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エピソード10.5:福岡滞在24時間。㊦

 それから、ギリギリまで部屋の片付けに勤しんだ3人は、地下鉄を使って天神まで出てきた。

 ここは、福岡県の――いや、九州地方の中心と言っても過言ではない、かもしれない。全国規模の最新ショップから地元の老舗デパートまで多くの店舗が軒を連ね、バス、私鉄、地下鉄が集まっている交通の要でもある。ちなみにJRは博多にあるため、天神と博多を結ぶ100円バスか、地下鉄で移動する人が多い。(徒歩での移動も可能だと思うが……オススメしない)

 当然人の流れも多く、それぞれが楽しそうに目的地を目指している。

 待ち合わせは、西鉄天神駅の大型ビジョン前。商店街と大通りの間にあるこの場所は待ち合わせスポットの定番であり、3人以外にも多くの人々がそれぞれの誰かを待っていた。

「ねぇセレナ、今日は誰が来ると?」

 隣でスマートフォンを操作するセレナにユカが問いかけると、セレナは顔を上げて「いつものメンバーだよ」と笑みを浮かべる。

「とりあえず、ここで古賀さんと徳永さんと合流してお店に行くことになってるよ。麻里子様と川上さんは少し遅れるって。後は……山口さんと高田さんと、宮本さんと斉藤ちゃんかな。徳永さん、ムネリンと飲みたいって、お酒が充実してるお店を気合入れて選んでいたから……麻里子様共々、相手してあげてくださいね」

 ユカを挟んだ向こう側にいる政宗に、セレナが苦笑いを浮かべた。

 しかし、政宗は目を輝かせてガッツポーズを取る始末。いざとなったら置いて帰ろうと脳内で決めたユカがため息をつきつつ……久しぶりの再会に、心が踊るのを感じていた。


 そして……午後6時に始まった宴会が最終的に終了したのは、明け方4時半だったことを明記しておく。


 政宗が『福岡支局』の応接用ソファで目が覚めたのは、すっかり日が昇った9時半頃のこと。

 最後の最後まで九州の酒飲みに付き合った結果、呆れたユカや実家暮らしでギリギリ未成年のセレナは途中で離脱し……結局、残った3人(政宗、麻里子、政宗と飲みたいと言っていた『徳永さん』)と共に最後は『福岡支局』で宅飲み(?)が始まり、それぞれ眠ってしまったのだった。

 元々ここかユカの部屋で寝かせてもらうつもりだったので、ホテルさえ予約していない強行軍である。ボサボサの頭と節々が痛む体を起こして、周囲を見渡した。

 この部屋には彼1人だけ。麻里子や『徳永さん』を含めたスタッフの姿や気配はない。

 ここの鍵を持っていないため、勝手に出るわけにもいかず……とりあえずユカと連絡を取ろうと、ソファの脇に置いたカバンに手をかけた。

 次の瞬間、背後にある扉のロックが解除された音が聞こえる。そして。

「……あ、政宗、起きとった」

「おっはよーございます、ムネリン。ご機嫌いかがですか?」

 セレナが持っている鍵で扉を開いた2人が室内に入ってくると同時に、ユカが手に持っていたペットボトルのお茶を政宗めがけて投げつけた。

「ぐはっ。」

 右肩にクリーンヒットして、ゴトリと床に転がるペットボトル。寝起きに容赦無い攻撃を受けて眠気も吹っ飛んだ政宗がユカに抗議をしようと立ち上がったが……それ以上に怒りを隠し切れないユカにとてつもなく冷めた目で睨まれて、思わず萎縮してしまう。

「な、何だよケッカ……だ、大体お前、未開封のペットボトルは鈍器だぞ鈍器、それをいきなりだな……」

「はいはい、スイマセンでした」

 全く心の頃持っていない謝罪には、何か底知れぬ恨みを感じる。

 被害者のはずの政宗は、いつの間にか、加害者にされていた。

「だ、だから何だよその態度は……俺が何かしたっていうのか?」

「――覚えとらんと?」

「お、覚え……覚え……?」

 酒が一定量入るとたまに記憶が飛ぶ悪癖は、自分でも十分理解しているつもりだった。でも、楽しくなってつい……つい、飲み過ぎてしまう。昨日もそうなってしまったのは何となくわかるが、ユカが腹を立てている理由は分からない。背筋が寒くなるほどの冷たい視線に耐えられず、政宗は、彼女の後ろで笑いを噛み殺しているセレナに、視線で助けを求めることにした。

 すぐに気づいたセレナと目が合ったが……彼女は「ムフフ」と笑ったまま政宗から視線を逸らし、「じゃあ私、事務所開けなきゃいけないから。ムネリン、適当に朝ごはんでも食べてねー」と、入り口の脇にある別室の事務スペースに引っ込んでいった。

 味方がいなくなった政宗は……再び、入り口で仁王立ちしているユカを見やる。

 彼女の手にはコンビニかスーパーの袋が握られていた。恐らくこの中に朝ごはんが入っているのだろう。だけど……ユカが明らかに怒っているのは、どうしてなのだろうか? 昨日(厳密に言えば今日)飲み過ぎた? 羽目をはずしすぎたのだろうか……どう考えても記憶がないので分からない。

「あ、あのー……ケッカ、何かあったのか? どうしてそんなにお怒りでいらっしゃるのか……」

 ユカは無言で政宗の方へ近づくと、テーブルに荷物を置き、彼の隣に乱暴に腰を下ろす。

 そして、萎縮して距離を取っている政宗を横目で睨み……一度、ため息を付いた。

「政宗……本当に覚えとらんと?」

「申し訳ないが、俺はケッカが何のことを言っているのか分からないんだ……俺、何かした?」

 ビクビクしながら問いかける政宗に、ユカは袋の中からおにぎりを取り出して彼に手渡すと……机の脇に落ちているペットボトルを拾い上げ、机上に置いた。

 無言になったユカを、おにぎりの包装を破りながら横目で見やる政宗。そして気付く、黙り込んだユカの顔が……耳まで赤くなっていることに。

「ケッカ……?」

「ば……」

「ば?」

「ばっ……バカ宗!! あ、ああああんたなんか、あんたなんかっ……親バカ宗!!」

「親バカ!?」

 唐突に罵られた政宗は意味が分からず目を白黒させる。するとそこへ、事務所内の作業を終えたセレナが戻って来た。そして、政宗の正面に腰を下ろし……満面の笑みでその理由を説明してくれる。

「ムフフ……ムネリン、本当に覚えてないんですね。昨日の夜、あれだけユカにベタベタしてたこと」

「……へ?」

 ユカにベタベタ? 誰が? 自分が? 仙台ではどさくさに紛れて手を握るのがやっとで、分町ママに「中学生じゃないんだから……」と、ため息をつかれたでお馴染みの、政宗が?

 全く記憶に無い証言に、政宗の目が点になる。ユカは真っ赤になって俯いたまま、袋の中に入っている菓子パンを開封して口に入れた。

 対照的な2人を目の前にして至極楽しそうなセレナは、事情説明を求める政宗の要望に応えるために、昨日の一部始終を説明する。

「宴会が始まってから、1時間くらい経過してからやったかな……ムネリンは終始ご機嫌で、今回のことはユカの助けがないと解決しなかった、とか、やっぱりユカは頼りになる俺の一番だ、とか、急に過去のことを懺悔したかと思ったら、すぐに笑顔になって早く大きくなったユカを見たい、とかとか。本当、子どもの成長を自慢するような親バカっぷりでしたねー。あとは……」

 それはもう楽しそうに語るセレナを「もうやめてよ!!」と半ギレで遮ったユカは……真っ赤にしたままの顔で政宗を睨み、パンを両手で握りしめて、ボソリと呟く。

「本当に恥ずかしかったっちゃけんが……酒の飲み過ぎもたいがいにしとってよね」

「それは……本当にすまなかった。弁解の余地もないな……」

 これはもう、本格的に自己責任が利く範囲で酒を飲まなければならない……出来るかどうかは分からないけど。毎度のようにひっそり反省する政宗に、笑顔のセレナが追い打ちをかける。

「そうですよムネリン。ムネリンがユカを終始抱きまくら状態にして独占してたんだから、ユカとゆっくり話せたのが夜遅くになっちゃったんですよー」

「だ!? だだだだ……抱きまくら!?」

 刹那、政宗が持っていたおにぎりが、彼の膝の上に落ちた。それを拾うことも出来ず、目を見開いてユカを見やると……露骨に視線を逸らされる。それが答えだ。

 昨日の政宗はあらゆるプレッシャーから開放されて、自分が思った以上に大胆になっていたらしい。

 自分の無責任な行動に凹む政宗を、セレナが流し目で見やる。

「えー? あれだけベタベタ抱きついておいて覚えてないなんて……ちょっと引いちゃいますよ。あと、どうして私に抱きついてくれなかったんですか? 待ってたのにー」

「いや、それはそれで色々と問題が複雑に……」

「はぁっ!? あたしならいいわけじゃなかろうもん!? この……たらしバカ宗!!」

 ユカの大声が室内に響き、政宗が慌てて謝罪する。それを見ているセレナは椅子の背もたれに体重を預けて……1人、昨日のことを思い返していた。


 それは昨日、麻里子と政宗の2人が事務所内で話を詰めている最中のこと。

 麻里子に内線で頼まれて飲み物を持って入ったセレナは、2人のやりとりの一部始終を聞いていた。

「俺は、彼女に救われています。だから今度は俺が……ユカを、助けたいんです」

 原因の一端である君が本当に助けられるのか、空のコーヒーカップを傾けた麻里子が意地悪な口調で問いかける。政宗は笑顔で麻里子を見つめ、言葉を続けた。

「俺自身が……ユカに対する罪滅ぼしをしたい気持ちもあります。ですが、それ以上に……俺はユカを失いたくありません。なので……伊達先生とコンタクトを取りながら、何の前進も出来ない福岡には、ユカを任せられないんです。ユカは、宮城が生かします」

 刹那、空のカップに中身を注いでいたセレナも驚いて政宗を見やる。麻里子に対して堂々と宣戦布告をしている政宗は、側に置いてあった茶菓子の袋を破り、口の中に入れた。

 そして……口の中のものを新しいコーヒーで流し込んでから、自分を挑戦的な目で見つめる麻里子に、もう一度、頭を下げる。

「今回は急なお願いになってしまって、申し訳ないと思っています。それでも……ユカのことを、俺に任せていただけないでしょうか?」


 分かっている。彼が誰の方を見ているのか。

 この10年間、精一杯努力をして、誰のために環境を整えたのか。

 全ては、彼女のためだ。分かっている。

 でもそんな、一途過ぎる彼だからこそ――


「……ナ、レナ?」

 ユカに名前を呼ばれたセレナは我に返り、現実に戻って彼女の方を向いた。

「ユカ、ゴメン。どげんかしたと?」

「もー、話聞いとってよね。今日も空港まではレナが送ってくれると?」

 食べ終えたパンの袋を折りたたむユカに、セレナは首肯して……腕時計で時間を確認する。

「うん。でも、麻里子様が10時にここに来るまでは動けないんだ。飛行機の時間、大丈夫?」

「大丈夫。あたし達の飛行機は……昼の1時過ぎやったよね?」

 ユカが政宗を見やると、彼はおにぎりを咀嚼しながら首を縦に動かす。

 そんな彼に、セレナが部屋の奥、トイレの隣にある扉を指さした。

「ムネリン、とりあえず……ご飯食べたらシャワーでも浴びてきたらどうですか? ここの設備でよければ使ってください」

「ありがとう、助かるよ」

「ムフフ……お背中お流ししましょうか?」

「いや、それは遠慮しておくよ……」

 おにぎりを頬張った政宗は、荷物を抱えてそそくさと奥へ消える。

 そんな様子をニヤニヤした様子で見送るセレナを、ユカは横目で見やり……。

「あんまり遊ばんでやってよね。政宗、そういうのに耐性なさそうやけん」

「えー? いいじゃん、好きな人に会えてアプローチするのは悪いことじゃないでしょ?」

「それはそうだけど……レナ、完全に遊んでるやん……」

 ユカにジト目を向けられても一切悪びれる様子のないセレナは、不意に目を細め、ため息混じりに呟いた。

「だって……勝ち目ないって自分でも分かってるつもりだから、こういう時くらい好きにしたって、バチは当たんないかなーって」

「勝ち目がない? レナ……何と戦ってんの?」

 セレナの言葉に本気で目を丸くするユカ。セレナは「ムフフ」と含み笑いを浮かべつつ……もう一度、別の意味でため息をついた。

「ムネリン……かわいそ。前途多難やねぇ」


 平日の福岡空港、国内線第1ターミナル。

 地方便を扱うこのターミナルから、仙台行きの直行便が出ている。

 ちなみに、空港まで一緒にやって来た麻里子は、少し早く、第2ターミナルから出ている那覇行きの飛行機に乗って、沖縄へ飛び立ってしまった。

 ユカに「餞別だ」と、縦長の茶封筒を押し付けて。

 日持ちするお土産を宅急便で送る手続きを終えた政宗が、2階の出発ロビーにある椅子でアイス(ブラックモンブラン)を食べるユカとレナのところへ合流した。

 平日の午後はサラリーマンやお年寄りの姿が目立つ。お土産の入った紙袋を持った人が、それぞれの時間を過ごしていた。

 現在時刻は、12時45分。腕時計で時間を確認した政宗が、「そろそろ行くぞ」とユカを促した。

 急いで残ったアイスを食べきり、棒を袋に入れたところで、セレナがそれを奪い取る。

「一緒に捨てておくね。どうせ、当たりじゃないんでしょ?」

「ん、ありがとう。貴重な休みをバタバタに付きあわせてゴメンね」

「よかよ、ユカの元気な姿と、ムネリンの相変わらずな姿を見れて安心したけん」

 相変わらずと言われた政宗が苦笑いを浮かべると、セレナは彼に視線を移し、ペコリとお辞儀をした。

「ムネリンもお疲れ様でした。徳永さんが今度、東北の地酒を飲みに行くツアーを計画したいって言ってましたよ」

「分かった。是非是非近々にお越しください、と、伝えておいて」

 刹那、ユカがジト目で政宗を睨んだ。政宗はユカの方を見ないようにしながら、セレナに笑顔を向ける。

「セレナちゃんも時間があるときに遊びに来なよ。8月には大きなお祭りもあるから」

「あ、知ってますよ。七夕祭りですよね。今年はユカもいるし……よし、今から有給申請しときますっ! ムネリン、ちゃんと案内してくださいね?」

 上目遣いで見上げられ、政宗は答えられずに顔を赤くした。刹那、仙台行きの飛行機を案内する放送が流れたため、2人は居住まいを正し、セレナに手を振る。

「じゃあ、レナ……またね!」

「セレナちゃん、ありがとう。気をつけて帰ってね」

「分かってますよ。ムネリンもお元気で。あと……ユカ! ムネリンに変な虫がつかないように、しっかり見張っといてよね!」

 ウィンクしてこんなことを言う親友に、ユカは後ろ手をふって返答し……検査場をくぐる。

 次にココに来るとき、自分は、どんな姿になっているのだろうか?

 楽しみなようで、でも、少し怖い。そもそも再びココに戻ってこられるのか……それさえも曖昧で、不確定な未来だから。

 でも。

「また帰ってこないと……死んでも死にきれんね」

 きっと、ユカが不甲斐ない姿になれば……福岡に残る仲間が宮城に押しかけて、色々と面倒な騒動を起こすに違いない。それを回避するためにも、しっかり生きていかなければ。

 ユカに続いて検査場を抜けた政宗と並んで歩き、出発口の上に表示された飛行機を行き先を見上げる。

 福岡発、仙台行き――ユカの戦いはここから始まる、そんな気がしていた。


「そういえば、麻里子様からもらった封筒……何が入っていたんだ?」

 仙台行の飛行機の中、後ろから2番めの3列シート、その真ん中に座っている政宗が、隣の通路側に座っているユカに問いかける。窓際と隣の列に乗客はなく、この列に座っているのは2人のみとなっていた。

 ベルト着用のランプが消え、足元に置いたカバンから飲み物を取り出そうとしていたユカは「そういえば」とその存在を思い出し、ペットボトルと共にそれを取り出してみる。

 特に厚みはない。さすがに現金ではないだろうと思いつつ、ユカがゴソゴソと手を入れて中身を取り出してみると……。

「……これ、あの時の写真……!?」

 封筒の中には、同じ写真が3枚入ってた。そこに写っていたのは、10年前のユカ、政宗、統治の3人。ユカと政宗が楽しそうな笑みでカメラに向けてピースサインをしており、苦笑いの統治が2人を見つめている。

 それは、10年前の夏研修の終盤――まだ、ユカの一件が起こる前――に宿舎内で撮影されたものだった。あの時の写真なんて、1枚もないと思っていたのに……現に2人は撮影したことさえすっかり忘れていた。

 政宗に1枚手渡したユカは、放心状態でそれを見つめる。写真の中の自分は、今の自分とほとんど変わらなくて……ため息をつきたくなるけど。

 不意に、ユカの口元に笑みが浮かんだ。そして、2枚の写真をとりあえず封筒の中に戻してから、シートに体を預け、息をつく。

 しかし、こみ上げた笑いを抑えることは出来なかった。

「政宗が……統治も、若い!」

 その言葉に政宗がジト目を向ける。

「若いとは何だ若いとは。今だって十分若いぞ!?」

「えー? 鏡見て言ってみなよ。あの時の政宗は頼れるお兄さんって感じだったのになー……」

 感慨にふけるユカに政宗は顔を近づけ、苦言を呈した。

「……何が言いたい、ケッカ。今の俺は頼れないって言いたいのか!?」

「ウソウソ冗談、そげなことないよ。頼りにしとるけんね、政宗支局長♪」

「白々しいんだよ……ったく」

 体を戻した政宗は、ジャケットに入れていたポケットティッシュを数枚取り出し、その写真を丁寧に包んだ。その状態で自身のカバンのポケットに滑りこませてから、改めてユカを見やる。

「統治の分もあるんだよな。忘れずに渡しておいてくれよ」

「了解。大切にせんと……ね」

 そう言って、窓の方を見やる。

 麻里子が今になってこれを渡してくれた意味、それはきっと、ユカが彼らと共に過ごすことを選んだからだろう。

 今ならきっと、この写真を見て悲しい気分になることはない。むしろ、今後のお守りになるのではないか――実際にそう思ったかどうかは麻里子本人のみが知るところなのだが、ユカはそう信じる。

 雲の上を飛ぶ飛行機なので、窓の向こうは晴天。何の障害物もない景色を眺めながら……これから始まる新しい生活に、少しだけ、思いを馳せていた。 

 福岡滞在後編でした。あー長くなった……でもこれで、8月の仙台七夕祭りにセレナがやって来て大騒ぎ、というエピソードが書けます。作中ではまだ4月ですけどね。

 天神で待ち合わせをする際は、あのソラリアステージの大画面前、みたいなことが個人的に多かったのでこうなりました。冬はツリーが逆さまに展示されていたことを覚えています。最近は警固公園も立派になって……前のどこか薄暗い雰囲気(個人の感想ですが失礼・でも夜は特に怖かったなぁ……)に慣れていた私は、あの開放感に未だ違和感を感じてしまいます。

 『福岡支局』にシャワーがあるのは、借りている事務所内にそんな設備があったからです。普段は電車がなくなって帰れなくなった人がよく使っています。

 ちなみに、麻里子が聖人に情報提供のみをしていたのは、単純に、ユカそのものを預けるまでの信頼を置いていなかった&宮城にユカを受け入れる環境が整っていなかったからです。

 今は『仙台支局』も出来たし、聖人と多く接した上で強気な政宗、そして何よりもユカ自身の申請があったことで、麻里子も「じゃあやってみんしゃい」と、若者の動向を見守ることにしたのでした。

 ……え? 麻里子の年齢? それは……秘密です。

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