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戦後処理

「「殺される殺される殺される殺される殺される殺される…………」」

毛布に包まれて震え続けている2人を横目に、僕とセルフィスさん、メイターさんとフォイゾさんは集会所に来ていた。

「さて、何があったのか話してもらおうか…」

そう言って切り出したメイターさんに、僕はありのままを答える。

セルフィスさんはその場にいたわけじゃないため、ところどころ質問をしてくる。

「なるほど…つまり、ここに逃げてきた兵士たちはどっちの国とか関係なくメルペディアが治癒した奴らだと言うことか…」

「証明しろと言われたら難しいかもしれませんが、治癒魔法を見せることくらいはできます。」

「いや、それは必要ない。だが…魔法、か。

この世界じゃ魔法を扱える者の多くは兵士として戦争に出される。

木材を大量に運んできたときも魔法を使っていたから聞こうと思っていたが、そんな年齢で魔法を使えるのであれば国から抜擢されて魔法部隊に入れられたりしなかったのか?」

「えぇっと…それは…」

「元から森の小さな一軒家で暮らしていたから、国に知られてないって言うのが大きいでしょうね。

ついでに言っておくと、私はこの子を託された立場。母親じゃないわ。

あとは…わかってちょうだい。」

「そうか…野暮なことを聞いたな。すまない。」

「そんな深刻に考えなくて大丈夫よ。私も性格上あんまり意識していないし、この子も多分吹っ切れてるから。」

絶対にそんなこと思ってはいなさそうだが、セルフィスさんはこの空気感を打開するために続ける。

「メルペディアと戦った2人も、この子は好き好んで人を殺すような子じゃないって知っておいて欲しいわ。」

毛布越しに肩に手を当て、セルフィスさんは優しく微笑む。

「聞いた限りだと、どちらかの国の高出力な魔法で自軍を巻き添えにしながら攻撃したとしか思えぬ…

防御一辺倒、攻撃に転じても気絶させるだけだったというのが本当であれば、メルペディアに非はない気がするが、どうだ?」

メイターさんが毛布に向かって語りかけると、少しだけ顔を見せながらアイクスさんが言葉を返す。

「確かに、そう言われればそうかも知れない… 戦場に突如として現れた巨大すぎる魔力に気圧され、俺たちはきっと本能的に攻撃を開始してしまった…

確かに、俺が防御魔法に向かって攻撃を仕掛けた時に見えたその顔は、懸命に何かを訴えているようだった…」

「メルペディアの言っていたことと全て当てはまる…か。

ってかよくよく考えたらお前すごいやつだな!?なんで軍隊二つ敵に回して生きてんだよ!」

急に大声を張り上げたメイターさんに苦笑していると、アイクスさんが毛布から全身を出してその場で頭を下げる。

「すまなかった!」

「え!?どうしたんですか!?」

「我々は君のことを何も理解せずに攻めてしまった…怖い思いをしただろう。それに、あなたにもこの子のことを心配させてしまった…本当に申し訳ない!」

どうやら、その謝罪は僕達に向けてのものだったらしい。

「えっと…大丈夫です。」

当たり前に答えた僕に、メイターさんが吹き出す。

「やっぱりお前は面白いな!

ほらお前たちも、許してくれたんだからあまりこれ以上話を続けるなよ。もうこれでお前たちがメルペディアに攻撃した件についての話は打ち切りだ。

それでいいな?」

「あ、僕は全然。起きたことなんて服がちょっと汚れたくらいので。その汚れも洗ったから落ちましたし。」

ポカーンと口を開けているアイクスさんと毛布から出てきたポワレさんたちを見て、僕は苦笑する。

迷惑をかけたとかで謝られることも多いが、こっちだって迷惑をかけることもあるのだ。一回一回を引きずっていては、自分も相手もいい気がしないだろう。というのが僕のスタンスだ。ルーベルナさんとセルフィスさんが喧嘩してもすぐ仲直りしていた環境が、僕の中で強く残っているからかもしれない。

「あ、もちろんセルフィスさんやロックに手を出したら容赦しません。」

冗談らしく笑いながら言ってみただけだが、アイクスさんの顔は全然笑っておらず、なんなら怯えている。

オホン、という咳払いと共にメイターさんがケアに入ってくれて、話が再開される。

「戦場で起きたことはだいたいわかったが…その高威力の魔法を放ったというのはどっちの陣営なんだ?」

「少なくとも、こっち側の軍でそんな作戦は伝えられていない…だが、生き残りの中で最年長といっても俺は総司令じゃないのも事実。上の奴らが何を考えていたのかはわからない。」

「いや、きっと俺たちの軍だ……」今まで静かだったポワレさんが、口を開く。

「俺のいる近接部隊が魔法部隊とともに攻め、途中で魔法部隊は撤退。その後煙幕を張って近接部隊も撤退し、それが終わり次第魔法部隊が最後の猛攻を仕掛けるという手筈だった。」

「近接部隊…魔法は使わないんですか?」

そう問いかけた僕に、その人は無力そうに俯く。

「使わないんじゃない。使えないんだ。

だが、近接部隊はどうしても突撃の任務が多くなる分装備面で魔法部隊よりも優秀なものが与えられる。あの魔法でも生き残ることができたのは装備が良かったからだろう。

逃げ遅れた魔法部隊の奴らはどうやっても生き残れはしないさ。」

「剣を使う奴の装備が魔法部隊よりも優遇されているのは俺たちも同じだ。魔法部隊は最悪自分でも防御を張れるが、魔法が使えなければそんなことはできないからな。

それにしても…そっちの魔法部隊は撤退しながらの攻撃だったのに対し、こっちは撤退などしていなかった。丸々一つの魔法部隊が潰れたとなっては俺たちの国は大損害だ。」

やはり、魔法を扱える人間というのはだいぶ少ないらしい。リュシアさんが、自分が生まれたのはまだ魔法が神秘とされていた時代だと言ったということは、そこから魔法学校が作られるようになるまでに数百年の空白があったのも頷ける。

ただ…それにしては今の時代の魔法が多すぎはしないか?神秘というよりもただの戦争の道具としか思えない。500年の間にまた何か変化があったのかも知れない。

「お前たちが自分の国の心配をするのはわからんでもないが、それを考えていては目の前にいる相手が敵に見えてきてしまうだろう。

少なくともこの街にいる間はそんなことを考えるのはやめてくれ。」

メイターさんたちが目指すことを決断したのは、どっちかの国につくわけじゃなくどちらにもつかないことで戦争が起きない世界を作るための第一歩をこの街から始めるため。アイクスさんとポワレさんが国のことばかり考えていては、どこかで溝ができるのは目に見えている。

「ま、メルペディアがいい奴なのはたった数日仕事を共にした俺でもわかる。

それぞれ思うところもあるはずだが、仲間の奴らにはもう仲直りは済んだと伝えておいてやってくれ。そっちの方がメルペディアも居心地がいいだろう。」

メイターさんの言葉に何度か頷き、アイクスさんとポワレさんは2人で部屋から出ていく。

「……どう思う?俺たちは上手くやっていけると思うか?」

「僕はまだ子供ですよ?そんなこと聞かれてもわかりません。」

「おいおい、子供だからって言い訳できると思ってるのか?子供にしちゃあ人生経験が豊富すぎるだろ。

あいつらがこの街に来て俺たちが話し合いを始めた時から、お前は俺たちが受け入れるってこともわかってただろ。」

ニッと口角をあげ、どうだと自慢げにメイターさんは言う。

「…メイターさんが優しいからそうなると思っただけですよ。」

「へぇ、そうなのか。まぁいいか。まだまだ今夜はどんちゃん騒ぎするぞ。」

先陣を切って歩き出したメイターさんの背を追って、僕たちも歩き出す。

集会所の外からは、いつも朝にしか聞くことができない音楽が夜に溶け込むように流れていた。

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