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一話

オレは幼い頃から動物と“会話”することが出来た。

そんなオレはある出来事から動物が死ぬ程嫌いになった。

それ以来、オレは動物との“会話”を拒み続けてきた。

この頃のオレは、まさか自分がこれから動物と関わる生活に巻き込まれるなんて想像もしない事だった。


「出席を取るぞッ!1番、赤木 龍二……赤木!?──またか?」

高校3年A組の担任、小町 哲男がいつもの様に呆れながら言った。

「センセ〜、龍二は体調悪いから学校休むらしいですよ!」

黒髪のショートカットの女子生徒が立ち上がって言った。

彼女の名前は水島 雪江

龍二とは家が隣にあり、幼馴染みである。

「どうせサボりに決まってるだろ」

教師は自信ありげにキッパリ言い切った。

「(ま、どうせそうだろうけど──。)」

雪江も納得して着席した。



「ふわぁ〜ぁ……。」

少し茶色がかった長めの髪が特徴的で制服姿に耳にヘッドフォンをつけ、公園のベンチに横になって寝ている男がアクビをしていた。

彼が赤木 龍二である。

「ったく、学校なんてメンドクセ〜よな……。」

「ワン、ワンッ!!」

野良犬が寝ている龍二の所に走り寄って来た。

「──ッ!!!」

それに気が付いた龍二は慌てて起き上がり、野良犬と距離を置いた。そして慌てて耳にヘッドフォンを付けた。

「しっ……しっ!!」

龍二は野良犬を避けるようにベンチに立ち上った。

「あっちに行け!!オレは動物が大嫌いなんだ!」

「ワン!!」

それでも野良犬は龍二に近付こうとしていた。

「来んなよッ!!」

龍二は荷物を担ぎ、公園から離れた。

「ったく……動物を飼うのはイイけど、捨てるなよな!!」

龍二はボヤきながら、そこら辺を歩いた。

「ゲーセンでも行くか。」

そう言いながらヘッドフォンを外した。



「相変わらず面白くねぇな……。」

龍二はゲーセンで時間を潰そうとしたが、結局暇を持て余し、再び朝の公園の前を通りかかった。

「ワン、ワン!!」

すると犬の鳴き声が聞こえた。そして3人の声も続けざまに聞こえた。

「オリャッ!!!」

「おい、あっちに逃げ込んだぞ!」

「追い詰めろ!」

龍二はバレないようにその光景を覗き見しようとした。するとさっきの声の主であろうヤンキー3人があの野良犬をイジメていた。

「(あの野良犬……………まだいたのか。)」

龍二の足が止まった。

「殺れ〜!!!」

『……けて!』

龍二に何かが聞こえた。

「チッ……。」

『助けて……。』

「朝もそうだが、オレに話しかけるな!オレには関係無い!!」

『助けて……お願い……!』

「ウルセ〜んだよ……。」

『助けて!!!』

「イイ加減にしろッ!!!」

龍二は思わず大声で叫んだ。

「あぁ?」

ヤンキーが龍二に睨みつけた。

「しまった!」

「坊主、正義のヒーローでも気取ってんのか?」

「良い子はもう寝る時間でちゅよ?」

「ギャハハハハッ!!!」

3人は大笑いした。

「おい野良犬………オレは別にお前を助けに来た訳じゃねぇ──オレを侮辱したコイツらを打ちのめしに来ただけだ!!」

龍二は拳の骨を鳴らしながらヤンキー3人組に近付いていった。

「来いよ、クズが!!!」


数分後……。

「ずみまぜんでじだ……。」

ヤンキー3人は顔の表情が変わり果てた姿で龍二に土下座をしていた。

「これからは喧嘩を売る相手を考えるんだな!!!」

「ば……ばい!!!失礼じまじだ!!!」

そう言い残し、3人組は慌てて帰っていった。

「ワン!!」

『ありがとう!!』

「お前を助けた訳じゃねぇ〜よ !もうオレに話しかけるな、イイな?」

龍二もそう言って帰ろうとした。

「ブラボー!!!」

ベンチに座っていた小さめの眼鏡をかけ、髪を直立に立てている男性がいきなり拍手をしながら声を掛けてきた。

「あ?」

龍二は振り向いた。

「……お前、動物と話せるのか?」

眼鏡を中指で押し上げながら言った。

「……。」

龍二は黙ったままその男性を睨んだ。

「まぁ、コッチに座れ!!ホレ、ジュースあるぞ!」

「オイ、最近の高校生がジュース1本で釣れると思うなよ?」

そう言い、龍二は不機嫌そうにベンチに座った。

「ちゃっかり釣れてるじゃねぇ〜か!!」

「ウッサイ!で、オッサンの名前は?こんな時間に公園にいるって事はリストラか、何かか?」

龍二は缶ジュースの蓋を開けた。

「オレ は影沼 俊樹、ただの獣医師だ。」

「ふ〜ん、獣医師ねぇ〜。その獣医師がオレに何の用?」

「いやぁ──お前、動物と話してたろ?」

「(──何者だ、このオッサン!!?)……意味分かんねぇ」

龍二は缶ジュースを飲み干し、立ち上がろうとした。

「待てよ!」

影沼は龍二の腕を掴んだ。

「放せよ、オッサン!!!」

「何故動物と話せる事を隠す?」

「隠すも何も、オレは動物と話せる訳ねぇ〜だろ……帰るわ。」

「ウソつくな。イイ能力じゃねぇ〜か!“アニマル・コミュニケーター”なんてよ!!獣医師のオレには欲しい能力だぜ?」

「“アニマル・コミュニケーター”?……この能力の名前か?」

その問いに影沼は頷いた。

「ハァ……。」

龍二は諦めたのか、深いため息を吐いた。

「確かにオレはオッサンの言う通り、動物と話せる……それで満足か?」

龍二は腕を振り払い、立ち去ろうとした。

「何故お前はそんなに隠したがる?」

龍二の足が止まった。

「過去から……逃げる為だよ。」

龍二は眩しそうに、空を見上げた。

「……よし、今から来い!!」

影沼は龍二を無理矢理引っ張って行った。

「ち──ちょっと待てよ!オッサン!!」

「おい、そこの野良犬!まだいるんだろ?その傷を手当てしてやるから付いて来い!!」

そう言い影沼はしゃがんで手を叩いた。

「ワンッ!」

影沼の声に反応し、野良犬は草むらから出てきた。

影沼は少し微笑みながら、龍二を引っ張り歩いた。



影沼は龍二を自分が経営している動物病院に連れて来た。

その後ろから野良犬もちょこちょこ付いて来た。

「ただいま〜!」

影沼は玄関の扉を開けた。

「あ、志村さん!今日からバイトが来ましたよッ!みっちり鍛えて下さいね!!」

影沼は笑いながら言った。

「バイトだと?」

「あぁ、バイトだ!ホレ、まずはトイレ掃除から始めろ!!オレはあの野良犬を手当てしてやらにゃイカンからな!」

影沼は龍二にバケツとタワシを渡した。

「……ッ!!!」

龍二は渋々トイレに向かった。

「影沼先生、コレは立派な人拐いですよ?」

長い黒髪が印象的なナース服を着ている女性が呆れながら言った。

彼女の名前は志村 瞳である。

「イイじゃねぇ〜か。」

「何で連れて来たんですか?」

「アイツは似てるからかもな……あの人に。」

ガシャーンッ!!!

トイレの方から大きな物音が聞こえた。

「あの野郎……ι」

影沼は頭をかきながらトイレに向かおうとした。

「ココは私に。先生は早く手当てを。」

そう言い瞳はトイレに向かって走った。



「なんだよ、このトイレ!!ボレ〜なぁ!」

龍二は水浸しになりながら、便器を蹴った。

「あらあら、大丈夫?」

「あ、あぁ。(うわ、キレイな人だな)」

龍二は照れ臭そうに言い、立ち上がった。

「早く服脱がないと風邪引くわよ!コッチに来て!」

「す、すいません。」


「ハイ、コーヒーよ。温まるわ。」

瞳は上半身裸になった龍二にコーヒ ーを渡した。

「あ、ありがとうございます。」

龍二はそのコーヒーを受け取り、ボーッとしていた。

「もしかしてコーヒー飲めなかった?」

「いえ、そんな訳じゃないんですけどね……あのオッサン、どうしてオレをこんな所に?」

「オッサン?あぁ影沼先生の事?私も数年一緒にいてるけど、未だにあの人の行動は理解出来ないわι」

「酷いなぁ、志村さんまで」

影沼は手当てを終了し、扉の端に寄りかかっていた。

「あ、影沼先生いたんですか!?」

瞳は慌てて会釈した。

「志村さん、オレにもコーヒーちょうだい。」

「ハイ」

「そういや、オレには名前名乗らせておいてお前は名乗らないのか?」

「あぁ──オレの名前は赤木 龍二!」

「龍二か……まぁ、とりあえず今日からヨロシクな、バイト君♪」

龍二はその言葉を聞いてコーヒーを吐き出しそうになった。






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