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第5話 現状

 この世界に転生してから三年がたった。この二年間は特にこれといったことはなかった。



 ただ、言葉が分かるようになってから、この国や、大陸の情報収集は怠らなかった。



 その結果、現在はユルドたちが活躍していた時代とはいろいろ事情が異なることがわかった。現在耀星暦1103約、五十年前に勇者ユルド グラディウスとその仲間たちによって魔王が倒されてから、それまで魔王と魔族軍という共通の敵と戦うために協力していた国々は強大な敵が消えると同時に、自国の事しか顧みなくなり敵対するようになったらしい。


 ハルトリア王国は先代の王が三十年前になくなってから現在まで、今年で60歳になるアリシア=ミラ=ルブラン=フォン=レストール女王がこの国を治めている。



 非常に優れた人物で、長年に渡り国家運営から、経済政策、外交などの面で結果を出し続け国力を高めた結果、今ではハルトリア王国は倍以上の国土面積をもつルベウス帝国とタルティリア共和国と共に西方三大国家と呼ばれるようになったらしい。




 ルベウス帝国とタルティリア共和国は仲が悪く、西方の覇権をめぐってずっと対立しているが、ハルトリア王国はアリシア女王が上手く立ち回って今のところ周辺各国とは表立った対立はないようだ。



 この国は、今すぐに戦争に巻き込まれる可能性は低そうだが帝国と共和国の対立で西方全体がきな臭いのは間違いない。



 (本能のように自分が勇者たちの力を引き継いでいるって理解しているんだけど実際に使えるかどうか試すまでは不安だな…)


 そう思った俺は近い内に勇者たちから得たはずの力を試してみることにした。



 その機会は思ったより早く訪れた。勇者たちの力を使ってみようと決意してから一週間後、両親は隣接する領地をもつコノリー子爵家のパーティーに招待され、長男のグランと数人のメイドを連れて出掛けていった。



 留守を任された家令のセレスティン(ナイスミドル)は今、次男のリュートに勉強を教えている。


 残っているメイドたちも、一人辺りの仕事量が増えて自分の事で目一杯のようだ。



 俺は隙をみて家を抜け出し、家の裏にある林の中に入った。そういえば、庭には出たことがあるが、家の敷地から出たのは初めてだ。それなりに庭が広いので、家の敷地から出られない事に不満はなかったのであまり気にしてなかったが、考えてみれば生まれてから三年以上たつのに一度も家から出たことがなかったのは驚きだ。



 そんなことを考えながら林の中を歩いていくと、いい感じに開けた場所に出た。



 木々に遮られて家からは死角になっており、周囲に人もいないようなので、俺はここで自分の力を試すことにした。



 まずは、物置にあったのを勝手に借りてきた短剣を構える。


 すると、熟練の達人のようにこの剣をどう振ればいいか体が覚えているように感じる。



 試しに短剣を振ってみたところ、3歳の子供が振っているとは思えないような鋭く風を切る音がする。


 そして、次に身体能力をあげるために体に魔力を纏ってみる。あっさり成功し、体が軽くなったのを感じる。


 ちなみにこれができるようになるには才能のある魔術師でも大抵数年間はかかる。勇者だったユルドでも数ヶ月はかかった。


 しかし、その勇者たちの知識と能力をもつ俺は当たり前のように一発で成功。さらに、体に纏う魔力量を調節する。体感では自身の総魔力の3割といったところか。



 そして、上段に短剣を構え振り下ろす。


 

 暴風が吹き荒れ、木々が根こそぎ吹き飛ぶ。短剣の直線上には深く大きな裂け目ができる。



 「………は?」



 思わずそう呟いていた。

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