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無能と追放された鑑定士、実は“価値を変える力”で街ごと最強になる 〜評価されないもの全部、俺が使いこなします〜  作者: 影山クロウ


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第5話 崩れる側

「蒼狼の牙が――」


 その言葉で、空気が変わった。


 さっきまでの流れが、全部、横にずれる。


 受付の女は息を切らしていた。

 顔色が悪い。


「中層の第四区画で、魔物の群れに挟まれたって……! 負傷者が出てる!」


 リナが息を呑む。


 アルドは、何も言わなかった。

 だが、視線がわずかに揺れる。


 俺は一歩だけ、後ろに体重を乗せた。


「……で?」


 セレナが静かに聞く。


「救援を出すかどうか、今決めてる最中です。でも、近くのパーティが足りなくて……」


 女は言葉を濁す。


 つまり、間に合わない可能性がある。


「カイルは?」

 俺は聞いた。


「リーダーは無事みたいです。でも……」


「でも?」


「剣が折れたって」


 沈黙。


 リナがこちらを見る。


 アルドも見る。


 セレナは、何も言わない。


 俺は小さく息を吐いた。


「そうか」


 予想通りだ。


 いや、予想というより、見えていた。


 あの剣は、持たない。


「……行くんですか」


 リナが聞く。


 声が少しだけ震えている。


 無理もない。

 ついさっきまで一緒にいた連中だ。


 俺は少し考えた。


 正確には、考えるふりをした。


 答えはもう出ている。


「行かない」


 リナの表情が固まる。


「……え?」


「俺の仕事じゃない」


 それだけだ。


 助ける義理も、責任もない。


 向こうは俺を切った。

 それで終わりだ。


 理屈としては、それでいい。


 だが。


「ただし」


 俺は続ける。


 セレナが、少しだけ口元を上げた。


「見には行く」


「……それ、同じじゃないですか?」


「違うな」


 俺はリナを見る。


「助けるために行くんじゃない」


「じゃあ……」


「確認しに行く」


 何が起きているのか。

 何が足りなかったのか。


 それを見に行く。


 セレナが一歩前に出る。


「同行してもいいですか?」


「勝手にしろ」


「では、勝手にします」


 軽い返事だった。


 だが、その目は少しだけ鋭い。


 アルドがぼそりと呟く。


「……俺たちは?」


「来るか?」


 俺は聞く。


 二人は顔を見合わせた。


 リナが、先に口を開く。


「……行きます」


 少し迷いはあったが、はっきりしている。


 アルドは一瞬だけ考えてから、


「……見るだけなら」


 と言った。


「それでいい」


 俺は扉に向かう。


 受付の女が慌てて言う。


「気をつけてください! あそこ、今かなり――」


「分かってる」


 聞くまでもない。


 状況は見れば分かる。


 外に出る。


 空気が変わる。


 さっきまでの街の音が、少し遠い。


「こっちです」

 セレナが先導する。


 走る。


 リナがついてくる。

 アルドも遅れずに走る。


 いいな、と思った。


 この二人は、ちゃんと動ける。


 少なくとも、止まらない。


 しばらくして、中央区から外れた通路に入る。


 そこから先は、魔物の出る区域だ。


 空気が重くなる。


 匂いが変わる。


「近いですね」

 セレナが言う。


「ああ」


 音が聞こえる。


 金属音。

 何かがぶつかる音。


 叫び声。


 間違いない。


 俺たちは足を緩める。


 角を曲がる。


 見えた。


 蒼狼の牙。


 そして、魔物の群れ。


 数は――多い。


「……まずいな」


 俺は小さく言った。


 前衛が崩れている。


 ガルドが押されている。


 リリィの回復が間に合っていない。


 エドの弦は――


「切れてるな」


 カイルは剣を持っているが、刃が欠けている。

 いや、ほぼ折れている。


 予想通りだ。


 完璧に。


「どうします」


 セレナが聞く。


 その声は落ち着いている。


 試している。


 俺を。


 俺は状況を見た。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 十分だ。


「助ける」


 リナが息を呑む。


 アルドがこちらを見る。


「さっき、行かないって……」


「行かないとは言ってない」


 俺は前に出る。


「助ける義理はないが」


 一歩。


「助ける価値はある」


 それだけだ。


 理由としては十分だった。


 セレナが、少しだけ笑う。


「いいですね」


「リナ」


「は、はい!」


「さっきの位置を思い出せ」


「……はい!」


「アルド」


「……なんだ」


「壊す場所、選べ」


「……分かった」


 二人が前を見る。


 さっきとは違う顔だ。


 まだ不安はある。

 だが、止まっていない。


「行くぞ」


 俺は言った。


 蒼狼の牙の戦線に向かって、踏み出す。


 ――さて。


 ここからが、本番だ。

少しずつ揃ってきたものが、今度は実戦でどうなるか。


そして「見ていた側」が、ついに関わる側になります。


次は、ちゃんと結果が出るかどうか。

続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。

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