表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
bird servant  作者: 真琴
4/18

file.3-No.2

もしかしたら少し修正を加えるかもしれません。



特に蘭さんの口調……。



あと長いのでお急ぎの方はご注意を!

「……へ?」



振り向けば、呆れたような蘭。逃げ去っていく男を尻目に枢木と対照的に特に慌てる様子もなく、先ほど渡した風呂敷を解いていた。包まれていた風呂敷はそのまま、宙に舞った。



「もう少し、マナーを勉強したら?」



乾いた音が、空を切った。

すると男たちはひきつったように足を止めていた。その足元のコンクリートには、小さな穴があき、煙をあげている。

枢木もひきつった笑顔で蘭を見上げる。その蘭の手元にあるのは、映画などでしか普通は目にしない。

本物の拳銃。黒の銃身は鈍い光を反射し、持ち手は木製である。



「え……ちょっ、蘭さん……?」

「それ、返してもらえない?」



にこやかに拳銃を突きつけて要求する蘭。細い指は既にセーフティを外し、トリガーにかかっていた。



「今なら、何もなかったことにしておいてあげる。あなたたちもこんな屈辱的経験は忘れたほうが身のためじゃない?ああ、それとも……」



風が、優雅に蘭の黒髪をなびかせた。



「もう一発欲しい?」



瞬き一つした頃には、男たちの姿はどこにもなく。

コンクリートに小さな銃痕と紙袋のみ残された。




***




蘭は可哀相に冷たいコンクリートに置き去りにされてしまった紙袋を拾いあげ。そして未だ座り込んだままの枢木を立ちあがらせた。



「枢木くん怪我は無い?」

「いや、ないですけども……。じゃなくて!」

「何一人漫才してるの」



枢木は蘭の持つ拳銃を指さす。



「何で拳銃!?絶対銃刀法違反とか引っかかってるよそれ!!」

「だから返してもらったの。今回の依頼人から」

「普通貸し借りするようなもんじゃないから!」



普通に拳銃をバックにしまう蘭を片目に一人悩む枢木。そして蘭については一つわかった。

マイペース。非常識。人の話聞かない。

……黒鴎と同じ人種だ。この人。

そんな枢木の結論などいざ知らず。蘭が紙袋の中を覗き、小さく悲鳴のような声をあげる。



「いやあああ!潰れてるじゃない!」

「潰れてる?」

「せっかく楽しみにしてたのに……」



何が入っているのだろう。見てはいけないと言われていたため、中身が気にはなっていた。好奇心が後押しし、枢木は落胆している蘭の手元の紙袋を覗きこむ。そして目を瞠った。

それはたくさん入っていた。手のひらサイズで細長く。そして銀紙に包まれ、それ越しでも立ちあがる良い香り。



「蘭さん」

「ぐすん。何?」

「大事なものって言ってましたよね。さっき」

「うん」

「どっからどう見ても、大量の焼き芋にしか見えないのですが……」

「だって焼き芋だもの」



ぽかんと枢木は呆ける。そして急に我に返る。



「どこが大事なんすか!!一番大事って言ってましたよね!?それが焼き芋!?」

「あ!馬鹿にしたわね!?ここのすごくおいしいのよ!私コレが楽しみでこの依頼受けたようなものだし……、私にとって一番重要なことよこれ!!」

「でも焼き芋……」

「一度食べてみたらわかる!!」

「のが!?」



枢木の口へスクリュー回転気味に焼き芋がねじ込まれる。そしてそれを、おとなしくもぐもぐ食す。無言で見つめる蘭。

ごくんと、枢木の喉が動いた。



「……」

「どう?」

「めちゃんこうまいっす。よくわかりました蘭お姉さま、この罪深き俺を許して下さい」

「分かったならよろしい。くるしゅうないぞ」



焼き芋片手にぷくくくと。枢木と蘭は見つめて笑いあった。

ぼうと再び汽笛が鳴った。



***




「帰り道気をつけてね枢木くーん」

「蘭さんこそ!また会いましょーねー!」



ぶんぶん手を振って、焼き芋を食べた枢木は上機嫌に帰って行った。そして古びた工場群に一人、蘭だけが残された。

するとタイミングを見計らったかのように、紙袋片手に枢木を見送った蘭の小さなバックから、何やら音楽が流れ出す。蘭はバックから音源である携帯電話を取り出した。

その画面には「非通知設定」。少し眉をひそめたが、それも一瞬。即座に通話ボタンを押した。



「何の用?」

『ご利用ありがとうございます。黒鴎です』



まったく会話になっていない返答に、蘭は小さくため息をついた。



「……携帯からかけなさいよ。誰か分からないでしょ」

『今回はちょっと携帯では面倒でしてね。大目に見て下さい。それに公衆電話もなかなか便利なものですよ?ハイテクの波にのまれて随分設置されている場所が減ってしまいましたけどね』

「今時公衆電話を探すほうがめんどくさいんじゃない?まあいいわ。で?わざわざ電話かけてきて何の用なわけ?」



蘭は手ごろなベンチに座り、背中を預けた。



『御依頼のものがあなたの手に渡ったのかの確認です』



にこやかで柔らかい物腰だが、どこか強制力がある不思議な声。

そんなことを思いながら蘭は紙袋を漁る。



「拳銃のほうも返してもらったし、だいたいそっちこそ大丈夫なの?」

『ご安心を。当面の生活費も持たせました。今頃は空の上でしょうね。焼き芋はいかがです?』

「ええ。少し手違いは起きたけど、あなたのところの枢木くんがちゃあんと届けてくれたわよ」



ひとつ、銀紙に包まれた焼き芋を取り出す。銀紙をはがし、焼き芋が現れた。しかし不思議なことに、顔を見せたばかりの芋にはもう二つに割った跡が。

その割れ目に沿って芋を分ける。すると黄色の中身以外に異物。芋の中心部にはビニル袋に厳重に包装されている蓋付きの試験管が埋没していた。それをするりと取り出して顔の面前に移す。



「確かにA国開発中ウィルス入り試験管、受け取ったわよ。なんとか取引国に引き渡せそう」

『今回の依頼のメインはそちらですからね』



今回の依頼は大きく分けて3つのものを『運ぶ』のが仕事であった。

まず一つは『依頼人』

実はA国の内部事情を知るもので、危険なウィルスを開発していたという情報があった。一種の生物兵器である。その開発を阻止するために動いていたが、A国に勘付かれてしまった。そのためにまず、一時的に安全な国に身を寄せる手伝いをして欲しいというのが一つ。

次に『拳銃』

これは依頼人に蘭が貸していた代物である。最初は蘭が警護の依頼を受けていおり、その時護身用として持たせていたものである。

そして最後に『ウィルス』

むろんA国が開発しているものである。今回の依頼でこれを某国に引渡すのが一番重要だった。もし何かあった時のためにカモフラージュをしていたというわけである。ちなみに取引国はこれに対する抗原の開発に着手するらしい。



『一応割れないようにビニルに包んでおきましたが……破損はありませんか?』

「焼き芋が潰れたわ」

『おや、それは残念』

「残念じゃないわ!すごく楽しみにしてたんだから!あんたのガードが甘すぎなんじゃないの!?」

『ですが、肝心のものが無事ならば……』

「良くない!!」



おそらく電話の向こう側では、あまりの大声で受話器を耳から少し遠ざけたであろう。

遅れて、乾いた笑い声が蘭の耳に届く。



『わかりました。後日買ってきます』

「……なら許してあげる」

『ありがとうございます』



ふっと蘭が時計を見上げる。あまりゆっくり話している余裕はなくなってきた。

そろそろ会話も締め始める。



「でも本当にあんたが引き受けると思わなかった。あんた好き嫌い激しいから」

『何を言いますか。私は依頼されればなんでも引き受けますよ』

「嘘おっしゃい。以前依頼人の態度が気に食わなくて途中で放棄したやつがよく言うわ」

『ああ、あれですか。きちんとやりましたよ。ただ事が終了した後の警察への対応だけ、あちらにお任せしただけです』



うへー、性格悪。そう頭の中で呟く蘭である。



「じゃあそろそろ切るわよ。そうそうあんたのとこの枢木くんに……」

『ええ。伝言ですか?』

「そ。中学生なのにバイトおつかれさまって伝えておいて」

『……』

「何?」



携帯の向こう側では、急に無言で返された。

そして次の言葉で、蘭は思わず立ち上がってしまうことになる。



『枢木君は高校生ですよ』

「……え?嘘!あの身長で!?制服もぶかぶかだからてっきりまだ中1かと……」

『それ本人の前で言わないでくださいね。一度怒るとなだめるの大変なんですから』



そう。枢木は身長が160あるかないかギリギリの丈なのだ。ちなみに黒鴎は180前半で、また女性ながら蘭も170は超えている。

「俺は伸びる!なんたって成長期!!」そのポリシーで制服は少し大きめを着ており、ぶかぶか。もともとの童顔も相まって、中学生に見られてしまうのである。

哀れなり、枢木。

遠くで鳥と、そしてまた汽笛が。静かな工場群に音を加えた。

とうとうばらしました。

そう枢木君は身長低いのです。彼は高校2年生です、そこから考えると平均的に低いんですよね。本編最後にあった理由で枢木君は学生服が似合いません。



でも正直周りにすごく背が高い人がいないので、むしろ黒鴎さんのほうが想像しにくかったりします。



意見、感想、誤字脱字のご指摘は随時お待ちしております。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ