第15話 止まらない流れ
「次は、こっちの番だ」
そう言った直後だった。
空気が、変わった。
風が止まる。
音が消える。
そして。
「……来たな」
通りの奥。
ゆっくりと歩いてくる影。
数は増えている。
さっきより明らかに多い。
だが。
問題はそこじゃない。
中央にいる男。
ルクス。
変わらない歩幅。
変わらない視線。
そして。
周囲の“圧”。
「……やっぱり来た」
リナが小さく言う。
アルドが舌打ちする。
「今度は本気だな」
「そうだな」
俺は答える。
だが。
問題ない。
準備は終わっている。
「配置、そのまま」
俺は言う。
リナが頷く。
アルドが肩を回す。
セレナは、静かに立っている。
いい。
十分だ。
ルクスが止まる。
通りの入口。
その一歩手前。
「……変わったな」
低い声。
周囲を見ている。
人の流れ。
店。
動き。
全部、見ている。
「そうだな」
俺は答える。
「動かした」
「確認した」
ルクスは淡々と言う。
「予測以上だ」
「そりゃどうも」
軽く返す。
ルクスの視線がこちらに固定される。
「やはり危険だ」
「そうか」
「排除する」
短い。
だが、十分だ。
ルクスが手を上げる。
後ろの連中が動く。
一歩、前へ。
空気が張り詰める。
「止めろ」
俺は言った。
声は大きくない。
だが。
通る。
ルクスの手が止まる。
ほんの一瞬。
それで十分だ。
「何だ」
「見ろ」
俺は周囲を指す。
人がいる。
動いている。
止まっていない。
「排除するなら、全部止めろ」
沈黙。
ルクスが視線を動かす。
通り。
店。
人。
「できるか?」
俺は聞く。
リナが息を呑む。
アルドが笑う。
セレナは、何も言わない。
ルクスが答える。
「できる」
即答だった。
だが。
次の言葉が続かない。
「やれ」
俺は言う。
挑発じゃない。
事実だ。
「止めろ」
それだけだ。
沈黙。
数秒。
長い。
だが。
ルクスは動かない。
「……なぜだ」
小さく呟く。
自分に対してだ。
「簡単だ」
俺は答える。
「もう、止まらない」
それだけだ。
流れは、一度動けば止まらない。
無理に止めれば、歪む。
崩れる。
「管理は“止めること”じゃない」
俺は言う。
「“流すこと”だ」
ルクスの目が、わずかに揺れる。
初めてだ。
ほんのわずかだが。
「……理屈は通る」
「だろ」
「だが」
ルクスが一歩前に出る。
「それでも、排除する」
空気が変わる。
本気だ。
さっきとは違う。
「どうやってだ」
俺は聞く。
ルクスが、静かに言った。
「流れごと潰す」
その瞬間。
周囲の空気が凍る。
リナが固まる。
アルドの表情が消える。
セレナの目が細くなる。
俺は。
少しだけ、笑った。
「やってみろ」
自然と、そう言っていた。
止める気はない。
止まる気もない。
なら。
ぶつかるしかない。
それだけだ。
ルクスが、ゆっくりと手を下ろす。
その瞬間。
後ろの連中が、一斉に動いた。
空気が、弾ける。
そして――。
流れが、ぶつかった。
ついにぶつかりました。
ここからは「理屈」だけじゃなく「ぶつかり合い」です。
どちらが正しいのかではなく、どちらが“動かせるのか”。
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次は、この衝突の結果です。
明日からは1日1話の投稿予定です。
ぜひ楽しみにしていてください。




