蛍の光
蛍の飛ぶ夜、村人は戸を閉める。村に降りてくるモウラさまと会わないためだ。
今までは人々は恐れて奉り、子供を供えて避けてきたが、村の子供が減っていくに連れて居ないふりをし出し、年に一度、明かりを落とした夜の家の中で息を殺し、どこかに行ってしまうまで耐え抜く風習がこの日に出来ていた。
この日はどれだけの人がやり過ごしてきたか解らなかったが、自分の事だけになっていればどうでもよかった。しかし、それがいけなかったのか、乳のみ子がいる家の少年だった自分は今日が最後だった。
モウラさまが家の前を通っている影が戸に映り、家の誰もが息を止めた。
その時、都合よく泣かないで居てくれなかった乳のみ子の声に振り向き、モウラさまが入ってくると思ったが、気のせいだと思ってくれたのか過ぎ去り、皆がホッとした。
た以外が体外に出ていってしまった。