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私と狐と天狗と

作者: タカチ

今日高尾山を登った記念に書きました。




今日、私は高尾山に行った。

そう、良くわからない三つ星を頂いて、パワースポットと名高いあの高尾山に!!


何故がガイドブックのシリーズの中で、一番薄い癖に一番高いガイドブックを握りしめて。



私は足腰に自信がある訳ではないが、大清水から鳩待峠までを半日で歩く事はできる。

地元に山は腐るほどあるが、なぜ600メートルにも満たない高尾山に登ろうと思ったのかは今になっては思い出せない。


今日の目的はハイキングなので、6号路から歩いて行くことにした。

歩きやすいように若干の整備はされているが、沢の上を歩くコースもある。

実は私は沢沿いの道が大好きである。

なので、尾瀬の木道とか堪らない!!イワナ美味しそう!!



何はともあれ、遠足で賑わう小学生をしり目に私は足を進めた。



40分ほど歩き続けただろうか。


「お腹へった……」


そう6号路は茶屋がない。

なんで朝食を軽くしてしまったのか数時間前の自分を問い詰めたい。

そして、荷物になるからとチョコレートすら買わなかった自分を殴りたい。


「山頂に行ったらビール、山頂に行ったらビール……」



花が咲いていれば写真を撮り、木漏れ日の美しさに心休ませる。

素敵な休日だった。



「また、椿が落ちている」


そうこれで、3回目だ。

別に椿が落ちていても何ら問題はないのだが、少し気になるのだ。

落ちている周辺を見ても椿の木が見えないから。


全て花が落ち切って周りの緑と混ざっているのだろうと、そうあたりを付けていた時に異変に気がついた。



先ほど前にいたハイカーがいない。

後ろにもいない。


人がいない。


「あれー?変な道入っちゃったかしら?」


一本道なのだからそんな筈はない。

今の私の位置は飛び石あたりだ。

見失う事はないだろう。


それに先ほどよりも鮮やかな景色に見える。


「椿に紫陽花……」

狂い咲きか?



ガサガサガサ!

横の茂みから音が近づいてくる。


ビクッと身体が震える!



現れたのは銀髪の和装姿の美丈夫だった。

ただ、人間には本来付いていない、獣の耳と尻尾が付いていたが……。

コスプレ外人さん?


「おやおやおや、なんとも珍しい客人だ」

あ、日本語が凄く流暢なきがする。


「こ……こんにちは」


ガイドブックにはすれ違う人とは挨拶をしようと書いてあった。

実践してみたが、絶対に使うタイミングを間違えたと思う。


「こんにちは、君は人間であっているのかなぁ?」


小首をかしげたお兄さんの耳が可愛らしく伏せられる。


自分を見下ろしたがどっからどう見ても人間にしか見えない。

「人間だと思いますが、おにいさんは?」


「だよねぇ、僕は狐仙のギンコだよ」


「なるほど……。神隠しですね」


「そうだねぇ。君は美味しそうな匂いがするなぁ。ここの山神は仕事する神だから、間違わないはずなんだけど。とりあえず、天狗の所にいこうか」


山神は山の木を数える。

木に間違われた人間が神隠しにあう。私は木に間違われたのだ。


昔からよく神隠しにあっているのでその辺はバッチリなのである。



「で、沢からこちらに連れてきたと」

「そうですねぇ、大天狗の旦那」


私が連れてこられたのは案の定、薬王院であった。だが実物よりも格段にこちらの方が大きい。

ギンコさんは大天狗に向かい合うように座り、私はギンコさんの斜め後ろに座っている。


烏天狗はこちらの世界に人間がいるのが珍しいのか影から覗いている。


「希有な血筋お見受けしたが、あなたのお名前をお聞きしても?」

「ああ、そういえば名前きいていなかったねぇ」

「まったくボケた狐は厄介事しか持ってこん」

「コン!」


さて、みんなギンコのボケをスルーしたところで自己紹介を始めるとしよう。



「藤原さとりです。こちらの神木数えの周期はどれくらいでしょう?」


「ふむ、10日だな。して、さとり殿あなたはなぜ落ちついておられるのかの?」


もっともな質問だと思う。

普通神隠しにあって、孤仙と天狗に囲まれていたら泣く。

実はちょっと怖かったりする。


「迦葉山という山はご存知でしょうか?」


大天狗の目が大きく開かれる。

「それはもちろん、あちらの天狗とは良き付き合いをさせていただいておる。それがいかが致したか?」


「あそこの天狗は自由奔放だよねぇ、あんまり山神も仕事しないし」


「あちらの天狗と山神に気にいられているらしく、ちょくちょく神隠しにあうのです。こちらとあちらでは時間の感覚が違いますので大きな問題にはなったことがございませんが。私が落ち着いているのはそのせいかと思います」


「なるほど、なるほど。納得じゃ。山神さまはさとり殿を天狗と間違えて連れてきてしまった様だのお。して、次の山開きまでこちらに滞在されてはいかがだろうか?」


「それがいいねぇ!今からだと平野には鬼と下級の妖怪共が出てきちゃうしねぇ」


正直そこまで期待していなかったので、私は驚きのあまり目を大きく開く。

「いいんですか!?」


腕に覚えがないわけではないのだが、慣れない土地では意識が過敏になりすぎて、無事10日間を生き残れるか不安だったのだ。


「うむ、離れに使っていない小屋がある。そちらも我らの結界の中じゃ。安心して休むがいい」


こうして私は暫くの住処をゲットしたのだ。




その10日間がいいものだったかは、さておき。


ギンコに良い匂いがすると襲われ、大天狗自ら天狗術を指南していただき、迦葉山からは迎えの烏天狗がわんさか来て(これは後に大天狗のスパルタ特訓の餌食になっていた)、案外忙しい毎日だった。



「迦葉山の烏天狗が送ってくれる事になりました。10日間お世話になりました」

ペコリと、大天狗とギンコに頭を下げる。


「ふむ、こちらも楽しかったわい。小娘と侮っていたわ、また来るといい」


「さとり、浮気はしないでね。相手呪っちゃうから」


どうしてどうして、狐というものは勘違いはなはだしいのか……。


「ハハハハー、ちょっと遠いので気軽には遊びに来れないかなー」


さあ、暗に断っていることに気づくのだ!



「心配しなくても迎えにいくよ。一回こっち来ちゃったから後はいつでも来れるねぇ」







ギンコさん……。たぶん家には来れないと思います。

だって家の守り神は……。


こんな感じで失礼します。

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