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第7話 グラン兄さんと

 リーシャが生まれて1ヶ月。オルランド家は新しい家族の誕生に活気付いていた。



 とくに、父の喜びはハンパじゃなかった。ずっと娘が欲しがったが結婚して約15年間娘に恵まれなかった彼は、時間を見つけてはリーシャの元に行っている。



 うちは貴族家にしては子供の数が少ない。



 なぜなら、貴族にしては珍しく、父には側室がいないからだ。下級貴族家だからというのと、父と母の仲が非常に良いというのが理由だろう。父も母も貴族家出身だから一応政略結婚なのだが、二人の相性はとても良かったらしい。


 しかし、ほとんどの場合そううまくはいかない。酷い場合、跡取りが生まれた後は夫婦がそれぞれ別の場所に別れて住み、お互いに何人も側室や愛人を囲っている事すらあるという。




 もちろん中には両親のような関係を築けている人たちや、複数の相手と結婚していてもそれぞれにきちんと愛情を注いでいる人もいる。


 しかし、複雑な貴族社会ではなかなか相思相愛の相手と結ばれるというのは難しいようだ。




 少し話が逸れたが、ようやく娘が生まれた父はずっとニコニコしている。




 しかし、リーシャはよく夜泣きする。俺は前世の記憶を持って生まれたため、まったく手の掛からない子だったらしいが、リーシャは何かがあったらとにかく大声で泣く。夜も、だいたい2・3時間ごとに泣く。


 俺は少々うるさくても眠れる質なので全然気にせず寝ているが、両親はすぐ側で泣かれるので、睡眠不足気味らしい。



 目の下に真っ黒な隈をつくりながらリーシャの寝ているベッドを覗き込みニコニコしている父はなかなかにホラーだ。



 夜中に見かけたら悲鳴をあげちゃうレベル。




 家全体が活気付いているのに、みんな似たような顔をしている。






 「子育てって大変なんですね」


 「グレイは全然疲れてなさそうだな」


 「グラン兄さんも平気そうですよ?」


 「俺は体力が自慢だからな」


 今、俺はグラン兄さんに連れられて家の近くの森に来ていた。護衛の兵も数人ついて来ている。



 3日後に家で、周囲の貴族も招待してリーシャの誕生パーティーが開かれる。その時に出す料理の材料を穫りに来たのだ。





「俺も付いて来て良かったんですか?」



 当然、俺の戦闘能力は誰にも話してない。だったら5歳の子供なんか役に立たないと考えそうだが。


 今回はパーティー用の食材を穫りに来たんだから確実にある程度の量は確保しなければならないため邪魔になりそうな俺を連れてきた兄の事を不思議に思っていた。




 「この森にはあんまり危険な獣は出ないからな。それに狩りに関してはグレイの方がリュートよりは期待できそうだからな」



 「リュート兄さんがいくら武術が苦手とはいえ、流石にそれは言い過ぎなんじゃ…」


 5歳の子供より弱いと思われるのは流石にショックだろう。


 ちなみにリュート兄さんは今、風邪を引いて寝こんでいる。リーシャの夜泣きによる睡眠不足が祟ったらしい。

 

…ごめんよリュート兄さん、やっぱりフォローしきれない。



 「それにグレイは魔術が使えるんだろう?」


 「・・・・・・えっ?」


 あれ、なんで知ってるんだ?修行をしているところは誰にも見られていない自信があったんだが…



 そんな俺の内心を表情から読み取ったらしいグラン兄さんが続ける。


 「家では母上しか読んでなかった魔術関連の本をあれだけよく読んでいるんだ。家中の人が感づいていると思うぞ?」



 「・・・なるほど。納得しました」



 考えてみれば魔術の才能がない奴がそんなに熱心に魔術関連の本を読むわけがないよな。まあ、別に魔術が使える事を特に隠したい訳じゃない。魔術の才を持っている人間は100人に1人。確かに少数派だが、国単位で見ればそれなりの人数にはなる。だから魔術が使える事自体は知られていても何の問題もない。問題になるのは俺の強さだが、兄の様子ではそっちは恐らくばれてないだろう。常識的に考えて、初級クラスと考えてくれるだろう。


 早熟なタイプの魔術師なら7・8歳程度で魔術の才能を開花させることが多い。俺は他よりも早めに魔術の才能が開花したのだ、程度に考えているみたいだ。



 グラン兄さんの話では危険な魔獣(魔力を持つ獣)や猛獣はいないようなので、初級魔術で充分だろう。








 俺とグラン兄さん、そして護衛の兵たちは、馬から下りると森の中に足を踏み入れた。




 気配を探ると、あちこちに小型の動物の気配があった。どうやらかなり獲物の数は多いらしい。グラン兄さんも獲物の気配を感じとったようだ。流石に慣れている。持ってきた弓を構えると、茂みに向かってためらいなく矢を放った。


 悲鳴が聞こえ、近寄ってみると野ウサギを仕留めていた。



 「流石に上手いですね」


 「まあ、狩りは慣れているからな。」


 剣の腕は聞いていたが弓もなかなかのものらしい。


 グラン兄さんはすぐに野ウサギに血抜き処理をする。



 前世の俺だったらその光景を見て気分が悪くなっていただろうが、ユルド達の記憶の影響かさほど気にならない。





 その後もグラン兄さんは次々と獲物を狩っていく。野ウサギや猪、雉など、様々な食材が集まった。



 護衛についてきた兵たちは、近くで採集をしており、食用になる植物や茸、果物などもあった。





 翌日もグラン兄さんと共に狩りに出た。今日は俺も積極的に狩りをした。



 土を針型に凝縮して放つ土属性初級魔術ニードルショットを駆使して獲物を狩っていく。


 やはり罪悪感は感じなかった。ユルド達の記憶を受け継いだことで、俺自身にも少しは変化が起こっていたのだろう。




 俺もかなり獲物を狩ったため、昨日よりも多くの食材を入手し、俺とグラン兄さんは帰宅した。

今日は時間があったので一気に書き上げました。誤字、脱字等があったらすみません<(_ _)>

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