俺のペットが擬人化?
俺のペットが擬人化?
俺は動物が大好きだ。愛していると言っても過言ではない。野良犬を見ると触りたくなるし、動物園には毎日通っている。もちろん家でペットを飼っている亀、猫、犬、金魚、インコなどなど。許されるなら、様々な動物を飼いたい。今日も金魚の金太郎のために水草を大量に購入してきた。さっそく家に帰って設置してやろうと意気揚々に家に帰った。
「ただいま~! 我が愛しのペット達よ。元気にしてたかい」
家に帰ると知らない女の子が部屋にいた。緑色の髪でセミロング、気の強そうなつり目をしている。なぜか亀のキグルミを着ていた。
「よお。英二。待っていたぞ。エサをくれ」
「誰だ? お前」
「お前の亀次郎だ」
「亀次郎……って亀の亀次郎か」
「ああ。そうだ」
俺は亀を飼っているのだが、その名を亀次郎と言う。俺が近づくと近寄ってきて首を水面に出して、挨拶してくれる気のいいやつだ。
「お前女だったのか」
「女? 良く解らんが、どうでもいいが。腹が減った。無農薬のキャベツだ。できるなら茨城県産がいいぞ」
「悪い。ちょっと考えさせてくれ」
「? いいが、早くしてくれ。腹が減った」
どういうことだ。この女が亀の亀次郎だと。確かに亀次郎の水槽には亀がいない。だが、亀が人間になるなんてことがあるのか。こいつが勝手に言っているだけじゃないのか。そうだとするとでは、この女は誰なんだ。俺は知らないぞ。こんな亀のキグルミを着た女なんて。
自問自答を繰り返していると亀次郎と思われる女が、部屋から出ていこうとしている。
「待て! どこに行く」
「長くなりそうだから、食料を調達しようかと思ってな」
「お前は絶対ここから出るな!」
「なんでだ。私はキャベツが食べたいぞ」
「いいから出るな! 俺が取ってくる」
こんな所を妹や母親に見られる訳にはいかない。見つかったら何て言い訳をするんだ。
◇
パターンその一。
『か……母さん。俺の亀次郎が帰ってきたら、女になっていたんだ。俺も驚いているんだ。信じてくれ』
『英二……わたしが気づいてあげられなかったのが、悪かったのね。あなたにぴったりな所があるの。今から行きましょう』
いい病院を紹介されるのがオチだろう。
◇
パターンその二。
妹にしても同様だろう。
『我が妹よ。いいから黙って聞いてくれ。俺の亀次郎が帰ってきたら、女になっていたんだ』
『おかあさーん。お兄ちゃんがおかしくなったー!』
明らかな負け戦だ。次の日から冷たい目で見られるのはごめんだ。
◇
妹と母親に見つからないようにこっそりと、キャベツを持って部屋に戻ってきた。戻ると亀次郎が仰向けに寝転がっていた。なんだかなあ。確か亀って仰向けになると起き上がれないんじゃなかったかな。本当に元亀なのだろうか。
「お前。そういえば甲羅はどこにいったんだ」
「ああ。そういえば無いな。まあいいだろ。邪魔だしな」
家に忘れ物をしてきたという軽いノリで言われた。
「ほう? で?」
「で? とは?」
「これからどうすんだって聞いているんだ?」
「さあな。私が知るか」
「っていうか元に戻るんだよな」
「さあ。私には分からない。戻れるかも知れないし、戻れないかも知れない」
そこに妹がドアを開けて、入ってきた。
「お兄ちゃん。ご飯できたっ……て?」
「あ」
妹の目が文字通りに点になっていた。ドアのノブを握り締めながら固まっていた。俺は何とかごまかそうとした。
「あのな。こいつは亀次郎なんだよ……」
「……」
そのまま妹は無言でドアをゆっくりと閉めた。
「おかあさーん。お兄ちゃんが変な女の人連れ込んでるー!」
「あ。ちょ」
慌てて追いかける。二階から下りて、一階の廊下で妹は母親と話している。遅かったらしい。
「私ブログに書き込む」
「止めちまえそんなもの!」
「父さんに電話しないと」
「止めろー!」
「英二よ。キャベツが切れたんだが」
「なんで降りてくるんだ!」
亀次郎がいつの間にか一階まで降りてきていた。あれほど、降りてくるなって言ったのに。
「この人が亀次郎さん? 言われてみれば面影があるわ」
「ねえよ! まったく全然ねえよ!」
「なあ。英二よ。キャベツが食べたいんだが」
「うるせえ! 黙ってろ」
「お母さん。絶対この人詐欺師だよ。お兄ちゃんに彼女が出来るわけないし、きっとお兄ちゃん何か変な壺を買ってるんだって。絶対そうだって」
「お前は俺のことを何だと思ってるんだ!」
「なあ。英二……キャベツ。なんならししゃもでもいいぞ」
「もしもし……父さん? 英ちゃんがね。彼女連れてきたのよ」
母さんは携帯で父さんに電話をかけていた。よりにもよってあんな変態親父に電話をかけるなよ。
「だから電話するなって! だいたい亀次郎の話はどこいった!」
「なあ。キャ――」
「お前はこれを食っていろ」
キャベツ、キャベツとうるさい亀次郎に俺はポケットにあったチョコレートを差し出した。
「なんだこれは……食べれるのか」
「いいから食ってろ」
「むぐ……」
面倒臭かったので、無理やり亀次郎の口にチョコレートを押し込んだ。最初は不思議そうな顔をしていたが、今はニヤニヤしている。どうやら気に入ったようだ。
「英二! 彼女が来てるんだってな!」
玄関が勢い良く開かれ、親父が帰ってきた。さっき電話していたのに、なぜもう帰ってきたんだこの親父は。
「親父……会社は?」
「お前の彼女が来てるって聞いてな。早退してきた。大丈夫だ。問題ない」
いや。問題あるだろと思ったが、俺をスルーして親父は亀次郎に近づいていった。
「私、英二の父です。お名前は?」
「もぐもぐ。私は亀次郎だ」
「かめじろう? カメジロウ? KAMEJIROU? かめじょう……かみじょう……ああ。上条さんですか」
親父は素晴らしき変換能力で、名前をでっちあげた。
「いや。亀――」
「それよりもどうぞ。ご飯でも食べて行ってください」
「ご飯? キャベツも出るのか」
「出ますとも、出ますとも。母さんすぐに食事の用意だ」
俺を置いて親父と母親と妹は食堂へと行ってしまった。
「なんだ。これ……」
ていうかそもそも亀次郎が、人間になったのが、問題なのだが何かどうでもよくなってしまった。
「おーい。英二……ここはキャベツがいっぱいあって天国だぞー。英二も早くこいよー」
食堂から亀次郎の声が聞こえる。この先亀次郎をどうするのか不安だが、なぜか妙に家族と馴染んでいる。まあ俺には猫、犬、金魚、インコがいるからあいつらを可愛がればいい、俺はそう思っていた。
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