが聞こえた。
『逃し……た……か……』
その言葉を最後に俺の体を操っていた力が途切れ、がくん、身体から力が抜ける。受け身も碌に取れず、俺の体は地面に倒れ臥した。
身体中の力が根こそぎ持っていかれたような虚脱感と、激しい筋肉痛に襲われる。慌てて立ち上がろうとするが、体はピクリとも動こうとしない。
「ミカエラ!」
慌てたようにヴィスベルが駆け寄ってくる。遠くの方では、カウルとフレアもこちらに走り出しているのが見えた。
はっきりと見えたのはそこまでで、そこからは電池が切れかけの懐中電灯のように、視界がチカチカと明滅する。
意識が保てない。思考が徐々にブツ切れになる。
「——あ——」
何事かを呟きかけた口からは意味のない小さな音だけが流れ出て、それを最後に、俺は意識を失った。
今更だけど
アニマ→女神に付ける冠詞
アニムス→男の神に付ける冠詞です。
ミスターとかミスとかみたいなアレなんで別に覚えてなくてもいいです。
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