第12話 流れを変える
「仕組みを壊す」
アルドがその言葉を繰り返した。
「それって、どうやるんだ」
「簡単だ」
俺は答える。
「流れを変える」
「……余計分かんねえよ」
正直な反応だ。
リナも同じ顔をしている。
セレナだけが、少しだけ楽しそうだった。
「いいか」
俺は店の前に立つ。
人はまだいる。
だが、増え方は鈍い。
止まってはいない。
だが、加速もしていない。
つまり――。
「ここ、詰まってる」
俺は言った。
「詰まってる……?」
リナが周囲を見る。
「どこがですか?」
「全部だ」
俺は答える。
水。
商品。
人。
どれもある。
だが、つながりが弱い。
「ギルドは何してると思う」
「……管理?」
リナが言う。
「そうだ」
俺は頷く。
「流れを止めてる」
アルドが眉をひそめる。
「止めてるって……別に何もしてなくねえか」
「してる」
俺は指を上げる。
「“何もしない”っていう形でな」
沈黙。
リナが少しだけ考える。
「……あ」
「気づいたか」
「はい……」
リナの目が変わる。
「動かないようにしてる……」
「そうだ」
それが一番効く。
禁止するよりも、動かさない。
それだけで、全部止まる。
「じゃあどうする」
アルドが聞く。
「動かす」
俺は答える。
「無理やりでもな」
そして、振り返る。
「おい」
さっきの店の男を見る。
「客、何人来た」
「……三人だ」
「少ないな」
「仕方ねえだろ」
「増やす」
俺は言った。
「どうやってだよ」
「簡単だ」
俺は周囲を見回す。
そして。
「無料にしろ」
沈黙。
男が固まる。
「……は?」
「水だ」
リナを見る。
「配れ」
「え、無料でですか!?」
「そうだ」
リナが戸惑う。
「でも、それじゃ……」
「いいからやれ」
一瞬迷ってから。
「……はい!」
リナが桶を持つ。
通りに出る。
「水、どうぞ!」
声を出す。
最初は小さい。
だが、十分だ。
一人が近づく。
受け取る。
飲む。
「……普通だな」
「普通でいい」
俺は言う。
二人目。
三人目。
少しずつ増える。
「……なんで無料なんだ」
男が聞く。
「人を止めてるのは“最初の一歩”だ」
俺は答える。
「そこを外す」
それだけだ。
人が集まる。
止まっていた流れが、少しずつ動く。
「次だ」
俺は言う。
「アルド」
「おう」
「壊せ」
「何を」
「邪魔なもの全部」
アルドが周囲を見る。
通り。
瓦礫。
放置された板。
“バキッ”
“ガキッ”
次々と壊していく。
通りが広がる。
歩きやすくなる。
「……変わってる」
リナが呟く。
人の流れが、はっきり変わる。
止まらない。
通る。
見る。
集まる。
「これだ」
俺は言う。
「流れを変える」
セレナが静かに頷く。
「なるほど」
「理解したか」
「ええ」
少しだけ笑う。
「壊してるのは“物”じゃないんですね」
「そうだ」
俺は答える。
「“状態”だ」
それが重要だ。
男が周囲を見る。
さっきとは違う。
明らかに違う。
「……増えてる」
「当たり前だ」
俺は言う。
「止めてたものを外した」
それだけで動く。
それだけで価値が出る。
そのとき。
「おい」
声がした。
振り向く。
さっきのギルドの男。
今度は一人じゃない。
後ろに数人いる。
装備が違う。
明らかに、さっきより上だ。
「……随分、好き勝手やってるな」
空気が変わる。
さっきより重い。
「見ての通りだ」
俺は答える。
「動かしてる」
「命令は聞こえなかったのか」
「聞こえた」
「ならなぜ――」
「意味がない」
遮る。
男の目が鋭くなる。
「……お前」
一歩、前に出る。
「対象を変更する」
その言葉に、少しだけ違和感を覚えた。
「何のだ」
「排除対象だ」
沈黙。
リナが固まる。
アルドが動きを止める。
セレナは、変わらない。
俺は、少しだけ笑った。
「遅いな」
自然と、そう言っていた。
戦い方が少しずつ見えてきました。
ここからは、ただの対立ではなく「排除される側」になります。
つまり、本格的に始まります。
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次は、もう一段階上の相手です。
続きをぜひ楽しみにしていてください。




