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bird servant  作者: 真琴
3/18

file.3-No.1

1話完結の予定が想定外に長くなりそうなので、分けました。



今回黒鴎さん影薄いです……。

少し、冬の空気が混じり始めた。イチョウの葉が舞う季節。

枯葉が幾枚踏まれた。そんなことお構いなしに少年は走る。白い息がふわりと飛んでいった。

少年は雑居ビルの一つに飛び込み、二階へ駆けあがるそして目に入った扉をすぐに手をかけた。



「悪い黒鴎!!遅れた!!」

「入る時はノック」



こんこん。



「今されましても」

「じゃあどうしろってんだよ」



ぜはーと息を切らす枢木。その姿はいつもとパーカーにジーンズという私服ではなく、少々違う。

上下ともに黒。そう、学ランである。上まで止めると苦しいのか、上二つボタンは止めておらず、白いワイシャツが垣間見えた。

立ってファイルを開いていた黒鴎だったが、ふと閉じた。



「相変わらず……」

「ん?」

「学ランの似合わない子ですね、枢木君は」

「……悪かったな!!似合わなくてよ!」



学ランの似合わない男と言われた枢木は持っていた鞄をソファに下ろし、自身も腰掛けようとする。がしかし、黒鴎に止められた。



「来た早々すみませんが、早速お仕事です」

「え?」



にこやかに指を立てて。



「今回我々は『運び屋』さんですよ」




***




ぼうと汽笛が空気の中に霧散した。某港の寂れた工場群。

そこを1人歩く枢木。



「さみぃ……」



学ランに、肩に鞄、首には濃いめの緑色のマフラー姿の枢木はそうこぼした。彼の腕には大きな紙袋ががさりと音を立てた、取っ手が付いていないため抱えていないといけないのだ。でも何故だろうか、と枢木は思う。



「何で腹が減るんだ……?」



黒鴎に中身は見ないようにと渡された紙袋。それなりに重いそれを持っていると、何故か空腹を誘われる。



「黒鴎、一体中に何入れたんだよ……」



文句を言う枢木だが、横から冷たい風に吹かれると、身震いする。



「まぁ何でもいいや、早いとこ渡しちまお」



そう、今回は運び屋なのだ。中身が何であろうと目的のところに持って行くことが仕事である。指定場所はここ、港廃工場群。そしてある人に渡すらしいのだが。



「ええと、確か赤い服を着た……って、あれ、なのか……?」



いくつか角を曲がり、見つけた。がしかし、少し躊躇した。本当に合っているのか?なぜならば。



「チャイナ服……?」



確かに赤い服だ。中国民族伝統衣装で、とても派手な金の刺繍ととても際どいスリットが入っていても。紛れもない、赤。

チャイナ服に身を包んだ20代後半から30代前半ぐらいの女性。艶やかな背中程の黒髪を垂らし、一部長い前髪が顔に影を付けた。黒のハイヒールに丈が短めのジャケット、そして小さめのバックを身につけ、赤さは抑えられてはいるがそれでも異彩を放っていた。

海を眺めていた女性だったが、首を枢木がいる方へと傾けた。女性にしては切れ長で鋭い瞳である。急に顔がほころんだ。



「きみ!こっちこっち!」



おいでおいでと手招きされた。枢木は少し戸惑いながらも女性の近くまで寄る。そして軽く挨拶を交わした後。



「ヨモギマフラーくん、きみ名前は?」

「よ……俺は枢木です。お姉さんは?」

「お姉さんだなんて上手いこと言っちゃって!私は穂高蘭。でも苗字は偽名だから、下の名前で呼んで、枢木くん」



お姉さんと呼んで喜ぶあたり、見た目と年齢があっていない様である。それに真っ向から偽名と言い切ったあたり、どうつっこんだらいいのやら。とりあえず……。



「じゃあ蘭さん」

「よろしい」



スルーの方向で。枢木のの返答に満足したようで、にんまりと笑う。

よく見ると蘭は青がほんのりついたような瞳。それを見て枢木は綺麗な湖面を頭に浮かべた。



「蘭さん、何でそのチョイスで来たんですか」

「ん?かっこいいでしょこれ!」



そう蘭は言って、少しポーズを決めた。そして得意げにこれまでの経緯を語り始めた。



「あのメガネカモメが赤い服で来いっていうからさ、でも意外と赤!て服ないんだよねー。それでリサイクルショップで物色してたら売ってたのコレが!しかも500円の半額250円!おまけにサイズぴったり!コレを買わない手は無いって話よ」

「は、はあ……」

「それでよもぎ色のマフラーの人物に例のモノを持たせておくって言われて、ここで待ってたら枢木くんが来たわけ」

「だからコレつけてけってことか……。おかしいと思ったんだよ、あの黒鴎が風邪の心配するから」

「風邪引いたのはあなたの体調管理不備のせいでしょう」

「うわ、黒鴎そっくり。腹立つ……」

「ふふふ。あやつの真似はしやすいからのぅ」



そうにやりと蘭が笑ったが、不意に真面目に微笑んだ。

きっとこれが彼女の仕事の顔だ。と枢木は感知する。



「依頼の、持ってきてくれた?」

「あ、はい。どうぞ」



枢木は自身の鞄の中を漁る。取り出したのは、風呂敷に包まれた何か。手よりひとまわりほどの大きさだ。蘭はそれを受け取り耳元で振った。からからと音が鳴る。



「確かに。じゃあその紙袋もいい?実はそっちのほうが大事なの」

「……蘭さん。一つ聞いてもいいですか」

「何?」

「これって中何が入って」



枢木が最後まで言葉は言えなかった。



「うわっ!」

「枢木くん!」



強く推されたような感覚と同時に慌てたような蘭の声。

枢木の身体が地面に転んでいた。地面に近くなった目線に映ったのは大きな靴。2人分。



「悪いなねえちゃん!ブツはもらってくぜ!」

「あ!」



怪しげな風貌の男2人。顔はマスクや帽子、サングラスで全く分からなかった。

枢木は唇を噛んだ。きっと後ろからつけられていたのだろう。気がつかなかったとは迂闊だ。

そして持っていたはずの紙袋が消え失せ、男の一人の手の内に。

用が終われば退散するのみと、男2人は背を向け走り出す。



「取り返さないと……!」



急いで枢木は立ちあがる。なぜそこまで必死になって奪うのかわからないが、このままでは仕事失敗である。

しかし、頭上から聞こえた声で足が止まった。



「まったく……かっこ悪いったらありゃしない」



その声は、どす黒いオーラを纏っていた。

蘭さんの着ているチャイナ服のネタ。あれ実話です。

近くのリサイクルショップに行った時、本当に売ってたんですチャイナ。サイズSだったのでさすがに買いませんでしたけど。あれまだ売ってるのかな……。



他にも着物とか白衣とかナース服とか売ってました。

次回に続く!(本編が)

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