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夏の宿題  作者: 時帰呼
2/2

赤いビキニとスクール水着

寒狭川に着いた こずえと健汰。


そこには 滝があって、ちょっとしたプールみたいに泳げる場所なんだ。


そう、小さな頃から、何度も 二人が はしゃぎながら遊んだ。






第2話 赤いビキニとスクール水着




適当な木陰を見つけ、手頃な大きさの河石に 持ってきた水着入れのビニールバッグを置く。


夏真っ盛りだから、青々とした葉っぱが いっぱいで、目隠しには最適と言えよう。


勿論 更衣室の代役にしては、いささか心もとないこと限りないけれど。




とりあえずは、ワンピースを脱ぐだけだから、たいしたことはないけれど、帰りの着替えのことを考えると 途端に落ち着かない気分になる。


まぁ、先のことを考えても仕方がないッ!! とばかりに、私は ワンピースを 一気にたくしあげると 急いで脱ぎ、


帰りのことを考えて、ビニールバッグの横に 綺麗にたたんだワンピースを 置いた。



蝉が鳴いている。



じーわ じーわと鳴いている。



少し離れた小さな滝の辺りから、聞き覚えのある声とバシャバシャと 盛んに水音が 聞こえてくる。



健汰の自転車に乗せてきてもらったから、少し助かったけれど、陽射しに焼かれた私の肌は すっかりと熱を持っていた。


スクール水着の肩を 少しずらして見る。


例年なら、くっきりと日焼けの跡と白い肌のコントラストが できている頃なのに、今年は ほとんど白いまま。


でも、袖無しワンピースから はみ出ていた肌は 少し赤みを帯びている。


きっと、今日の陽射しが いつにも増して

キツかったからだろうなとか考えていたら、健汰の声がした。



「お~い、遅いぞ! なにやってんだよ!?」


私は、急いで水着の肩を 元にもどす。



ドキドキしながら、折り重なる葉っぱ越しに みんなが泳いでいる滝の方を見ると、ひょいひょいと器用に 河石を飛び渡りながら 健汰が近づいてくる姿が見えた。



「来ないでよ!!」


健汰が 大きな河石の上で 棒立ちになる。


「なんで? まだ着替えてんの?水着 着て来てんだろ?」



「そういう問題じゃないの!もう着替えてるし、すぐに そっちに行くから! 向こうへ行ってよ!!!」


私は、馬鹿な健汰でも理解できるように できるだけ大きな声で そう叫んだ。




「チェッ!! 変なの…」


来た時と同じように、健汰は ひょいひょいと河石を 飛び渡りながら 滝の方へと戻っていった。



なんて デリカシーのない奴ッ!!



私の中の健汰の評価が、一気に3段階くらい下がった。


せっかく さっき自転車に乗せてくれたから、評価が1になったのに、今の行いで マイナス2に格下げだ。


どこまで いっても、健汰は健汰のまま。

それは、少しも変わらないんだから…。


あいつだって、良いところが 一つぐらいあっても良さそうなものなのに。



そんなことを考えながら、私は 木の陰から 足を踏み出した。


聞こえてくる歓声は、おもに低学年の子たちと 健汰の悪友たち。


高学年の女子は、見たところ 今日は 私だけみたい。



あー、やっぱり来なければよかったかな…と後悔をしていると、滝壺近くの河原に リクライニングチェアとビーチパラソルという この場に不釣り合いな物を設置して 寝そべっている女性に気がついた。


私は、足元に気をつけながら、そのパラソルの女性の傍まで行くと 声をかけた。



「河井先生! ここ、ビーチじゃないですよ」


本人も 分かりきっているだろうことを 私は告げる。


真っ赤なビキニの女性は、物憂げに 顔を 私に向けると、寝たまま 小さく肩をすくめて言った


「かたいこと言わないの」


「でも、先生、今日の監視員役なんでしょ!?」


「大丈夫、大丈夫。 大田先生が 私の分も 滝の上の岩から しっかりと あのギョロ目で 見張っていてくれてるから。

それより、日焼け止めクリーム塗ってくんない?篠原さん…」


私の返事も聞かずに、ずいっと 手にした日焼け止めクリームのボトルを 私の手に押し付けた。


まったく、いつもマイペースで、よく こんなんで教師をやってられるわねと思わずにはいられない。


仕方なく 私は うつ伏せになった河井先生の背中に クリームを塗りはじめた。



「ん~、悪いんだけど、日焼け跡が残るのイヤだから 上の紐ほどいてくんない?」


「えぇえ!?」



「いいじゃない。 女の子同士なんだから♪」


お気楽も ここに際まれり…。


周りには 思春期と第二次性兆期に差し掛かろうという男子が ごろごろといるのに、なんと大胆な。


私は、仕方なく 河井先生の言う通りに 水着のブラの紐を ぱらりとほどくと、ボトルから 白いクリームを適量 手にとり、ゆっくりと塗り始めた。



「ん~ん、きもちいい♪ 篠原さん上手ね♪ あとで、私も 篠原さんに塗ってあげるから♪」



いやいやいや、ここでですか!?



「丁重に お断りさせていただきます!」


「えぇ~、なんで?」


「なんでもくそもありません。

おことわりします」



「年頃の女の子が、くそなんていっちゃダメ♪」



呆れ返った私は、それには応えずに 早急に 塗り終えるために 全力を出した。

勿論、いくら急いでも 塗り残しなんてしないけどね。



「はい、おしまい!!」


「ありがとう。 篠原さん。

特に 太ももあたりを塗ってくれた時、ちょー気持ちよかったよ♪

ほんとに 篠原さんは塗らなくていいの?」



私は 大きく ため息をつくと 再度、断った。 てか、それどこではない気分だったのだ。


それにしても、大人の女性って違うんだなって 胸のドキドキが止まらない。


私は 自分の指先に残った 河井先生の肌の弾力と柔らかさに それだけビックリしていたんだ。



私は、水際にゆくと、しゃがんで バシャバシャと手を洗った。


ほんとは 川の水が汚れるから イヤなんだけど、この際 仕方がないじゃない。



なんとなく、意味もなく、徐々に自分が不機嫌になってゆくのが分かる。


その理由が なんなのかは、なんとなく分かるけれど、認めたくなんかない。




「よぉ~、よぉ~、どうだった?」



アホ1号 すなわち山中健汰 登場。


それに続く、アホ2号こと 小山庄司と 3号こと 大山明夫も到着。



「なんのこと?」


私は 冷たく突き放す。


けど、そんなことには めげないアホさ加減を 彼らは所有していた。


「決まってんだろ! 河井先生の…」


「シャラップ!!」


なんど、私に叫ばしたら この おたんちん(←方言)は、私の気持ちの千分の一でも理解してくれるのだろう。


「いいじゃん、いいじゃん、どんな手触りだった?」



大きな溜め息。



「自分で確かめたら?」


私は冷たく言い放つ。


「そんなことしたら、大田先生の鉄拳制裁を喰らうに決まってるじゃんか!!」


「そうだ、そうだ、なにしろ大田先生は…」



1号と2号が言い募る。


「そっちの恋路には敏感なんだ」



「あったり前だろう!? 見れば分かるよ」


3号の発言に またもや 私は大きな溜め息をつかざるをえなかった。



彼ら三人は、のべつくまなく 飽きもせず、毎日毎日 夏休み中つるんで 川遊びや 山で虫取りとかしている 典型的な悪ガキトリオだ。


彼らの名字をとって、磯壁小学校では、一年生の頃からずっと『大中小トリオ』と呼ばれているのだが、彼らは そう呼ばれるのを けっこう気に入っているらしい。 それだけ 固い絆で繋がれているということだろう。


もっとも、『大中小トリオ』と呼ばれるのは、概ね 彼らが 何らかのワルサをした時なのだが。



「あー、うざい!!」


私は、大中小トリオを 置き去りにして、滝壺前まで 走って行くと 勢いよく水中に飛び込んだ。


準備運動も 水の冷たさにもなれてない 火照った身体には、滝から落ちてくる水は 冷たすぎたけれど、頭を冷やすには最適だった。


大きな水音に 皆の注目が集まったのか、みんなが何かを話してるのが聞こえるが、水中では 何を言っているのかなんて分からない。


私は そうして、世間の喧騒をシャットアウトしたまま 水中を ノーブレスで 滝壺を目指す。


水流は 思ったより強かったけれど、ここ数日の晴天のせいで 水量は いくらか減っているのだろう。


普段なら 辿り着けない 滝の水が落ちてきて たぶん数千年かけて大岩からなる断崖に穿たれた 深い滝壺まで水中を進むことができた。 勿論、私にとっては 新記録だ。


懸命に手足を掻きながら、現在地を維持しようとする。


すると、落水の水圧に圧されて 滝壺の底へと 自分が沈んでゆくのが分かった。


見ると、滝壺の底は 真っ暗で 何も見えない。


そういえば、滝壺には近づくなと 夏休み前の注意事項で 河井先生が言ってたっけ…。


そう自覚した時には もう遅すぎた。


滝の水に流されるどころか、どんどん深みに 沈んで行く自分を感じた。


いや、もう どっちが上か下かさえ分からない。


しゃにむに手足を ばたつかせるが どうにもならない。 まるでキッチンのシンクの排水口に飲み込まれそうになっている野菜くずみたいだなと 篠原こずえは思った。




to be continued……



鈍感な健汰に呆れ返った こずえに緊急事態発生!!


思わぬ真夏の事件に、こずえは…。



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