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bird servant  作者: 真琴
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file.4-No.1

今回は依頼ではないです。

あえて言うなら……過去編です。

俺、枢木が中学3年のおわり。あれは雪がちらつく季節だった。




「なあ枢木。お前も受験終わったんだって?」



雪がちらつく、学校からの帰り道。枢木は横から友人に話しかけられた。

しかし、枢木自身。何か考えごとに耽っているらしく、返事が無い。その姿に友人は目を細め、枢木のネクタイを思い切り引っ張った。



「ぐえ」



ちなみに枢木の中学は薄めの紺に赤のネクタイのブレザーである。

首を絞められた枢木は、当然の結果ながら咳こんで座り込んだ。



「枢木ー」

「げほっ……沢崎!おまっ、ごほ、俺を殺す気か!」

「返事しないほうが悪いんだろ」



ぶうと膨れる友人、沢崎。髪は黒でスポーツ刈り。目つきはあまり良くないし、着崩れた服装で勘違いされやすいが、性格は至ってなつっこい。

2人から白い息が零れる。



「で……なんだよ」

「高校決まったんだろ?」

「その話か」



てくてく2人は並んで歩きはじめた。



「どこ?」

「若狭北」

「やっぱそこか」

「公立で学費安いし、一番家から近いからな。沢崎は千条学園だっけか」

「おう。まぁスポーツ推薦で入っちまったから、部活動で成績残さねェとやばいけどな。でも正直枢木、お前が羨ましい」

「何が」



沢崎は悔しそうに顔を歪めた。



「枢木のくせに、共学のとこに行きやがって……」

「はぁ?」



読者には全く関係ないことだが、千条学園は有数のスポーツ校であるのだが男子校なのである。それに対し、若狭北は男女共学。



「うはうは青春ライフってかこんちきしょう!!」

「変な表現すんな!鳥肌が立つ!!」



はぁと枢木はため息をついた。



「だいたい高校入っても、多分バイト漬けでそんなヒマないっての」

「ん?枢木、お前高校入ったらバイトすんの?」

「学費稼がないと学校追い出されるだろ。かといって奨学金には頼りたくねぇし」

「へー。何のバイト?」

「まだ決めてない」

「だったら今のうち決めたほうがいいぞ。高校始まるとバイトの基礎覚える暇なんてないだろうし」

「だよなぁ」



枢木は鞄から何か取り出した。

それは一枚の紙。それを沢崎は覗き見る。



「履歴書?」

「一応な。良いトコ見つかったらすぐ渡せるように作った。……っておい、勝手に持ってくな」



沢崎が枢木から履歴書を取り、詳しく読み始める。



「ほうほう」

「返せよ」

「枢木」

「んだよ」

「履歴書って身長を書く欄は無いのな」



ぷちん。

枢木の中で何か切れた。



「働くのに身長関係ねぇだろうがぁぁぁぁぁ!!」

「でも遊園地でバイトの場合ヤバくね?」

「ジェットコースター乗れないほど低くない!!人おちょくってんのか!!」

「窓ふきとかよー、背伸びして届く保障無いぞ」

「そこは踏み台とか」

「え?肩車じゃねぇの?」

「どんだけ背が低い設定だこのやろぉぉぉぉぉ!!」

「おっと」



枢木・怒りのパンチを沢崎はひらりと避ける。

ふわりと、白いものが舞った。



「避けんな!!」

「痛いのやだ」

「じゃあ俺の心の傷広げるんじゃねぇ!!つーかもういいだろ!いい加減返せ!」

「え。無理」

「何でその言葉が返ってくるんだ!」



ついと沢崎が上空に指さす。その時、彼の手にあったはずの履歴書は存在していなかった。なんだと思ってその先を枢木が見上げる。

丁度、白い紙らしきものが、どこぞの建物の開いた窓に吸い込まれた光景だった。

再び視線を戻すと、沢崎ははるか遠くに。



「頑張って取ってこいよ―」

「はぁあ!?どういうこ……」

「健闘を祈るぜ!さらば!!」



超絶スピードを発揮し走り去っていた沢崎の姿はものの数秒で消え失せた。



「……っ、やらかすだけやらかして逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



白く濁った空に、枢木の雄叫びがこだました。




***




「この建物だったよな……。沢崎のやろう、明日覚えてろよ」



枢木は2階建のビルの前に立っていた。この2階の窓に自分の履歴書が飛ばされたのだ。ただの学校のプリントだとか、答案用紙ならば問題なかった。しかし履歴書はヤバい。なんせ名前、住所、電話番号など個人情報盛りだくさんである。悪用される確率は、かなり高い。



「階段、階段……」



赤茶けた年季の入ったビルは交差点の角に面しており、二階に上がる階段は少し奥にいりこんでいた。1階の部屋への入り口にはテナント募集の張り紙。それを眺めながらコンクリートの階段を上がる。二階に上がって最初に目に入ったのは、扉。木製の扉に不透明なガラスがはめこまれ、ガラスにはここの事務所名だろうか、何か彫られていた。



「ばーど………駄目だ、読めない」



英語で書かれており、しかし最初は読めたがもうひとつの単語が読めなかった。

「bird」、読みはバードで意味は鳥。鳥を扱う専門店だろうか。でも鳴き声やそういうものは聞こえない。

とりあえず、ノックをしてみる。だが待てども待てども、まったく反応が無い。試しにドアノブを触ると滞りなく回った。つまり開いている。



「留守……だったらどんだけ不用心だよって話だよなぁ」



そろそろと扉を開け、中を覗きこむ。

中はとても清潔に掃除され、アンティーク調に揃えられていた。おしゃれな事務所、という印象だ。



「おじゃましまーす……」



少し入りにくかったが、何か行動を起こさねば仕方がない。これも個人情報(履歴書)を取り返すためである。そして完全に事務所の中に足を踏み入れ。目に入った。



「……!」



入口の近くに置かれていたソファー。そこに一人。



「……」

「すー………」



やたら細長い男が寝ていた。




これが、あいつとの出会いだった。

黒鴎さんと蘭さんは以前交流が?というご指摘がありました。

でもその前に、黒鴎さんと枢木くんの出会いです。まだ黒鴎さんは3文程度しか登場していませんが。



あと作中に出て来た高校は実在しません。

テストが近いので、そろそろ更新が止まりはじめます……。

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