表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/47

エピソード0:曇天に救いなし。①

 息を、吐く。

 白い空気が吐出され、霧散して……消えていく。

 屋上から空を見上げると、夜が明けたはずなのに太陽は見えない。どんよりした鉛色の空から雪が舞い落ちてくる。

 折り重なった車はバカになって、クラクションが鳴りっぱなしの状態だ。遠くからサイレンのような防災無線のような音も聞こえるが、警鐘ならばもっと早くに鳴らして欲しかった。そんな音が多方向から聞こえてきて……耳が、おかしくなりそうだった。

 いやいっそ、おかしくなって欲しかった。そうすれば、クラクションに混じる別の音を聞くこともない。


 ――助けて。

 ――助けて。私はここにいる、まだ生きている、助けて、助けて、助けて……。


 どうしろというのか、この非常識な世界で。出来ることならば今すぐに助けたい、助けたいけれど……陸の孤島となったこの学校から出ることが出来ない。

 フェンス越しに見下ろす足元は、仄暗いただの湖だった。校庭との境目に設置されたフェンスが網のように車を絡めとり、どこから流れてきたのかコンテナが積み重なり、流木が積み重なり、家の屋根が積み重なり、家財道具が積み重なり……人が、積み重なる。

 信じられるだろうか。つい数十分前まで、この足元に自分たちの生活があったことが。

 ついさっきまで、変わらない明日に愚痴をこぼしながら、今日を安穏と生きていこうとしていたことが。


 一瞬で、世界はひっくり返った。


 これが、現実?


 夢であってほしかった。でも、手に落ちた雪の冷たさで、これが現実であることを実感せざるを得ない。

 『彼』以外にも命からがら逃げてきた人々が多数、寒々しい屋上に集まり始めていた。そして、目の前の光景に打ちひしがれ、ある者は泣き崩れ、別のものは叫ぶことしか出来ず……統制を取ろうとする人物の声等聞こえない。法律など何の意味もない無法地帯のよう。

「……姉さん……!」

 『彼』が祈るように呟いた言葉は、クラクションの音にかき消された。


挿絵(By みてみん)

 この物語は、宮城県、仙台市及びその周辺、福岡市等、実在の地名や名物、そして、東日本大震災を連想させる描写が登場します。

 しかしながら、この物語は全てフィクションであり、実在する人物や地名、災害とは何の関係もございません。


 私自身も宮城で被災し、精神的にギリギリの経験をしました。具体的に書くと、津波が引かず、陸の孤島となった建物に24時間閉じ込められ、(恐らく)自衛隊が作ってくれた、瓦礫(車ばっかりでした)を重ねた道を通って脱出しました。プリウスを踏んだことを鮮明に覚えています。

 そして、抜けだした世界が全て壊れていたことは……たまに思い出してゾッとするくらい、脳裏に鮮明に焼き付いています。(その辺りのことは当時のブログに少し書いたので、興味がある方はご覧ください→http://ameblo.jp/frosupi/entry-10873934251.html)


 こんな経験をしたからこそ、何らかの形で、震災や復興に関する自分の思いを残しておきたいと感じました。

 同時に、復興の速度が遅くなっているんじゃないかという感覚もあり、そのあたりを自分に正直に書きなぐった結果が、この物語だと思います。

 この物語を読むことで「それは違う」「不愉快だ」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。それは単純に私の伝える力が不足しているからです。期待に添えられず、申し訳ございません。

 この物語が、少しでも、皆さんが「震災後の今、東北はどうなっているの?」と、検索するキッカケになれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ