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籤と凶事

 南州大社二の宮の籤は、霊験あらたかと評判がよかった。

 歴代の宮司たちもまた、籤を霊験あらたかとする為に心を砕いてきた。

 代々参道を整備し、巡る季節を花々が彩った。全国から茶葉を仕入れるばかりか、社領にて茶葉を栽培し、その出来栄えは通人を唸らせるほどであった。さらに、茶屋の菓子にも工夫を凝らし、菓子司を置いて茶に合う菓子を拵えさせていた。

 要するに、南州大社を観光地化したのである。

 霊験あらたかな籤を引きに行き、吉凶に一喜一憂し、景色を楽しみ菓子に舌鼓を打つ。良い気分で家に帰れば、何かと良いことが起こるというもので、やはり籤のおかげで良いことがあったということになる。

 そうしたことを繰り返していき、南州大社の籤の評判は上がり続けていった。

 所詮、籤の吉凶は引く者の心がけ次第といったところだが、歴代の宮司たちは、特にそれを問題にしなかった。


「つまるところ、茶の一杯を飲むうちに、大概の悩みは解決するもの。ほっほっほ」


 二の宮の十三代宮司・道治(みちはる)は、『正午の御籤』を前に、出来たばかりの新茶を飲んでいた。


「父上、籤の支度が整いましてございます」


 道治の嫡子・松寿丸(しょうじゅまる)が、引戸を開けて入ってきた。


「うむ、うむ」


 道治は布袋腹をゆすって頷くと、茶を飲み干して本殿の奥にある(やしろ)に向かった。

 『正午の御籤』は、参拝客向けの籤ではない。宮司の日課であり、れっきとした神事である。


「今年の茶も、良い出来よのう、松寿丸や」


「はい」


「春らしい緑の爽やかさの中に、しゃらと渋みが入っておる」


 社に続く小道を、いくつもの色褪せた鳥居をくぐりながら、道治と松寿丸は並んで歩いている。


「菓子司には、なんぞこの茶に相応しき新作を期待しておるぞ」


「はい、しかと伝えます」


「うむ、うむ」


 松寿丸が二の宮におけるあれこれを差配し始めて三年が過ぎようとしていた。

 宮司たる道治は、茶と菓子に口を出す以外は松寿丸に全てを任せ、宮司として必要最低限のことしかしていない。頬と腹は緩み膨らみ、神人たちからは、二の宮の宮司は恵比寿様と言われる始末である。

 未だ道治が宮司でいられるのは、ひとえに跡継ぎの松寿丸が父の顔を立てているからに他ならない。そうとは知らぬ道治は、この大層出来の良い跡取りの背におぶさり、いずれ来たる隠居の日々を心待ちにしているのだった。


「社も、そろそろ手狭かのう?」


 参拝客で賑わう本殿から遠く離れたところに、社はあった。


「あと二・三月ほどで、増築が必要かと思われます」


 社の外壁は、遠目には淡い朱色の中心部から、外側に向かって朱色が濃くなっていくように見える。

 数か月ごとに増築を繰り返しており、古い部分の修繕が追いつかないのだ。

 『社』という名前の控えめさとは裏腹に、この『正午の御籤』を行うためだけに造られた建物は、本殿よりも遥かに巨大であった。

 最後の鳥居をくぐり、奥の宮の格子扉の前まで来ると、道治は色褪せた外壁を見つめながら松寿丸から馬の鞍ほどの大きさの、六角柱の箱を受け取った。

 箱の上部には、小さな丸い穴が空いている。


「全く、菓子と茶と籤で稼がねば、社領の年貢程度では追いつかんのう」


「はい。今年の茶は高値で売れる見込みですので、来年までは増築も滞りなく進むでしょう」


「うむうむ、では始めるとするかな」


 道治は、祝詞を上げながら箱を振り始めた。

 じゃらり、じゃらりと箱から音が聞こえる。箱の中には櫛の歯ほどの細さの木の棒が幾本も入っており、その正確な本数は、道治以下神職の誰も把握していない。

 道治の額には汗が噴き出している。箱は相当な重さがあり、振る動作自体はゆっくりとしたものだが、そのためにかえって全身に負担がかかるのだった。

 一つの動作が終わると、箱の上部の穴から、木の棒が一本飛び出てきた。


「六百四十九……」


 棒に書かれた数字を読み取って、松寿丸に伝える。


「かしこまりました」


 松寿丸は、紙片に数字を書きつけた。それを待って、道治は再び祝詞と所作を始める。


「四十六……」


「かしこまりました」


「八百二十四……」


「……」


「……」


 一つの所作が終わるたびに、数字を紙に書きつける。全ての所作が終わると松寿丸は書きつけた数字を足し引き掛け割りし、新たな数字を出す。

 そして、出した数字を、疲労により腰が砕けたようにへたり込んでいる道治に見せた。


「うむ……、うむ。三万四千七百九十九番……、じゃな」


「はい」


 松寿丸は格子扉を開け、奥の宮の中に入っていった。


「ふう、うむむ。松寿丸がもう少し大きくなれば、この所作まで頼めるのだが……」


 祝詞と所作とで、からからに乾いた喉に唾を飲み込みながら、道治はぼんやりと格子扉の奥を眺めている。

 格子扉の奥に見えるのは、朱塗りの帳箪笥である。それも、一棹、二棹ではない。幾百、あるいは幾千棹ともしれない。それぞれの箪笥に備わった引出しの数に至っては、万を遥かに超えていた。


「日に一つ、引出しを増やすように……。大社算法に基づき所作を増やすべし……。代々伝わる神事とはいえ、初代宮司以来十三代およそ三百年。引出しの数は十万をとうに超えておる。あと十代先の宮司は、果たしてこの神事を執り行えるのかのう?」


 菓子ばかり食べ運動不足の己を棚に上げ、道治は数年後の帳箪笥の数を指折り数え、軽く眩暈を覚えた。


「松寿丸に籤を取りに行ってもらえるようになって、楽になったがの」


 引出しの中には、籤が収められている。日々、莫大な数の引出しの中から所作に基づき籤を出す。そして、新たに引出しを作り付け、籤を入れる。これが二の宮の神事『正午の御籤』であった。


「ち、父上!」


 どたどたとした駆け足で、松寿丸が戻ってきた。


「な、なんじゃ松寿丸。あ、慌てるでない」


 道治は、松寿丸の様子が尋常のものではないことを見て取った。

 常日頃から冷静沈着、歳よりも遥かに大人びている松寿丸が、血相を変えて籤を握りしめている。道治は、籤の結果が吉兆でないことが、中身を見るまでもなく分かってしまった。


「こ、これを」


「うむ、うむ……、うむむっ」


 道治は松寿丸から籤を引っ掴むと、両目を見開いて籤を睨む。


『大凶 変化の目覚め』


「うーむ……」


 籤の中身を見終わると、道治は衝撃のあまり倒れてしまった。


「ち、父上、父上っ。誰か、誰かある!」


 弥三郎と権兵衛が二の宮にやってくる、数日前のことだった。




 本殿近くの参道脇に、大きな黒松がある。

 黒松そばの長椅子に腰かけて、弥三郎と権兵衛はそれぞれの引いた籤の吉凶を教えあっていた。ちなみに、権兵衛は大吉である。


「凶、と出たよ。権兵衛どん」


「ほ、ほら。ここで凶が出たなら、悪いことはもうお仕舞さ。弥三郎どん」


「それに、大凶が出ないってことは、悪いことが起こるにせよ、それほど悪いことが起こるわけじゃないってことさ」


「『二の宮の籤に大凶なし』、というじゃないか……」


「いやいや、おれの籤は大吉なんだ。そのおれと一緒にいる弥三郎どんに悪いことなんて起きやしないよ」


「では一緒にいない時に見るあの夢はやはり凶事ではないか」


「むむむ」


 景気づけの籤のはずが、思う通りの結果が出なかった為にかえって弥三郎の悩みを深めてしまった。


(なるほど、籤とはまさに引く人の心がけ次第、ということか……)


 悩みの種が取り除かれないことと、友を思うように励ませなかったことで、二人共頭を抱えて唸っている。


(むむむ、このままでは、よくないが……。む、そうだ!)


 権兵衛は膝を叩いて立ち上がった


「弥三郎どん!」


「なんだい、権兵衛どん」


「凶が出たら本殿で祓ってもらえるじゃないか」


「そういえば、そういうこともあったね」


「ようし、ならば急ごう」


 長椅子から立ち上がり、二人は本殿へ向かった。


「うまいことお祓いできればよいがね」


「大丈夫、大丈夫さ」


 本殿まで来てみると、何やら慌ただしい。神人たちがばたばたと行き来し、口々に何やら話し合っている。


「もし、どうかしたのですか」


「申し訳ない。しばしお待ちください」


 弥三郎は神人の一人に声をかけたが、ろくに会話もせぬままにすげなくあしらわれてしまった。


「権兵衛どん。どうも都合が悪いようだ」


「むむむ」


「権兵衛どん?」


 弥三郎が権兵衛の顔を覗き込むと、顔が赤くなっている。


「こらっ、あんたら!何があったか知らねぇが、その態度はなんだってんだっ」


 本殿奥まで響く大音声に、神人たちが一斉に二人の方を向く。


「お、おい権兵衛どん。なにもそんなに」


「うるせぇ!ここ数日の弥三郎どんの苦労を思えば、なんだってんだ!おい、おい、誰かいないのかっ」


 弥三郎の制止も聞かず、権兵衛は声を荒げて叫びまくる。本殿に向かってくる参拝客たちも、何事かと思い足を止めて遠巻きに眺めている。


「これはあい済みません。少々予期せぬ事態がありまして、御用は私が承りましょう」


 松寿丸が奥からやってきて、にこやかかつ神妙に権兵衛に応対した。


「お、おう。それでいいんだ……。うん」


 年端のいかぬ少年に丁寧な応対をされて、毒気の抜かれた権兵衛は、ようやく自らの大人げない行いに気が付いたのか、水に漬けた煎餅のような顔になった。


「凶が出ましてな、お祓いをと思いまして」


 弥三郎の言に、ばたついていた空気が一瞬止まった。


「……、こちらでは少々慌ただしいので、奥までどうぞ」


「ありがとうございます」


 恥ずかしそうに身を縮めている権兵衛に代わり、弥三郎が礼を言う。少年に対して大人が行うには少々丁寧に過ぎる礼の言葉だったが、そのやりとりに不自然さが見られないほど、松寿丸は大人びていた。


(殿が生きておれば、あれぐらいのお歳かな)


 不意に弥三郎は、松寿丸の容貌にかつての主を見た。

 二人は松寿丸の後に従って、本殿の奥に入っていく。

 本殿奥の一室に通された二人は、座布団に座って松寿丸と相対した。


「ご紹介が遅れました。私は宮司の息子で、松寿丸と申します」


「それがし、弥三郎と申します。ごちらはそれがしの友で権兵衛という者です。お忙しい中お時間を頂きまして、ありがとうございます」


「ど、どうも……」


 弥三郎と権兵衛は、深々とお辞儀をした。松寿丸の纏う雰囲気から、ただならぬものを感じていた二人は、年長者に対するような気持ちでいる。


「凶が出た、ということですが、何かここ数日気になることはありましたでしょうか?」


(ん……。凶の結果はこれから出るのでは……?)


 弥三郎は、思いがけぬ質問に途惑いを感じたが、特に詮索せず、連夜の夢について話すことにした。


「実はこのところ妙な夢を見ておりまして」


「……、夢?」


 ぴくり、と松寿丸の眉が動いた。


「はい、実は、それがしが牛になってしまうという……」


「うし!」


 座布団から立ち上がらんばかりと勢いで、松寿丸が弥三郎ににじり寄ってきた。


「は、はい。夢で牛になると、草が食べたくなって、それで……」


「食べたのですか!」


 松寿丸の剣幕に、弥三郎は思わずたじろいだ。


「は、はい。夢では。不思議と起きると食べたくなくなるのですが……」


「あ、あ、あ……。それで夢見の吉凶を占いにこちらへ」


「そうです。……あの、どうなされましたか」


 松寿丸は、腕を組んで唸っている。弥三郎の問いかけにも答えない。


「なぁ、弥三郎どん。来てみてよかったろう」


 小声で権兵衛が囁きかける。


「まったくです」


 権兵衛の小声を聴き取り、松寿丸が首肯した。


「弥三郎さん。よくぞ来てくださいました」


「はぁ」


「弥三郎さん。これから、草を食べてはなりません。草を食べ続けると、牛になります。そうなる前に、『変化の者』を倒して頂きたい」


 姿勢を正し、松寿丸は静かに告げた。




 本殿奥の一室は、奇妙な静寂の中にあった。外の廊下から、ばたばたと神人たちが走り回る音が聞こえる。


「菜っ葉の類は全て駄目です。いいですね。葉、茎、根はいけませんよ」


 畳み掛けるように、松寿丸は次々と言葉を重ねていく。弥三郎は、松寿丸の言葉についていけない。


「お、おい松寿丸さんよ。牛になるってどういうことだい!」


 権兵衛は弥三郎と松寿丸の間に割って入り、声を荒げた。松寿丸は静かに続ける。


「言ったとおりです。弥三郎さんの夢は牛変化への予兆だと考えられます」


「牛変化……ですか」


 弥三郎には、事の次第が呑み込めていない。どうも大事のようだが、どこか実感がなかった。


「はい。これは、初代宮司以来の神事に則ったもので、まず間違いはありません」


「神事……」


「はい。先日の『正午の御籤』により、『変化の者』の発生を察知していましたが、どこにいるのかまでは分かりませんでした。その日より、籤を変化の者に感応する形式のものに変更しまして、網を張っていたというわけです」


「では、凶が出た者へのお祓い、というのは、その『変化の者』を察知する仕組みということですな」


「ええ、『変化の者』にはなにがしかの予兆が現れますから。弥三郎さんがこちらにおいでなさって、本当によかったです」


「お、おいおい。『変化の者』って……。弥三郎さんみたいに夢に悩む人が、まだ別にいるってのかい?」


 権兵衛の顔が青くなる。籤の結果であることが、権兵衛にこの件の信ぴょう性を高めさせていた。


「夢に苦しむのは、あくまでも予兆の一つです。最後には変化して、多くの人を苦しめます」


「その、変化というのだが……、本当にそれがしが変化する、と。牛になって暴れるとでもいうのかね」


「はい」


 松寿丸の表情は、真剣そのものである。権兵衛も、松寿丸の顔つきに似てきた。一方の弥三郎は、いまいちぱっとしない。


(権兵衛どんは、つい人の気持ちに呼応するところがあるが……)


「弥三郎どん。なにを呆けた顔をしているんだい。牛になっちまうんだってよぅ」


 弥三郎の肩を掴んで揺さぶりながら、権兵衛は泣きそうな顔になっている。


「落ち着こう、権兵衛どん。人が牛になるなんてことが、そうそうあるもんか。しかも、それがおれの他にもいるというのだよ」


「う……ん」


 再び権兵衛の声が小さくなっていく。

 権兵衛が落ち着きを取り戻すのを待っていたかのように、松寿丸が口を開いた。


「滅多にあることではありませんが、確かにあるようです。変化の者が現れるのは、いつも同時期に二人。両者とも変化して殺し合ったとか、人のままの一方が変化した一方を倒したとか……。一方が他方を倒せば、変化は止まります」


「ふむう……」


 弥三郎は、自分が蚊帳の外にいるような感覚の中にいた。あまりにも突飛なことで、どうにも信じられないのだ。

 勿論、夢が悩みであることは確かだし、夢の生々しさは間違いないものだったが、いざ牛になると告げられると、弥三郎が長年親しんだ良識が邪魔をする。


「なぁなぁ弥三郎どん、このままここにいても埒があかないんだ。最悪、弥三郎どんが牛になるかもしれない。だったら、早いとこ他の『変化の者』とやらに会ってみればいいんじゃないのかな」


 権兵衛は、あくまでも松寿丸の言うことを信じるようだった。


「うむ、そういうものかもしれないね……。松寿丸殿、それがし以外の『変化の者』はどちらにいるだろうか」


 とにかく『変化の者』に会えば何かあるだろう、と思い、弥三郎は松寿丸に問うた。


「……、それなのですが、……」


 松寿丸の顔が、にわかに曇り出した。


「いかがなされた」


「未だ、弥三郎さん以外の『変化の者』が見つかってないのです。」


「むむむ」


「すでに変化していれば、どこかの村で大きな被害が出ているやもと思い、先日から各地の神社に使いを出しているところですが……」


 松寿丸と弥三郎は、腕を組んで頭を垂れた。

 外の廊下を神人たちが駆け抜ける音だけが、室内に響く。

 ばたばたとした慌ただしい音は、どたどたとした音に変わっていき、どんどん大きくなってきた。誰かが近づいてきている。


「松寿丸っ」


 きんと裏返った声が、松寿丸を呼んだ。


「父上っ」


 声の主は、松寿丸の父、道治であった。


「来たぞ、知らせがっ」


 道治の手には、文と思わしき紙が握りしめられている。紙は、ところどころ赤く染まっているようである。


軍鶏(しゃも)変化(へんげ)じゃっ。軍鶏変化が有場村(ありばむら)に現れよった。ど、どうしようか」


 道治の顔は混乱の相が出ている。


「父上、落ち着かれなされませ」


「むゅ」


「こちらの方は牛変化です。ただちにこの方と共に有場村へと向かいます」

 松寿丸は父をなだめ、弥三郎を紹介する。弥三郎は軽く一礼をした。


「う、うわぁ」


 突然の出会いに動転したのか、つるりと滑って、道治は床に仰向けに倒れてしまった。


「……、失礼な父で申し訳ありません。こちらは南州大社二の宮の宮司です」


「いえ、変化の者というのは恐ろしいもののようですので」


 道治の下に近づきながら、弥三郎は松寿丸に会釈する。


(おや……?)


 弥三郎はなんとなく道治の手元から文を取り、一読した。


「む……」


 弥三郎の心がざわつき始めた。


「権兵衛どん、おれは小楠村に行くよ」


「おう、おれも行くぜ、弥三郎どん」


 権兵衛が立ち上がりかけた。


「いや、おれだけで行った方がよいかもしれん」


「おいおい、今更そりゃないよ」


 権兵衛を手で制し、弥三郎は松寿丸に文を渡した。


 すぐに松寿丸は文を読み始めた。読み進めるうちに、どんどん顔色が悪くなっていく。


「しょ、松寿丸さんよ。何が書いてあるってんだ!」


 松寿丸の尋常ならざる様子に、権兵衛は文をひったくって目を通した。


「げぇっ」


 文の中には、以下の通り書かれている。


『南州直領有場村にて軍鶏変化現る。直領代官殿、軍鶏変化に討たれ、(たお)れる。有場村の消息無し。軍鶏変化未だ斃れず。当地にて、軍鶏変化の目撃者を保護す。 小楠(おぐす)神社』


 有場村が今どのようなことになっているのか、文は雄弁に語っていた。


(おれが牛になる、ということは未だ信じられんが、おれのような奴が別にいて、そやつが凶行に及んだ、となると、放っておけんな)



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