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無能と追放された鑑定士、実は“価値を変える力”で街ごと最強になる 〜評価されないもの全部、俺が使いこなします〜  作者: 影山クロウ


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第9話 動き出す場所

「今日中に、証明する」


 俺の言葉に、男は鼻で笑った。


「できるわけねえだろ」


 即答だった。


 周囲からも、小さな笑いが漏れる。

 いつの間にか、数人が集まっていた。


 距離は遠い。

 だが、聞いている。


「いい」


 俺はあっさり言った。


「できるかどうかは、見てれば分かる」


 それだけだ。


 証明は、言葉じゃない。


「……で、何すんだよ」


 男が腕を組む。


 試す目だ。


 さっきと同じ。


 だが、少しだけ違う。


 完全な否定じゃない。


 ほんの少しだけ、興味が混じっている。


「まず、水だな」


 俺は井戸に向かう。


 石の縁に手を置く。


 冷たい。


 水はある。


 だが、使われていない。


「これ、いつから使ってない」


 振り返らずに聞く。


「……知らねえよ」

 男が答える。

「誰も使わねえからな」


「理由は」


「汚れてるって話だ」


 なるほど。


 俺は桶を引き上げる。


 水を見る。


 少し濁っている。

 だが、使えないほどじゃない。


「リナ」


「はい」


「これ、どう思う」


 リナが近づく。


 少し迷ってから、水を覗き込む。


「……飲めなくはない、と思います」


「いい」


 次にアルドを見る。


「お前は」


「……分からねえ」


「いい」


 問題ない。


 俺は桶を持ったまま、男に向く。


「これ、どこで使う」


「……は?」


「水だ。どこで使う」


 男が顔をしかめる。


「そりゃ、店とか家だろ」


「どの店だ」


「……知らねえよ」


「だろうな」


 俺は頷く。


 それが問題だ。


 水はある。


 使う場所もある。


 だが、つながっていない。


「じゃあ、つなぐか」


 俺は言った。


 男が呆れた顔をする。


「どうやって」


「簡単だ」


 俺は歩き出す。


 広場から、一本奥の通りへ。


 閉まっている店の前で止まる。


 看板が落ちかけている。


「ここ」


「……ここ?」


「開けろ」


「は?」


 男が固まる。


「店だろ」


「もうやってねえよ」


「やれ」


 短く言う。


 男が苛立つ。


「だから、客が来ねえから――」


「来るようにする」


 それだけだ。


 沈黙。


 リナが不安そうにこちらを見る。


 アルドは腕を組んでいる。


 セレナは、何も言わない。


 いい。


 これでいい。


「やるか、やらないかだ」


 俺は言う。


「選べ」


 男が歯を食いしばる。


 迷っている。


 当然だ。


 だが。


 ここで動かないなら、何も変わらない。


「……やる」


 低い声だった。


 だが、はっきりしていた。


「いい」


 俺はうなずく。


 男が扉を開ける。


 中は暗い。


 埃が溜まっている。


「掃除しろ」


「……今からかよ」


「今だ」


 男が舌打ちしながら、中に入る。


 動き出した。


 それでいい。


「リナ」


「はい」


「水、運べ」


「……はい!」


 リナが桶を持つ。


 少し重い。


 だが、運べる。


「アルド」


「なんだ」


「そこ、壊せ」


 店の入口の段差を指す。


「客が入る邪魔だ」


「……こういうのもか」


「全部だ」


 アルドが手を当てる。


 “バキッ”


 段差の一部だけが崩れる。


 通りやすくなる。


「……なるほどな」


 小さく呟く。


 理解してきた。


 いい。


 少しずつでいい。


 俺は周囲を見る。


 さっきより、人が近い。


 距離が縮まっている。


 見ている。


 気にしている。


 それで十分だ。


「セレナ」


「はい」


「人、集めろ」


「どんな人を?」


「暇なやつ」


 それだけだ。


 セレナがくすっと笑う。


「分かりました」


 彼女が動く。


 声をかける。


 最初は誰も動かない。


 だが。


 一人。


 二人。


 少しずつ、動き出す。


「……なんだこれ」


 男が呟く。


 掃除をしながら。


「まだ何もしてない」


 俺は答える。


「だが、動いた」


 それがすべてだ。


 止まっていたものが、動いた。


 それだけで価値は変わる。


 リナが水を置く。


 アルドが段差を整える。


 人が、少しずつ集まる。


 店が、少しずつ形になる。


 ほんの一部。


 だが。


「……できてる」


 リナが呟く。


 信じられない、という顔だ。


「最初はそんなもんだ」


 俺は言う。


「全部やる必要はない」


 一つでいい。


 一つ動けば、連鎖する。


 男がこちらを見る。


「……これで、変わるのか」


「変わる」


 俺は答える。


「もう変わってる」


 男が周囲を見る。


 さっきまでと、違う。


 確かに。


 少しだけ。


「……本当に、あるのか」


 小さく言う。


「価値ってやつ」


「最初からある」


 俺は言った。


「ただ、見えてないだけだ」


 沈黙。


 だが、否定はない。


 それでいい。


 そのとき。


 セレナが戻ってきた。


「一つ、いいですか」


「なんだ」


「この街、もう一つ問題があります」


 目が、少しだけ真剣だった。


「何だ」


「評価されていない、ではなく」


 一拍。


「意図的に切り捨てられています」


 空気が止まる。


 リナが顔を上げる。


 アルドも動きを止める。


 俺は、少しだけ目を細めた。


「……誰にだ」


 セレナが、静かに答える。


「ギルド本部です」


 風が止まる。


 音が消える。


 なるほど。


 そういう話か。


 なら――。


「面白いな」


 自然と、そう言っていた。

小さく動き出したものが、今度は少しずつ広がっていきます。


そして、ただの問題じゃなく“意図”が見えてきました。

ここから一気に面白くなるところです。


もし続きが気になったら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次もぜひ楽しみにしていてください。

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